コロナ禍の影響でテレワークが普及したことにより、働くことへの価値観の変化や、心と身体の健康についても注目が集まっている。ワークライフバランスが見直されている今、自宅にこもるよりも、もっと効率よくオンとオフを切り替えたいと思っている人は多いだろう。
『多拠点生活』や、休暇を取り入れながら仕事をする『ワーケーション』といった新しい生活スタイルには、どんな良さがあるのだろう? 日々をより豊かにするヒントを探りに、ワーケーションの達人たちが暮らすという、新島へと向かった。
東京から南へ約160kmに位置する新島(にいじま)村は、調布空港から飛行機で約35分。
竹芝客船ターミナルからの高速船でも約2時間半、思い立ったらすぐに行ける、伊豆諸島の中でも身近な島のひとつだ。
小型プロペラ機に乗り込むと、あっという間にコバルトブルーの海と白い断崖の島が見えてきて、その非日常感にワクワクする。通勤と同じくらいの移動時間で、旅特有の移動の疲れを全く感じさせない。到着してからすぐにアクティブに動けそうだ。
「ワーケーション」の達人たちが暮らす島
新島での暮らしぶりを教えてくれたのは、美容師の登竜海(のぼり たつみ)さん。登さんは、子どもを島の小学校に通わせたくて帰ってきたUターン組だ。
「島の人の暮らしは、日々ワーケーションをしているような感じかもしれません。みんな仕事と遊びのバランスが上手く、お昼は家に帰って家族と食べ、17時には帰る。休憩時間に、サーフィンや釣りをする人もいます」
5分も歩けばどこからでも海が見られる環境の中、仕事をして、遊んで、また戻って仕事をする。元々ワーケーションのように暮らす新島の人は、どうやらワークライフバランスの達人でもあるようだ。そんな夢のようなライフスタイルに、憧れが募る。
新島でコワーキングスペースがあるのは、コーガ石で建てられた趣ある商工会館。島出身の妻とともに、東京から移住してきたという新島村商工会の西胤輝之進(にしつぐ てるのしん)さんに新島の魅力を聞く。
「新島はロケーションが最高で、街並みが綺麗なのはもちろん、島自体が明るく気の流れがいいんです。必要なものは揃っているし、足りないものがあれば都心へも簡単にいけますしね」
新島といえばサーフィンが有名だが、サップやカヌーも人気なのだそう。「近くの前浜をサップで漕ぐと気持ちいいですよ」 レンタルもあるので、ワーケーションの気分転換や日頃の運動不足にも良さそうだ。
「島には広告が少なく、普段暮らしている中で目に入ってくる情報も少ない。欲しい時だけ情報に触れることができるのも魅力のひとつ」と聞き、ふとその日一度もSNSを開くことなく過ごしていることに気付く。不必要な情報を自然とシャットアウトできることで、ワークの質が向上する気がした。
コーガ石への想いが生んだ「Hostel NABLA」
新島の至るところで出会える表情豊かなモヤイ像は、コーガ石で造られたもの。イタリアのリパリ島と新島の周辺でしか産出されないコーガ石は、軽い上に耐火性・耐熱性に優れ、建築の分野を始めその用途は多岐にわたる。渋谷の駅前にあるモヤイ像も新島から寄贈されたものだ。
今回私たちが滞在した『Hostel NABLA(ホステル ナブラ)』も、オーナーである梅田久美(うめだ くみ)さんの「日本では新島にしかない貴重なコーガ石を保全していきたい」という想いから、コーガ石で建てられた古い物件を改装したそう。
ラウンジや宿泊部屋は、新島の海と白い砂浜をイメージさせる青と白を基調とした落ち着く空間。ネットワーク環境はもちろん、個別のミーティングブースもあり、ワーケーションに最適な環境が完備され、重いデータのアップロードもノンストレスで快適に作業できた。
島民の温かさに触れる乗り物、ベロタクシー
街のあちこちにはコーガ石の建物が多く残る。個人宅の塀を眺めていると、住んでいる方が「こっちから見た方が素敵よ」と中庭に招いてくれた。新島の気質だろうか。島の人はとっても気さくで優しい。新島に嫁いで移住してきた人も、当初あまりにもすんなり受け入れてもらえて肩透かしをくらったそう。風通しの良さは環境だけでなく、人間関係にも共通するようだ。
そんな街並みを楽しむには、2021年4月からスタートのベロタクシーに乗り込もう。ドイツで誕生したその自転車タクシーは、人力車をイメージして貰えばわかりやすい。3つのコースから天候や希望に合わせて行き先を選べ、コーガ石や白壁の街並みの中を走ってくれる。
