パンケーキといえば小麦粉の生地をフライパンで焼いて、表面にはきつね色の焼き色がつき、中はふっくらと膨らんだあの姿が真っ先に頭に浮かぶ。そして、ホットケーキってなんだっけなと考える人もいるはずだ。

実はホットケーキは和製英語だ。1950年代には、水と混ぜるだけで美味しく焼けるホットケーキミックスが市場に登場したという。一方のパンケーキは、英語のPan=フライパンで作るケーキの一般名称なのだが、それで何を想起するかと言えば、円形で表面はきつね色で中がふっくらのいわゆるホットケーキ。ほぼ同じものを、日本での呼び名がホットケーキ、英語での呼び名がパンケーキということになるだろう。

さて、ポーランドでよく食べられているのが「Placki Ziemniaczane」。訳せば「ポテトパンケーキ」。じゃがいもをすりおろして作るパンケーキだ。ポーランドの主食はライ麦パンにじゃがいも。小麦やライ麦が不作の年には、このジャガイモのパンケーキをよく食べたのだとか。

今回は、ポーランドの首都ワルシャワの街歩きと、ジャガイモのパンケーキのレシピを紹介したい。

ショパン、コペルニクスを生んだポーランド

ワルシャワの空港は、その名も「ワルシャワ・フレデリック・ショパン空港」。ピアノの詩人と称される歴史的作曲家の名前を冠している。ワルシャワの中心部からほんの10㎞ほどだ。1810年(1809年という説もある)に、ワルシャワ近郊の街に生まれたショパン。子供のころから作曲家・演奏家として才能を開花させ、西ヨーロッパでも活躍した彼が亡くなったのは、39歳のことだった。

ワルシャワの中心部を歩くと、街並みは美しく荘厳な建物が立ち並ぶ。公園には緑が茂り、通りには観光客向けの馬車も走る。実はワルシャワのほとんどの地域は、第2次世界大戦で当時のソビエト連合国の攻撃によりその姿を失った。そして社会主義国となり復興が始まったという。昔の姿を再建したとはいえ、なんとなく人工的に整えられた感じがするのはそのせいかもしれない。テーマパークのような雰囲気もある。

旧市街の広場の一つにはコペルニクスの像があり、休日を楽しむ親子たちが遊んでいた。コペルニクスが生まれたのは1473年。地動説の発表する書籍は完成したのち、校正刷りがコペルニクスに届いた日に70歳で亡くなったのだという。偉人を生んだポーランド。その食生活も気になる。

休日の午後にワルシャワの旧市街を歩く

もう少し街歩きを楽しむ。ワルシャワの旧市街を歩くのは楽しい。市庁舎の建物は赤褐色で尖塔には時計が時を刻む。商店が並ぶ通りには、のんびりとショッピングを楽しむ人たち。公園にはおそらくほかの国からの移民と思われるブラスバンドが陽気な音楽を奏でていた。

Jewish Community Center(JCC)は世界各国にあるユダヤ人のためのコミュニティ施設で、ワルシャワのJCCは近代アートを壁に描いたモダンな建物だった。調べてみると、あらゆる年代層を対象にしたプログラムが開催されていて、ユダヤ人コミュニティーの一員として現代のユダヤ人文化を体験して、また創造していく場であると掲げている。今はウクライナ難民を支援する活動も行っている。

あの第2次大戦中にはホロコーストの下でナチスが行ったユダヤ人の隔離、大量虐殺が行われた施設の一つアウシュビッツはポーランドの地にあったのだと思い起こさせられる。

小麦不足で生まれたともいわれるポテトパンケーキ

さて、ポーランドの主食はパンとじゃがいも。パンのほうは寒冷な土地ということもあってライ麦パンが一般に食されている。16世紀にコロンブスが南米から持ち帰ったじゃがいもがポーランドで広く栽培されるようになったのは18世紀のことだったそう。主食が小麦とじゃがいもの二つということは、いずれかが天候の影響を受けて不作になったとしても飢饉が深刻になる影響は少なくなるということ。パンケーキは小麦粉を使うのが主流だが、小麦不足に陥ったときにこのポテトパンケーキが考案されたのだとか。

じゃがいもと玉ねぎをすりおろして作るポテトパンケーキは、意外にもふっくらとして、表面の焼けた部分は香ばしい。今回はサワークリームで食べるが、グラニュー糖をかけたり、リンゴのジャムを塗ることもある。

じゃがいもは、1個150グラムなら4個ほど。塩味は少なめに調理して、必要であれば食べるときに振る。

Placki Ziemniaczane(ポテトパンケーキ)のレシピ

材料:
・じゃがいも  4個(600g前後)
・玉ねぎ小  1/2
・たまご  1個
・小麦粉  大さじ1
・塩  小さじ1/2
・粗びき黒胡椒  少々
・植物油  小さじ3

作り方:
1.  皮をむいたじゃがいもと玉ねぎををフードプロセッサーにかけて滑らかにする。

2.  1をざるにとり、下にボールを置いて5分程水気を切る。この時上から軽く押すとよい。

3.  ボールの底に沈んだスターチは残して上澄みを捨てる。(これはいわゆる片栗粉)

4.  1のじゃがいもと玉ねぎに、スターチ、たまご、小麦粉、塩、胡椒を加えてよく混ぜる。

5.  フライパンに油を入れて熱したら中火にして、3の1/6量を入れて丸く形を整えて片面2から3分程度焼く。セルクルを使ってもよい。

6.  皿に乗せ、サワークリームを乗せる。

甘いトッピングをせずに、ソーセージやピクルスと一緒に食べるのもいい。

ポーランドの旅でアウシュビッツを案内してくれたポーランド人のガイドが、「ポーランド人の中には、ナチスの悪行を見て見ぬふりをしてしまったことを公開している人が多い」と教えてくれた。ウクライナからの難民を積極的に受け入れているポーランドの人たちの精神性というか心意気というものは、過去の歴史から学び醸成されてきたものなのだと感じる。日本人は、どう受け止めて、どう行動するべきなのかと考えさせられる。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/