ヤンゴンから飛行機と車でニャウンシェへ

「インレー湖」という名前だけでも聞いたことがあるだろうか。金色の岩が絶妙なバランスで崖の上に乗っているゴールデンロック(チャイティーヨー・パゴダ)や、熱気球から見る上空からの絶景が圧巻なバガン遺跡と並び、インレー湖は地元の人たちにも、海外からの観光客にも人気の観光地だ。

印象的なアイコンは、この湖で昔ながらの方法で漁をする漁師の姿だ。自分の体がすっぽり入るほどの網と、不安定に見える小さなボートの櫂を、両手・両足を使って起用に操る姿を、写真で見たことがある人も多いだろう。

ミャンマー国内を効率的に移動するなら飛行機がいい。いくつかの航空会社が主要都市を結んでいるので、バスで移動するよりも圧倒的にかつ快適に、短時間で移動できる。LCCも運航しているので、チケットの価格もリーズナブル。

ヤンゴン空港の国内線ターミナルからプロペラ機にのって1時間ほどでミャンマー中部にあるヘーホー空港に着いた。ヘーホーはシャン族のふるさとシャン州の州都タウンジー近郊の空港で、インレー湖畔のニャウンシェへも車で1時間ほどの距離に位置する。

ニャウンシェはインレー湖観光の拠点の街で、運河(と言っても自然の川のように見える)を南に下れば、インレー湖へと入っていける。いわゆるホテル然としたホテルが数件、ホテルとは言え民宿のような施設が多いが、静かな田舎町といった雰囲気で落ち着いた印象だ。

朝、ニャウンシェの市場に出かけてみた

朝になって、泊まっていたホテルで朝食をとる。家族経営の小規模なロッジはアットホームで、厨房からは小気味のいい包丁の音が聞こえてくる。シャンヌードルがテーブルに運ばれてきた。

あっさりとした鶏のスープにはミャンマーの魚醤「ンガピャーイェ」が使われている。内陸でも魚醤があるのは、その材料にナマズ類の淡水魚を使うからだという。そこに細めの米の麺が入っているが、いわゆる「腰がある」というものではなく比較的柔らかいが、米の麺ならではの表面のプリッとしてつるっとした食感が嬉しい。鶏肉を細かく切ったもの(挽いたものではない)を、小玉ねぎとシャロットとトマトを細かく切ったもの一緒にピーナッツオイルで炒めたものが乗っていて、高菜に似た野菜の漬物に唐辛子を軽くつぶしたペーストが添えられている。

「優しい味」という言葉がぴったりだ。極端な味付けではなく、ある意味物足りなさを感じる人もいるかもしれない。軟らかい麺は、起きたばかりの朝の胃に良さそうだ。聞いてみると、麺は茹でたものをマーケットで買ってきたそうで、特に茹でたてにこだわるということなないという。鶏肉を使った具の味付けはシンプルだが、シャロットの風味がトマトの酸味によく合って旨味を感じさせる。食べ終えるとすぐに、街の市場に出かけた。

新鮮な野菜、肉、米、果物、香辛料に、生活雑貨に洋服の小さな店が立ち並ぶ。お惣菜を売る店に、屋台も数件。みんな朝から、しっかりと温かいものを食べている。やはり麺料理が人気のようで、お粥を食べている人も多い。

市場の一角に乾麺を売る店があった。そしてそのそばには茹でた麺を売る店が確かにあった。大きな蓮の葉の上に真白な麺。もうかなり売れてしまったような様子だった。家庭で乾麺から茹でてもよし、気温が高い気候だから、うちでお湯をグラグラと沸かすことなく茹でたものを買ってしまってもよしということなのだろう。

インレー湖畔の村の生活を感じる

インレー湖は南北に22㎞、東西に10㎞から12㎞ある大きな湖だ。自転車で出かける。周辺には村落が点在していて、11月の祭りの時期を迎えたころの休日、人々は親戚を訪ねたり、僧院に集まって祭事に参加したりと、いつもとは違うのんびりした雰囲気と同時に、ちょっとウキウキとした空気に包まれていた。

蓮の花が咲く中に立つ水上の住宅に、桟橋にはボートに乗って盛装の子供と出かける家族、小さな村に入り込んでみれば、シャン族の衣装を着けた少女が蓮の花をもっていた。

漁師と湖上のマーケット、寺院にパゴダ。ボートで巡る。

ニャウンシェからボートに乗り水路を下ってインレー湖へ出かける。そこには伝統的な漁法の漁夫の姿があった。

ファウンドーウー寺院の周りには、月に数回市場が出る。こちらの食堂には若い僧たちが陣取って、なにやら注文をしているところだった。寺院の中では多くの人たちが集まり祈っている。騒がしいのだが、忙しさはなくリラックスできる。

ガーペ僧院には静謐な雰囲気が漂っていて祈りの場と言った趣だ。木造の建物の中の広い空間では、僧侶と信者が茶を飲みながら何やら話していた。

インディン遺跡には400を超えるパゴダがあり、その尖塔には数個の鈴がついている。風が吹けば、風の流れに沿って、鈴の音が続いて流れていく。こちらの寺院でも、お茶が準備されていて参拝客が休んでいる。あちらこちらからふと入ってくる風と鈴の音が心地いい。

帰ってからシャンヌードルを作ってみた

日本に帰ってから、シャンヌードルを作ってみる。鶏肉、トマト、エシャロットで作るトッピングさえ作ればすぐに出来上がる。お隣のタイ料理のような鮮烈な辛さもなく、ほっとできる味。レシピはこちらのサイトにあるので、興味があれば作ってみてほしい。


All photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/