美食の街ともいわれるブリュッセル。そのブリュッセルに住んでいる人の国籍の数は2016年のレポートでは182というから、かなりの国際都市だ。様々なバックグラウンドの人たちの舌を満足させているほど旨いものがあるのなら、食べ歩きをしてみないわけにはいかない。

フレンチフライはフランスから来たわけではないらしい

ベルギーのB級グルメと言えば『フレンチフライ』。そのうまさの秘訣は二度揚げだという。フレンチフライのレシピを見れば、ほとんどの場合最初は低温でふっくらと火を通して、そのあと高温にして表面をカリッと仕上げると書かれている。そして食べてみると確かにおいしいのだ。

観光名所も多く公共の施設も集まるブリュッセルの中心部ならどこにでもあるのがフレンチフライを揚げて売る『Friterie』。ずばりフランス語でフライドポテトという意味だ。そして人気のある店にはもちろん行列ができている。Friterie Taboraもその一つ。香ばしい揚げたてのポテトの香りが食欲をそそる。S・M・LからSを選んだ。「ソースはどうする?」と聞かれる。20種類はあるというソースは別売りだ。一番人気を訊ねると「チリソース」だというのでそれにした。

アツアツのポテトに乗せられたソースは実はチリマヨネーズで、どうもどのソースもベースはマヨネーズらしい。店の表にある折り畳みの椅子とテーブルには、若い男女、女性のグループ、老夫婦、そして行列には男子学生の友人同士といろいろな客がいる。

さてそのフレンチフライだが、その発祥には諸説あるらしい。ベルギー人たちは、フレンチフライは彼らの国で生まれたもので、ただ単にフレンチという名前を使っただけだという。フランス北部では、最初に作り始めたのがフランス人であり、フレンチフライと言う名前がそれを物語っているという。(ただ、他の地域のフランス人によっては、フレンチフライはフランス発祥ではないと言い張る人もいる)スペイン人は、そもそも南米からヨーロッパにジャガイモを持ってきて栽培を始めたのはスペイン人であり、彼らがフレンチフライをフランス人にも広めたのだという。そしてイギリス人はそもそもそれをチップスと呼んでいる。というわけで、どうも「はっきりしない」というのが答えのようだ。
Friterie Tabora

ベルギーワッフルはベルギー生まれなのか

さて、ベルギーのアイコンの一つは「小便小僧」の像だ。旧市街の細い通りの角に人だかりがしていて、スマートフォンを向けている。見上げればそこに彼がいた。どうしてこの小便小僧が作られたのかも諸説あるようだが、いずれにせよ旅行者を楽しませ、住んでいる人たちに愛されていることには間違いがないようだ。

ベルギーワッフルはその名の通りベルギーで作られるワッフルで、表面は四角く深い格子状に焼かれる。その中でもブリュッセルのものは長方形で、リェージュのものは円形なのだという。少し前に日本でも流行して定番のスィーツの一つに定着した。ブリュッセルの観光客を相手にしている店では、色とりどりのフルーツや濃厚なクリームでデコレーションされた特別感のあるものが人気のようだ。

そこで見つけたのが The Sister Brussels Café だ。この店はオーガニックの店で、朝食からランチ、ディナー、フィンガーフード、それにコーヒーやビールまでオーガニックのものを提供している健康志向のカフェ。ここで、オーガニックでグルテンフリーのワッフルを食べることにした。食べてみれば、普段から甘いものや油脂の多いものを食べなれている自分にとってはかなりあっさり、そして口の中でももっさりとした食感で、「旨い」という気持ちにはすぐにはならない。しかしゆっくりと粉の味を感じ、果物のみずみずしさを味わうと、「あぁ、これって旨いんだな」とジンワリ浸みてくるのだった。

この店はより地元の人たちが集まる店のようで、夜にビールを飲みに来たら楽しいのだろうと思う。

さてベルギーはワッフルだが、フランスにはゴーフルがある。ゴーフルとはもともと表面にID(作り手の名前やそれとわかる模様)を施すことを言うようで、ベルギーワッフルと比較するととても薄い。2つの鉄板の間にギュッと押さえて焼くのは同じだが、格子状の模様は小さく、深い溝にはなっていない。挟んであるのはクリームとシンプル。ヘーゼルナッツのクリームのものを買って食べてみた。こちらは完全にお菓子。そういえば日本にもあるゴーフルやゴーフレットと言う名の菓子はこの系統らしい。

The Sister Brussels Café

インターナショナルな朝食も面白い

ブリュッセルは国際機関も多く、特に欧州各国から働きに来ている人が多い。Chicago Caféは、朝9時から夕方5時まで、一日中朝食が食べれて、ランチはお昼時だけという店。天窓から光が差し込む広い店内には、子供にちょうどいい高さのテーブルや椅子、それに映画館の椅子をリファーニッシュしたものなどがあって楽しい。朝食のメニューはたまに変わるらしいが、この日はアメリカン、イングリッシュにフル・イングリッシュ、それにメキシカンが用意されていた。そのうちのメキシカンはヴィーガン。メニューには飲み物や、オムレツなどの単品もあるが、ベジタリアンとヴィーガンのメニューもしっかり揃っていた。

なにしろ、メニューと提供時間のコンセプトが面白い。子供連れもいれば、大の大人が数名で、まるで学校のランチタイムのようにワイワイと食べていたりと、集まる人たちは雑多だ。日本にいると特別なことのように思える「多様性」が、ここには自然に存在して、それを皆が自然に受け入れているようで気持ちがいい。

Chicago Cafe

Peck 47は食事も充実した、朝から夜までやっているカフェ。エッグベネディクトやアサイーボールなど、インターナショナルな朝食が充実している。こちらの内装はポップなアイテムを使っているけれどシックにまとまっていて、落ち着いた雰囲気だ。このPeck 47以外にもVelvet Peck、Street Peck、、Peck 20という系列店があって、Facebookページの情報によれば、たとえばVelvet Peckでは「夏の発酵ワークショップ」が開催されるなど、面白そうな取り組みも人気のようだ。

Peck 47

さて、ジャンクの代名詞フレンチフライから、あのベルギーワッフル、そして国際都市ならではの多様な朝食やヘルスコンシャスな食べ物もしっかり提供されているブリュッセル。正統派のレストランだけじゃなく、新しく楽しい店も多いのが嬉しい。


All photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/