ブリュッセルはフランスの北、ドイツの西、オランダの南に位置する北海に面した国、ベルギーの首都で、海を越えればイギリスだ。そして、EU(欧州連合)の本部があり、まさにヨーロッパの中心と言える。その原加盟国は、ベルギー、ドイツ(加盟当時西ドイツ)、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダの6カ国であったから、地の利がよかったことも本部が置かれた理由だろう。最近では2013年にクロアチアが加盟し、28カ国となった。NATO(北大西洋条約機構)の本部もブリュッセルにある。西ヨーロッパから旧ソ連の東ヨーロッパの国のほとんど、大西洋を越えたアメリカとカナダを含む29カ国が加盟している。

ベルギーの人口は、2019年には1154万人を超えると予想されている。2010年が1083万人だったから、この期間に急増している言っていいだろう。EU内外からの学生、EU諸国からの労働者、亡命してきた移民も増えている。またブリュッセルに関して言えば、住む人の60%はベルギー以外で出生したという。

そんな国際都市ブリュッセルで、モロッコ料理とポルトガル料理、それにベルギーの伝統料理を食べ歩いた。

外国籍人口第3位のモロッコ料理を

ブリュッセルに住む外国籍人口で一番多いのはフランス出身者、第2位はルーマニア、そしてモロッコと続く。EU域内からやって来た人たち以外だと北アフリカ出身者が多いのだという。

ブリュッセルの中心と言える広場Grand Place (グラン プラス)周辺の、観光客が多く集まる地域から南東へ向かえば、すぐにイクセル(Ixelles)という地域に入る。この辺りにはショッピング、グルメ、カルチャーの施設が多く、地元の活気が感じられる。またアールヌーボー建築が多いので、ゴシック建築が多いグランプラス周辺と比べるとモダンな雰囲気だ。ちょうどその真ん中あたりにあるのがイクセル湖で、開放的でありのんびりとした気分も感じられる。モロッコ料理の店 Kif Kif Caféは、イクセル湖畔の住宅ビルの1階にある。

店頭のネオンサイン、そして「モダン モロッコ」と呼べるようなインテリアも魅力的なモロッコ料理のレストランは、比較的遅い時間にもかかわらず多くの客で賑わっていた。Kif Kifは「だいたい同じ」とか「50歩100歩」といった意味。肩ひじを張らない居心地のいい空間が落ち着く。まずはベルギービールのデュベルをいただく。

Mezzeと呼ばれる前菜から好きなものを選ぶ。野菜を中心とした冷菜で、豆や茄子を使った料理やサラダには、オリーブオイルがたっぷり使われていて風味がいい。ひよこ豆を潰して丸めたものを揚げたファラフェルは、メレンゲの上に乗せられていた。(これは独創的なプレゼンテーションだ)。そしてケバブは、チキンにラム。香辛料が効いていて食欲が増す。メインにはラムのタジン。タジン鍋で蒸し焼きにしたもので、プルーンの甘さがラムの旨さを引き立てている。そして最後はすっきりとミントティー。甘くして飲むのがアラブ流だ。

ポルトガルはEUの他の国で仕事する人の数で第4位

EU域内の国籍があれば、自国以外のEUの国で仕事に就くことができる。ポルトガルの20歳から64歳の人たちの13.9%が、EU域内の他の国で働いているそうだ。ルーマニア(19.7%)、リトアニア(15%)、クロアチア(14%)に続く第4位だ。

同じイクセル地区にあるCaramuloは、バーとレストランが独立しているものの、同じビルの1階に並んでドアを構え、中では通路でつながっているという店舗。ポルトガルに関連したイベントも多く開催されて、ポルトガル出身者が多く集まる。

サグレスはポルトガルの国民的ビールの一つ。前菜には伝統の揚げ物をいただいた。写真の下左から、Risol de Carne(牛肉)、Bolinho de Bacalhau (鱈)、Rissol de Atum (マグロ)を使ったもので、どれも適当な塩味がついていておいしく、ビールに合う。

メインには、豚肉とアサリの蒸し焼き Carne de Porco à Alentejanaに、タコを茹でてグリルした Polvo à lagareiroを。面白いのは、いずれもジャガイモを使っているところだ。ポルトガルではジャガイモを使っていないバージョンがほとんどだが、ジャガイモを主食の一つとするベルギーでは必要不可欠なのだろう。いずれもシンプルな定番ポルトガル料理で、魚介の出汁が出て日本人にも馴染みがある味に感じる。

Caramulo

とは言えベルギーの伝統料理をおさえる

町の中心の東、少しだけ標高が高くなっているあたりになるともう住宅地の静けさで、それでもところどころにレストランやカフェが点在している。カフェの一つで、ビールを飲んだ。ベルギーでは1500種類以上のビールが醸造されていて、果物を漬けたものがあったり、度数もいろいろだったりと様々だ。2018年に、ベルギーのビール文化はユネスコの世界無形文化遺産に登録された。

アンセニュモン通りにある Den Talurelekkerに入った。間口も狭く、奥行きもあまりない小さな店だが、経験豊富なウェイターが常連客を相手にしながら、アットホームながらもちょうどいい距離感でサービスしてくれる。内装はベルギーらしく壁には肖像写真、小さなシャンデリア、いすやテーブルも装飾が過ぎず気持ちがいい。

ベルギーの伝統料理、その一つ Le filet de poulet au Banyuls。Banyulsは甘いデザートワインとクリームで鶏肉を煮込み、あっさりした肉に深いコクを与えている。もう一品はLa langue de bœuf sauce Madère。こちらは牛肉のワインソース煮込み。味わい深い牛肉は、ふくよかなソースに負けていない。いずれもシンプルなマッシュドポテトが付け合わせだ。煮込み料理がおおいベルギーでも人気の料理だという。もちろん、家庭でも作られているものだそう。店には近所の住人だろう家族客が、ゆったりとした時間を楽しんでいた。

Den Talurelekker

国際都市ブリュッセルに行ったら、ベルギーの食事もいいが、各国からやって来た人たちの本格的な食を食べ歩くのも楽しい。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/