伊豆諸島最大規模の『十三神社』に立ち寄った。背後には宮塚山の絶壁があり、自然の中に凛と佇む十三神社は、13の神が祀られているそう。境内に入ると、清々しい空気がとても心地良い。次に立ち寄ったのは、観光名所にもなっている新島の『流人墓地』。白い砂が敷かれ、どこか優しい雰囲気で、お墓特有の暗い印象が全くない。新島では習慣的に家族でお墓をきれいにしているという背景があると聞き、心温まるものを感じた。
ベロタクシーで新島の観光名所を満喫。ゆったりとした走りで、すれ違う地元の人との触れ合いもまた楽しい。通気性もよくガソリンを使わず環境にも優しいベロタクシーは、新島の新たな交通手段としても注目を集めているそう。
ベロタクシーを運営するのは5年前にUターンしてきた小澤里江(おざわ さとえ)さんが代表を務める一般社団法人 新島OIGIE(オイギー)。「新島の貴重な文化を未来に残したい」という想いからスタートしたOIGIEは、新島のコーガ石保全活動や空き家の利用支援、観光振興活動やコミュニティスペースの運営など地元民と島外の人をつなぐような活動を続けている。
「島の景色や自然を最大限に満喫したい人は夏のオンシーズン、ゆったりと自分の時間を過ごして島の人との交流を楽しみたい人は島の人がゆっくりしている冬のオフシーズン」が彼女のお勧めだそう。
新島ならではの食 自然の恵みを堪能しよう!
ワーケーション先を選ぶ際に食事は外せない。伊豆諸島の他の島からも毎日食パンのオーダーが入るほど人気の『かじやベーカリー』でお勧めされたタマゴサンドは、たっぷり入ったまろやかな卵と人気の食パンとのマリアージュがたまらない、そして嬉しい価格設定だ。
新島の特産品として外せない『くさや』。食べるのを躊躇する強烈な匂いのくさやは、一旦口に入れてみると、歯応えと塩気が美味しい。濃厚で個性的な味わいにお酒が進む。発酵食品のため、実は干物より塩分が少なく栄養価も高い。他にも島ずしや、白身魚のたかべ、細竹、明日葉やふきんとうなど、都心ではあまり売られていない島ならではのものばかり。
バケーション願望を満たしてくれる式根島
観光の見所を聞くと、みんな口を揃えて「新島に来たら必ず式根島にも足を伸ばして」という。幻想的な山道を抜けると、式根松島と言われる海岸の松と透明度の高い海、これは行かずには帰れない美しさだ。
水着着用で入ることができる無料の露天温泉が島内に3箇所もあり、中でもおすすめは、神経痛や冷え症などの効能があると言われている『地鉈(じなた)温泉』。海水と高温の源泉が混ざり合う海岸の岩場にあるため、ちょうど良い温度の場所を探して浸かる斬新なスタイル。すぐそばのポコポコ湧き出る高温の湧出場所で温泉卵を作ったら美味しいに違いない。次回は卵を持参して行くことにする。岩場の階段を降りて進む温泉に辿り着くまでの行き道もアドベンチャー感満載だ。
新島でワーク、式根島でバケーションという過ごし方や、式根島にもコワーキングスペースがあるのでその逆も自分の好みで選べる。船での移動は、アトラクションにカウントしたい楽しさだ。1日3便運行している連絡船で、片道たったの10分という簡単に日帰りできる気軽さもうれしい。
もちろん新島の温泉も忘るべからず。島民にも愛される『まました温泉』の砂風呂は、ワークで凝り固まった身体のデトックスにおすすめ。初心者は10分からのスタート、天然の温泉で温めた羽伏浦海岸の白砂に埋もれ目を閉じると、身体の芯からポカポカと温まるのを感じる。終わる頃には全身滝のように汗をかいてスッキリ。
島の西側にある『湯の浜露天温泉』から観る夕焼けや、メインゲートと呼ばれるモニュメントがある『羽伏浦海岸』からの日の出など、新島で出会える自然の美しさに圧倒され、日々溜まっていた心のモヤモヤが全て洗い流されるよう。仕事始めと終わりにこんな景色をみられたら、色んなものがリセットされ新たなアイディアが生まれそうな気がした。
島の魅力は感じる人によって違う。新島は押し付けがましくない。けれど必要なものは揃っていて、自分で選択し好きなスタイルで過ごすことができる。近すぎず、でも遠すぎない人との距離感や、都心からこの時間で日帰りもできる利便性も、何もかもちょうどいいところが新島なのだ。
テレワークがここまで浸透した今日、環境も良く都心までのアクセスもよい場所での暮らしを、ワーケーションで擬似体験してみるのをお勧めする。
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Sponsored by 一般社団法人 新島OIGIE