チェコスロバキアは、1918年から1992年まで存在した中欧の国。しかしながら、チェコ人とスロバキア人は、スラブ系ではあるものの、もともと違う二つの民族。チェコはプラハを中心とした中央の有力な独立国家で、スロバキアはハンガリーの一部地域とみなされる時期があったりと、その歴史も異なる。

今回の旅は、スロバキアの首都ブラチスラバと、チェコの首都プラハを巡る旅。スロバキアの人たちは、寡黙で真面目な印象で、チェコの人たちは明るく社交的と言った印象だった。その食文化は、共に中欧の国ということで、中欧に特徴的な食べ物が多く似てにいるが、それぞれの特徴もあって興味深い。

ポーランドのクラコフから夜行列車がブラチスラバに到着したのは朝5時過ぎ。駅のロータリーには、多くの人たちが仕事に向かうためにバスやトラムを待っていた。ここが一国の首都の玄関口とは思えないような小さな駅だ。春の終わりで、まだ吐く息が白かった。

社会主義の影が残るブラチスラバの街並み

トラムに乗って20分ほど、ブラチスラバの旧市街に着いた。を見下ろす丘にあるプリマティア宮殿は、18世紀後半に大司教が冬に住む宮殿としてつくられた美しい建物で、今は市庁舎として使われている。ここから眺める街並みはのんびりとしていて、落ち着いている。

古い通りを歩くと、中世ヨーロッパから残る建物が多いのだが、社会主義時代の建物残っている。廃墟になっているものもあり、今でもオフィスとして使われているものもある。特に、当時のプロパガンダを表したレリーフなどは、まさに社会主義のイメージそのもの。民主主義になって20年以上経っても、ここは社会主義国家だったのだと思い起こさせられる。

ハルシュキはスロバキアのニョッキ

昼時になって、旧市街にある小さなレストランに入った。近隣のビジネスマンがフラッとランチに来るような店だ。ウェイターにおすすめを聞いて、前菜にスモークしたトラウトを選ぶ。程よい燻製の香りがおいしい。リンゴとホースラディッシュとヨーグルトを和えたサラダが爽やかだ。

メインには、鶏肉をパプリカ粉で煮込んだチキンのグーラッシュを。ジャガイモを摺って小麦粉と一緒に練り、フォークでちぎって茹でるハルシュキは、スロバキアのニョッキのようなもの。モチモチとした食感が楽しい。フォークでちぎっているから断面が多く、ソースがよく絡む。

グーラッシュは中欧の国ならどこにでもある料理だが、チキンであったらビーフで合ったり、肉の切り方もダイスだったりスライスだったりといろいろ。一方ハルシュキはスロバキア特有だ。

(このレストランは現在閉店)

夜遅くついたプラハで遅い夕食

ブラチスラバから列車で4時間。夜9時ごろにホテルにチェックインして、すぐに食事に出かけた。あの有名なカレル橋からすぐ、小さなプラハらしいレストランに入る。

ここでもスモークしたトラウトを。日本人にとって、魚を使った生に近い料理は嬉しい。ホースラディッシュのツンとした刺激のあるソースがいい。

メインに選んだのは豚のロースト。グレービーソースに、クネドリーキというパンが添えられている。プラハでは、店先で子豚の丸焼きを焼いているレストランを見かけるが、これはそれとは異なるもので、スライスした切り身を焼いたもの。クネドリーキの食感は蒸しパンのようだが、茹でて作るのであっさりしている。行ってしまえばパンの内側だけといった感じだ。これをソースに浸して食べるとおいしい。このクネドリーキはチェコならではのパンだ。

デザートには小さなアップルシュトレードルを。リンゴとカスタードのパイは、やはり中欧でよく食べられる。

Restaurant U modrého hroznu
https://www.yelp.com/biz/restaurant-u-modr%C3%A9ho-hroznu-praha

プラハのビール醸造所併設の新しいレストランへ

Lokál Dlouhááá は、最近できたビール醸造所を併設したレストラン。特に若い層に人気の店で、伝統料理も新しいエッセンスを加えてアレンジしている人気店だ。

前菜にはニシンの酢漬けを。やはり生の間食が残る魚は旨い。焼いたレモンが添えて会って、ちょっと香ばしいようで楽しい。

牛肉のグーラッシュは、厚くスライスした肉が食べ応えたっぷり。これをクランベリーが入っているホイップソースで食べるところが新しい。しかしやはりクネドリーキは必須のようだ。

Lokál Dlouhááá
http://lokal-dlouha.ambi.cz/en/

夜プラハの街を歩く

プラハには、ヨーロッパ中からやって来る旅行客が多い。繁華街も遅くまで盛り上がり、陽気な声が響き渡る。夜の街を歩けば、ローストされた豚肉がロースターの中で回り、チェコの伝統スィーツであるトゥルデルニークという砂糖をまぶしたパンを焼く店には人が並んでいる。大きなホットドッグを売るキオスクはそこかしこにあり、人々が集まってわいわいと賑わっていた。

昔は一つの国だったこともあるチェコとスロバキアだが、旅をするとその違いを肌で感じることができる。もちろん、その似ているところもだ。食文化も、似ている部分あり、独特な部分もありで、比べながらの食べ歩きでいろいろ発見できる。ぜひ、一度の旅で訪れたい二国だ。


石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/