今回はまず、ブルガリアの首都ソフィアの南、クルマで2時間ほどの距離にある「リラ修道院」への小旅行で出会った「ハニツァ」をおやつにいただく。そして、ソフィアの中心部にある、現地の働く人たちがランチを食べに集まる店で、ブルガリアならではのヨーグルトとミートボールを楽しむ。また、「タラトール」という簡単な冷製ヨーグルトスープのレシピも紹介する。

ブルガリア正教会の修道院を訪ねる

「正教会」は「ギリシャ正教」とも呼ばれ、カソリックやプロテスタントと同様にキリスト教の教派の一つ。ブルガリアでは「ブルガリア正教会」として組織されているそうだ。世界遺産に登録されているリラの修道院は、聖人イオアンが10世紀に創設した。訪ねた6月には緑豊かな森の中にひっそりと佇む姿も美しい。

住居となっている4階建ての建物に囲まれた空間に収まった聖堂は幾何学的なストライプの外観だ。壁には色鮮やかなフレスコ画が描かれていて、正教の教えを目で知ることができて楽しい。また内部にある金色のイコノスタシスと呼ばれるイコンで覆われた壁は荘厳で美しく、静謐な雰囲気を醸し出している。

聖堂のすぐ隣には1階には鐘塔が建っている。この1回には土産物屋が入っていて、ギリシャ正教に関連したものを売っている。少し俗っぽい感じではあるが、日本の神社仏閣を思えば、それほど驚くことでもないだろう。

裏手に回ってもう一つの門を出ると小川が流れていた。そこにかかる橋を渡ったところに修道院の古いベイカリーが建っている。売られるのはブルガリア伝統の揚げパン「パニツァ」だ。ブルガリアの人たちが朝食やスナックによく食べる。

カウンターで買い求めたら、屋外のテーブルで砂糖を振りかけて食べる。生地が薄く、食感はドーナツよりもかなり軽い。修道院内を歩き疲れた後にちょうどいい。ソフィアで食べたものよりもかなり素朴だが、それが修道院らしいということだと納得する。

ふと思い出すのは日本の神社や寺の参道の団子やまんじゅう、せんべいなどの類だ。祈りにやってきた人たちが同じものを食べて、何を話すのではなくてもなんとなく一体感が感じられるあの気分というのは、世界のどこでも同じなのかもしれない。

ブルガリアのヨーグルトとミートボール

ブルガリアの食べ物として誰もが最初に思いつくのはヨーグルトだろう。1970年代から日本で大量生産され始めたヨーグルトはブルガリア菌という乳酸菌を使用したものだ。

調べてみると、ヨーグルトの起源には諸説あるようで、現在トルコに住む人たちの祖先が、中央アジアでの遊牧の生活の中で生まれたのだとも言われている。また、インドやスリランカの「ダヒ」、ネパールでは「カード」と呼ばれる水牛などの乳を使ったヨーグルトもまた、現地で一般的に食されている。ヨーロッパ各地にも、それぞれの呼び名がついたヨーグルトがある。酪乳と乳酸菌と一定の気候があればできるのだから、様々な土地で生まれたのだと言えるかもしれない。

首都ソフィアの平日、ランチを食べに入ったセルフサービスのカフェには、このあたりのオフィスで働く人たちが集まっていた。ここで注文したのがブルガリアのミートボール「キュフテ」だ。付け合わせにどうだと勧められたのが「カタク」マッシュドポテト。「カタク」は水切りヨーグルトにチーズ、ディル、きゅうりなどを合わせたものだ。たっぷりと皿に乗せてくれた。

ミートボールはミートボールというよりはハンバーグと言ったサイズで、少なめの油で揚げたものだ。表面はカリッと香ばしく、内側はしっとりと滑らかだ。そして中心にはキャベツの漬物が入っていた。ドイツのザワークラウトに似た味だが、丸ごとのキャベツを30から40日間事前発酵させて作る。

さてこの「キュフテ」、そういえばトルコ料理の「キョフテ」に名前が似ている。キョフテのほうはもっと小ぶりで、炭火で焼くのだが、ミートボールという意味では同じカテゴリーだ。トルコは地続きの隣国であるし、オスマン帝国に500年も支配されていたのだから、よく似た食べ物があるのは当然なのだ。

さて、この「カタク」、爽やかで肉料理と一緒にたべるとかなりおいしいのだ。清涼感があるディルの香りと、みずみずしいきゅうり、クリーミーなヨーグルトがちょっとぽってりとした質感で、肉にまとわりつくようでよく合う。

夏の定番冷製スープ「タラトール」

さて、「カタク」は水けを切ったヨーグルトを使うが、同じような材料を使う「タラトォール」のほうはヨーグルトに水を加えて飲みやすくしたスープだ。

一切火を使わずに作る。くるみ、オリーブオイル、ディルの一部は取りおいて仕上げにも使う。作った後に冷蔵庫に冷やしておくのもおいしい。また、生のにんにくをおろして使うのだが、ヨーグルトとディルのおかげで食後に香りがほぼ残らないようだ。

ヨーロッパのきゅうりというと日本のものよりも太めのものが多いのだが、ブルガリアのものは日本のものによく似ていて細長いので、日本にある材料でちゃんと作れそうだ。

材料:二人分
・きゅうり 1本 5mmの角切り
・ヨーグルト 250ml 250g分
・水 150ml
・にんにく 1かけ おろしておく
・くるみ 大さじ2 100g分
・塩 少々
・オリーブオイル 大さじ1.5
・ワインビネガー 小さじ1
・ディル 大さじ2 みじん切り

作り方:
1.にんにくとくるみの大さじ1、塩とオリーブオイル大さじ1、ワインビネガー、ディル大さじ1をすり鉢に入れてペースト状にする。

2.ヨーグルトと水をよく混ぜ、きゅうりと1のペーストも入れてよく混ぜる。

3. 器に注いだら、残りのディルと、砕いたくるみを乗せて、残りのオリーブオイルを回しかける。

フードプロセッサー、ミキサーを使ってきゅうり以外のものをよく混ぜてから、きゅうりを加える方法でも良い。

日本の蒸し暑い季節にも、この涼感がぴったりだと思う。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/