カナダ第2の都市であるモントリオール。フランス植民地としての歴史があり、現在もフランス文化の影響を残す同都市は、北米のパリと形容されることもある。なかでも特に、フランスや欧州と似たような雰囲気が感じられる要素の一つが食文化だ。今回の記事では、地元に根付いた多彩な食文化を象徴する場所、マルシェ・ジャンタロン(Marché Jean-Talon、ジャンタロン市場)を紹介したい。

マルシェ・ジャンタロンとは

マルシェ・ジャンタロンは、毎日営業している固定の大型ファーマーズ・マーケットといったような場所だ。青果や肉魚などの生鮮食品の販売が中心だが、それ以外にも地元のグルメ、特産品を楽しむことができる。ベーカリーや屋台、レストランなども充実しており、さまざまな食に触れることができる観光地としても人気だが、地元住民にも愛されるマーケットだ。

1933年に開業した同マルシェは、モントリオールで最も古い公設市場。クリスマスと年始の数日間を除き、毎日朝8時から夕方6時(日曜日は5時)まで営業。北米最大級の屋外市場である。開業当時はマルシェ・デュ・ノール(Marché du Nord、北の市場)という名前だったが、1983年にニューフランス(北米のフランス植民地)の初代監督官であったジャン・タロンに因んで、現在の名前になった。

マルシェ・ジャンタロンは、モントリオールの都心から地下鉄で30分ぐらいの場所、モントリオール島のほぼ真ん中に位置している。同名の最寄り駅から市場までは徒歩5分。

市場があるは、プティート・イタリーと呼ばれるイタリア街だが、最寄り駅から市場までの道には、アジアや中東の食材に特化したマーケットやデリが並ぶ。

目で楽しむ生鮮食品売場

 
筆者がマルシェ・ジャンタロンを訪問したのは9月。気温が下がり、夏から秋へと季節が移行し始めた時期だ。青果売場には、いちごやブルーベリー、ラズベリーから、色とりどりのパプリカやナス、さまざまな種類のトマトが存在感を発揮。同時に、秋の食材であるカボチャなどのウリ類、ポワロと呼ばれるポロ葱など、ポタージュに最適な食材も出回り始めていた。

モントリオールでは、普通のスーパーマーケットでも豊富な種類の生鮮食品が手に入る。一方、市場に並ぶ青果の多彩さには敵わない。さまざまな色、形状、サイズの商品が陳列する市場では、スーパーマーケットよりも手頃な価格で、高品質な食材を手に入れることが可能だ。週末は地元の人から観光客まで多くの人出がある市場だが、平日に訪問すればゆっくりと買い物をすることができる場所だ。

ローカルでグローバルな食の宝庫

ファーマーズ・マーケットの魅力はなんといっても新鮮な地元の食材が手に入ることだが、マルシェ・ジャンタロンの良さはそれだけではない。生鮮食品が販売されている市場の周りには、さまざまな食のショップが並ぶ。たとえば、ソーセージ専門店のウィリアム・J・ウォルター(William J. Walter)は、1986年に創業されたケベック州の家族経営ショップで、現在は定番のものから、チーズやほうれん草入りのものまで35種類以上の生ソーセージを販売する。また、チーズ専門店のLa fromagerie HAMELは1966年から続く老舗だ。フレッシュチーズから、熟成されたチーズまで、また地元のものから輸入品までが揃う。チーズのことがわからなくても、アドバイスを受けて、味見をしてから購入することが可能だ。

専門店以外にも、デリやグルメ食材を取り揃えたショップも充実している。さまざまな種類のパスタなどを扱うイタリア系デリや、ケベックの特産品を中心に集めたショップでは、珍しい食材やハイエンドな食材が並ぶ。地元のクラフトビアやワイン、メープルシロップやローカルの調味料など、観光客がお土産を探したりすることもできる場所だ。

観光地化しすぎない、また何度でも通える場所

ジャンタロン・マーケットは巨大な市場ではなく、30分ほどあれば楽しめてしまう場所だが、魅力的な食材に溢れているため、ついつい買いすぎてしまう。食材以外にも、地元の特産品であるパイの専門店や、トルコのバクラヴァ専門店、いつも行列ができているパン屋もあって、食べ歩きもできる。シリアの料理を扱った屋台や生牡蠣などのシーフードが楽しめるレストランもあって、目移りしてしまう場所でもある。

さまざまな魅力がつまったジャンタロン・マーケットだが、いわゆる都心や他の有名な観光地からは離れているため、観光地化されすぎない雰囲気が魅力である。また、洗練されすぎたファーマーズ・マーケットとも違って、雰囲気も価格も手頃。モントリオールに中長期滞在した際には、飽きずに何度も通える場所であり、何度も通いたくなるような場所だ。

モントリオールに到着して間もない時、滞在先のホストや地元で暮らす人々の多くに、ジャンタロン・マーケットをお薦めされた。いわゆる観光地ではなく、地元の人にも愛されている市場だからこそ、豊富な食材が集まる食のスポットとしてそのユニークな存在感と魅力を保ち続けているのではないだろうか。


All Photos by Maki Nakata

Maki Nakata

Asian Afrofuturist
アフリカ視点の発信とアドバイザリーを行う。アフリカ・欧州を中心に世界各都市を訪問し、主にクリエイティブ業界の取材、協業、コンセプトデザインなども手がける。『WIRED』日本版、『NEUT』『AXIS』『Forbes Japan』『Business Insider Japan』『Nataal』などで執筆を行う。IG: @maki8383