上の画像は、スウェーデンの首都ストックホルムで食べたサイコロステーキ「ビフ・リュードベリ」。スカンジナビアの国々(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク)の肉料理は、シンプルだが力強さがある。今回は、以前紹介したデンマーク以外の3カ国をご紹介しよう。

ビフ・リュードベリこそ、スウェーデンの家庭料理

ストックホルムのホルムセントラル駅から北へ向かって歩けば、ヴァーサスタン地区はほんの10分ほど。いくつかの緑豊かな公園があり、大学や市立図書館もある比較的静かな住宅街で、地下鉄のオデンプラン駅の周りには、小さなスェーデン料理の店が多い。

Café Tranan カフェ・トラナンもその一つ。「Café」と言っても日本のそれとは違って、しっかりとした食事と魅力的なワインのセレクションを楽しめるカジュアルなレストランだ。テーブルに着くなり、ウェイターに「一番ストックホルムらしいものが食べたい」と告げると、ビフ・リュードベリというダイスにしたビーフのステーキだという。もちろん、それをオーダーした。

スカンジナビアの料理はシンプルだと聞いていたが、運ばれてきたビフ・リュードベリはかなりシンプルで飾り気がない。皿の半分には大き目に切られた牛肉、もう半分にはソテーしたジャガイモ、真ん中には卵黄が乗っている。牛肉の味付けには塩・コショウ、そしてウスターソースを使うのが一般的だという。ホースラディッシュのクリームが添えられている。

とても力強い。肉は肉らしく、ジャガイモのそっけなさがまたいい。それに生タマゴを付けて食べるとはすき焼きのようで驚かされる。他の欧米の国々では見られない食習慣なのだ。(タマゴの生食には、衛生上の課題が多いといわれている)。

日本に帰ってから作ってみた。いろいろ調べてみると、ホースラディッシュ以外にもマスタードクリームを合わせることもあるらしいので、それに挑戦。ジャガイモのソテーは低温でじっくり時間をかける必要があるが、牛肉のほうはフライパンで焼くだけ。これが北欧料理だといっても、なかなか信じてもらえないかもしれない簡単さだ。

伝統のミートボールもいろいろ

北欧と言えばミートボールを思い浮かべる人も多いだろう。どの国にもミードボール料理はあるが、食べる場所によってさまざまな味があり、工夫もある。

フィンランドの首都ヘルシンキで人気のフィンランド料理の店 Ravintola Sea Horse(ラヴィントーラ・シー・ホース)では、「まさにこれ」という典型的なビーフのミートボールを楽しんだ。一つがかなり大きくボリュームがある。他にも食べたいものがあったので、本来は5つだが3つにしてもらった。マッシュポテトに紫が鮮やかなビーツのスライス、グレービーソースはミートボールにもマッシュポテトにもよく合う。ほんのり、何かハーブの香りがするので店員に聞いてみたがそれは秘密と微笑まれた。予想はオールスパイスだが、確証は得られなかった。

ストックホルムのFotografiska (フォトグラフィスカ)は写真の美術館。大きな窓から港、そして向かいの島にある遊園地までが見渡せる気持ちのいいカフェでは、小さなミートボールを使ったオープンサンドをランチに。ライ麦パンの上に、マッシュポテト、リンゴンベリーのソースを敷き、さらにチキンのミートボールが乗る。ピクルスとビーンスプラウトの緑が鮮やかで、これはちょっとしたスナックにもぴったりだ。  

ビーフタルタルという食文化

日本では禁止されている牛肉の生食だが、韓国から中央アジア、中欧から北欧までの広い地域の立派な食文化。ノルウェーの首都オスロのパブで食べてみた。この店は昼から開いている酒場でちょっと入りにくいのだが、思い切って自分もビールを頼み、ビーフタルタルをオーダーした。(実はこの店は2階でレストランも経営しているので、そちらのほうが不安感が少ないと思われる)。

そして出てきたのがビーフをナイフで叩いたタルタル。ここでも卵黄が乗っている。塩とごま油があれば、韓国のユッケだ。しかし、味は塩・コショウのみ。これがなかなかワイルド感たっぷりでおいしい。久しぶりに食べた生の牛肉は、マグロの赤身にも似てさっぱりしていた。

Dovrehallen Restaurant

オスロの他のパブではハンバーガーを食べてみた。そもそもはビーフタルタルを焼くようになってできたのがハンバーガーだと言われている。今回の3つの国どこでも、「MAX」というハンバーガーのチェーン店を見かけた。1968年にスウェーデンで生まれたバーガーのファーストフード店で、世界に120店舗あるという。アメリカの世界的ハンバーガーチェーン店の台頭前から、ハンバーガーが根付いていたのだ。

ノルウェーではクジラ肉も食べる

Mathallen Oslo(マートファーレン・オスロ)は、マーケットとレストランなどが立ち並ぶショッピング地区。そこに入っている魚屋でクジラ肉をみつけた。ケースの中の真っ赤な肉を眺めていると、店員が日本から来たのかと聞くのでそうだと答えると、「クジラを食べるのはノルウェー人と日本人くらいだよね」と言ってにっこり。どうやって食べるのかと聞くと、ステーキにするとのこと。一般のマーケットに並んでいるとは、日本よりもっと身近にクジラを食べているのだとまた驚かされた。 

北海のシーフードも豊富な北欧、肉料理もシンプルながら素材の味を生かしたパワフルなものが多い。食においてもそんな質実剛健さが魅力的だ。


All photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/