世界各地に美食の街は多くあるけれど、フランスのリヨンはその中でもトップクラス。20世紀前半に活躍した作家でありジャーナリスト、そしてミシュランの顧問でもあったキュルノンスキーに、「リヨンは食文化の首都である」と言わせたほどだ。

パリからリヨンへ列車で移動し、到着するととりあえずベルクール広場へ。広場の中央にはルイ14世が威勢よく馬に乗った銅像が建ち、ソーヌ川の対岸の丘の上にはサン・ジャン大教会が空に浮かんでいるように見える。

リヨンの歴史は古く、ローマ帝国時代からの交易地。今でも鶏肉、ワイン、果物、野菜などの地元食材が集まるポール=ボキューズ市場には、星付きレストランのシェフも、腕に覚えのある料理好きたちが食材を求めにやってくるという。

今回はリヨンの街を歩き、リヨンスタイルのレンティルのサラダのレシピを紹介したいと思う。

丘の上の大聖堂と市街地の眺め

ベルクール広場から西へソーヌ川を渡れば、そこはフルヴィエールの丘の麓。歩いて丘に登ってもいいが、ケーブルカー「フニキュラー・ドゥ・リヨン」に乗ればあっという間にノートルダム大聖堂に到着する。リヨンの街を見下ろす景色が気持ちいい。聖堂の中に入れば、荘厳かつ絢爛な祈りの場に圧倒された。この辺りが世界遺産にも登録されているリヨンの旧市街で、街並みは中世を感じさせてくれる。

家々をつなぐ秘密の通路「トラブール」

旧市街を歩いていると、「Memoire De Lyon (リヨンの記憶)」という説明書きのあるドアを見つけた。この先には「トラブール」と呼ばれる隠された通路がある。複数の建物をつなぎ、中庭もあり反対側の通りにまで続く通路で、その昔絹商人が商品を搬入し搬出するために作られたのだそうだ。

通路は長く、ここに今住む人たちが使っているのだが、リヨンの自治体との契約で日中は一般に公開されている。ひんやりと静まり返った通路を歩くと、往時の賑わいがしのばれる。

Mangaファンが多いフランス

さて、新市街に戻って商店が並ぶ通りを歩いていると、若者たちで盛り上がる日本の漫画を売る店を見つけた。アルファベットで「Manga」。数多くの作品がフランス語に翻訳されている。ポスターやフィギュアも売られていて、まるで秋葉原にある店のようだ。

アニメに関するグッズも売られているが、「Anime」は日本のアニメのこと。ここには、たとえばディズニーの作品のようなアニメーションは扱っていない。すっかりオタクのための店。

毎年7月にフランスで開催される「Japan Expo」では、アニメやマンガといった日本のサブカルチャーが紹介され、来場者はなんと25万人を超えるという。リヨンの街にも、こんな店があるわけだ。

リヨンの伝統的料理「レンティルのサラダ」

今回紹介するのは、リヨンの伝統的なサラダ「レンティルのサラダ」だ。レンティルはレンズマメとも呼ばれ、レンズの形のように少し押しつぶしたような形状になっている。それを、野菜やベーコンと共にワインビネガーで合わせる。

リヨンで使われるレンティルは「Lentille Verte Du Puy」、プイの緑のレンティルだ。Puyはリヨンを含むオーベルニュ地方の丘陵地帯のこと。このレンティルは少し胡椒の様な香りがあり、茹でても荷崩れしにくいのが特徴だ。

Puyが手に入らない場合には一般的に売られているレンズマメで、緑色の物を使用してもよい。オレンジ色のレンティルも売られているが、それは薄皮を取ったものなので、緑の物がよい。

エシャロットはフランスの玉ねぎの一種だが、なければ普通の玉ねぎ1個で置き換えても良い。

材料:
・レンティル 200g 緑色のタイプ
・ベーコン 100g 3㎜角に切る
・エシャロット 2個 みじん切り
・にんにく 1かけ みじん切り
・パセリ 適量 みじん切り
・ワインビネガー 大さじ3
・クミンパウダー 小さじ1/2
・むらさき玉ねぎ 適量
・塩 小さじ1/2
・こしょう 小さじ1/4

1. レンティルをパッケージの表示に従って茹でてざるに上げる。

2. フライパンにベーコンを乗せて中火にかけて、色よく炒める。

3. ボールに、1のレンティル、2のベーコン、エシャロット、にんにく、パセリを入れて、ワインビネガーをとクミンパウダーを入れて混ぜたら、塩・胡椒で味を調える。

4. 器に盛り、薄切りにしたむらさき玉ねぎを乗せる。

この料理のキモはレンティルの茹で具合だ。固すぎず柔らかすぎず、しっかりとした食感をキープする。茹ですぎるとマッシュポテトのようになるので気を付けてほしい。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/