キューバは東西に長い島国で、首都ハバナが面しているのはメキシコ湾。対岸のアメリカ、フロリダとはたったの500㎞の距離だ。ハバナから西へ300㎞ちょっとの古都・トリニダーは、キューバの南岸なのでカリブ海に面している。その間は路線バスで4時間ほどだ。

幹線道路を走るバスの車窓からは、様々な乗り物に乗った現地の人を見かける。葉巻を加えて馬に乗る中年の男、黄色い往年のアメ車のボンネットを開けて調子を見ている黄色いつなぎを着た男。古いトラクターでのんびりと行く運転手、荷車をつけ馬で牛乳缶を運ぶ農夫。

馬に乗る男は葉巻をくわえていた。そうだ、キューバは葉巻の一大産地だと思い出す。酒ならラムだ。そしてご飯なら黒豆かけご飯なのである。

古都・トリニダーの名物カクテル「カンチャンチャラ」

トリニダーは古き良きキューバ―のたたずまいが色濃く残る小さな街で、砂糖取引の拠点として栄えた。コロニアル様式の建物が保存され、色鮮やかな色彩が鮮やかだ。大広場には観光客が集まり、ゆったりと流れる時間を楽しんでいた。

トリニダーの発祥と言われる「カンチャンチャラ」と呼ばれるカクテルを飲もうと、その名も「La Canchanchara」というバーに出かける。バーとは言っても、パティオにイスやテーブルが並ぶ明るい雰囲気で、昼からカンチャンチャラを楽しむ人たちが多く集まっていた。

カンチャンチャラのベースはもちろん「ラム酒」だ。サトウキビを原料とした蒸留酒であるラムなら「Havana Club」がよく知られているように、キューバなどカリブ海の国々でつくられる。ラムにハチミツを加えてよく混ぜたら、レモンジュース、また好みで炭酸水やソーダを加える。かなり飲みやすいが、アルコールの度数は高そうなので要注意。

La Cancnancnaraでは、カンチャンチャラを飲むための陶器にストローを刺して提供される。少し汗をかいた陶器のカップも気持ちよさそうだ。

ピナール・デル・リオのラム酒の醸造所

ハバナから東に200キロほどのピナール・デル・リオにあるラム酒の醸造所を訪ねた。ここでは商品化の最後の工程である瓶詰が行われている。

ラム酒はサトウキビを絞ってサトウキビジュースを絞り、加熱して濃縮し砂糖と糖蜜にわけて、糖蜜のほうを発酵させ、蒸留機でアルコールを気化させて作る。ここで作られるのは「La Occidental Guayabita del Pinar」という名のラムで、Occidentalは西洋、Guayabitaは小さな実のグァバの一種を意味する。この実が一瓶に2から3粒ほど入っていて、ラムにナッツのような香りが加わる。

日本でも人気があるラムをベースとしたカクテルなら、ライムとミントが爽やかなモヒート、パイナップルジュースとココナッツミルクのピニャ・コラーダ、パイナップル、オレンジやシロップのマイタイ、コーラで割るキューバ・リブレなどがあるが、どれも飲み心地がいい。その分、酒量にも注意が必要だ。ラムのアルコール度数は40%程度から、ものによっては80%を超える。

キューバ―の味噌汁とご飯とも言われる “Moros y Cristianos”

キューバのレストランでよく登場するのが「モロス イ クリスティアノス」。「黒豆と白ご飯」という意味だ。家庭でもよく食べられるこの料理は、他のメインの料理と共にテーブルに並ぶことも多く、日本なら味噌汁とご飯と言ったポジショニングになるのだとか。

今回はそれだけでもおいしいレシピをご紹介したい。

まずは香味ベースのソフリートを作る。野菜とクミン、オレガノ、パプリカと言った香辛料をオリーブオイルで炒めたもので、これが黒豆の煮込みの味のベースになる。

【ソフリート】

材料(4人分)

・プチトマト 10個
・パプリカの粗みじん切り 1個分
・玉ねぎのみじん切り 中1
・ニンニクのみじん切り 4カケ分
・クミン(粉) 小さじ1
・オレガノ(ドライ) 小さじ1
・パプリカ 小さじ1
・オリーブオイル 大さじ1

作り方

1. オリーブオイルを鍋にに入れて熱して、プチトマト、パプリカ、玉ねぎ、にんにくを入れて全体に柔らかくなるまで炒める。

2. クミン、オレガノ、パプリカを入れ、蓋をして弱火で15分煮詰める。

【黒豆とベーコンの煮込み】

材料 (4人分)

・黒豆 200g
・ベーコン 160g
・ベイリーフ 1枚
・塩 小さじ1
・水 400ml

作り方

1. 黒豆は一晩水につけておく。
2. 鍋に黒豆を入れて、作っておいたソフリートとベイリーフ、8㎜位の短冊切りにしたベーコンを入れて水を入れる。

3. 蓋をして中火で沸騰したら弱火にして、豆が柔らかくなるまで2時間ほど煮る。圧力鍋なら高圧10分、または低圧12分で加熱し急冷する。

4. ふたを取って具がひたひたになるくらいに煮詰めたら、塩で味を調える。

【ごはん】

材料(4人分)

・米 2合
・塩 小さじ1
・オリーブオイル 大さじ2
・にんにく 3かけ

1. 鍋にオリーブオイルを温めて、薄切りにしたにんにくを入れて茶色になるまで火を入れて香りをだし、にんにくを取り出す。

2. 米を加えて、透明になるまで弱火で炒める。

3. 米を炊飯器に入れ、通常の水加減で炊く。

黒豆とベーコンの煮込みを皿に盛り、好みでパクチーを飾る。

ごはんと一緒にいただく。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/