スウェーデンの首都ストックホルムには独特の活気があると思う。同じ北欧でも、フィンランドのヘルシンキは北欧らしい落ち着きと静かな生活が感じられ、ノルウェイのオスロはいつでも海に出ていけそうな自由さを感じる。デンマークのコペンハーゲンは、整然とした街並みと交易の歴史の趣が深い。

ストックホルムの中心部は、北から大学のある学生街、閑静な住宅街、セントラルステーションと商業地区、市庁舎、スターズホルメン島にはガムラスタンと呼ばれる旧市街、南は新しいショップが多いゼーデルマルムと、南北にほんの2㎞位の距離になる。この、比較的狭い地域に、ぎゅっと都市機能が詰まっていて、地元の人たちも観光客たちも、雑多に混じりあっている。

北欧ならではのシーフード

「Arctic Char」は、訳せば「極北のイワナ」だ。サーモンやマスの仲間の淡水魚で、その繊細な身は確かにイワナに似ている。ただし、大きさは1kgから5kgにもなるため、かなり大型だ。スウェーデンならではの魚を食べたいということで、セントラルステーション近くの、「Kött och Fiskbaren」に入った。そしてお勧めされるままにオーダーした。Arctic Charを1分間スモークしたもので、ほんのりと燻製が香って、本来の味を引き立てている。

Kött och Fiskbaren

スウェーデンのエビは日本のエビとはちょっと違う

北欧でよく食される小さなエビは、「North Sea Prawn」。テーブルに運ばれてくれば、手で殻を外して食べる。大きさは甘エビほどで、弾力がある。顔つきは小さなボタンエビといった感じで、鼻筋にのこぎり状のとげがある。シーフードの店「Rakan」は、北の住宅地が始まるあたりにある落ち着いた店だ。どのテーブルでも、このエビを盛大に、両手を使って次々と食べている。ちなみに写真は半人分。

他に、冷たい海ならでは、夏でも食べられる生牡蠣は海の香りがして楽しめる。手長エビをつかったスパイシーな鍋は、最近の創作だという。

Rakan

ザリガニがこんなによく食べられているとは

ストックホルム近代美術館 「Moderna Museet」は、シェップスホルメン島にある。島とはいえ、中心部から橋を渡ってすぐの距離だ。なにしろストックホルムは14の島からなるのだから、橋が多い。そのカフェでランチに食べたのが、ザリガニのサラダ。身はそれほどプリッとしていなくて、味もとても淡泊でサラダに合う。

よくこれだけのザリガニをむくものだとあるシェフに聞いてみたら、殻をむいたものを提供する業者がいるそうだ。

Moderna Museet

郊外のグスタフスベリでは、港の古い屋敷の1階にあるカフェCafe Tornhusetでは、パンを船に見立てたザリガニサラダパンを食べた。ヨーグルトとディルをベースに和えたザリガニは、クリーミーさが加わって爽やか。リンゴンベリーの実が乗っていて、いかにもスウェーデンと言う一品だ。

Cafe Tornhuset

クリスマスには「ヤンソン氏の誘惑」!

1900年頃に生まれたと言われているこの変わった名前の料理は、当時のグルメ好きオペラ歌手、ヤンソン氏のために作られたともいわれているようだが、どうも定かではないようだ。ジャガイモとアンチョビをクリームと合わせてオーブンで焼いた料理で、クリスマスには欠かせないという。

アンチョビを使うので、しっかりとした塩味。これをスェーデンの家庭でもよくつくられる、薄いクリスピーのパンと一緒にいただいた。場所は港のそばのパブ「Zum Franziskaner」。 地ビールが旨い店。地元料理のクォリティも高く、地元の人たちに人気だ。

Zum Franziskaner

シーフードのスープがラフでも旨い

ノーベル賞の授賞式も行われたコンサートホールのすぐそばにある「Kajsas fisk」は、食料品店が入る建物の地下にある魚屋に併設された食堂。ここの人気はシーフードのスープなのだが、なにしろ鍋からボールに雑にいれて、そこにクリームをさらに雑に入れるというラフさ。しかしその美味さで人気がある。時間がなくても大丈夫。みな、さっと食べてさっと出るという気軽な店だ。サーモンなどの新鮮な魚に貝類もたっぷりで、トマトベースで温まる。

Kajsas fisk

ストックホルムでは、ぜひとも北の国ならではの旨いシーフードを堪能してほしい。


All photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/