「ただ蜂蜜を作るということだけではありません。私たちが根本的に行なっている事は、自然と私達の関係を変えることです。どうやって都市に住む人々を再び自然に戻すか、それによってよりまとまりのあるコミュニティを作りだすと同時に、私たちの周りの環境をより豊かにすることを目指しています」。

その日は、暖くも風の強い日だった。Bybi(ビビ)の倉庫内で話をしていた所、創始者のオリバー・マックスウェル(Oliver Maxwell)が部屋の向こう側で顧客の一人から、どのくらい蜂蜜を購入して、モバイルペイ(お金を送金するアプリ)でいくらお金を送金したかについて知らされている所だった。オリバーが「大丈夫だよ、信頼してるから」と答えた様子から、彼らがお互いに会うのは初めてではないことは明らだった。

Bybiの事務所はコペンハーゲンのSundholm(スンホルム)という地域に存在する。元々このエリアは、ホームレスや薬物中毒者、人間関係に問題を抱えている人々が、社会の端っこに追いやられている間に、援助や避難所、治療をしてもらったり仕事を得ることができる地域として存在し、今もまだ機能している。オリバーがこの場所を選んだのは、特別な理由があったのではなく、Bybiのアイデアを伝えるにあたり、充分に魅力的な場所だったからだという。オリバーは、人類学の背景について、社会の規則と構造、人間の野生的な側面、そして自然界に置いての人間の存在意義についての規則を見つけることにとても興味を持っているようだ。

「蜂の巣の中を見ると、そこにある種の “社会” を見ることができるんです。ミツバチは、彼らの巣箱の中でコミュニケーションをとり、お互いに見たり呼び合ったりしながら組織づくりをします。異なるカルチャーの視点でミツバチを見ると、あらゆる形でそれらを反映しているようです」 オリバーは続けて説明してくれた。

「古代エジプト人は、蜂蜜は金よりも価値があると考えていました。また古代ギリシャ人は、蜂の巣の中に支配者が他の蜂を支配しているピラミッドを見たのです。そしてビクトリア朝の人々は、資本主義の象徴であるミツバチと蜂蜜に囚われていました。労働者達はこの有益な蜂蜜を女王に捧げるため、あくせく働いていたんです。そして、この話は今でも私たちが “蜂のように働いている” という風に、比喩としても使われていますよね」。

「ミツバチのコミュニケーションは洗練されていて、彼らの社会の様子は、ある意味で民主的。現在私たちは多くの解決すべき社会問題の前に立っていますが、ミツバチの様子を観察することで、これらの問題に対処する方法について学ぶことができて、社会が一つになる方法をも教えてくれます。私たちは、企業、ソーシャルプロジェクト、地域団体とのパートナーシップによって働き、ただ単に『受け身』の消費者ではなく、積極的な共同プロデューサーであるということを示すように努めています」とオリバーは付け加えた。

オリバーは2008年、気候に関する国際会議の後にBybiを設立した。議論の結果に彼は、“存在意義のあるビジネスを確立する方法を見つけること” に不安と苛立ちを覚えていたのだそう。翌日オリバーは、コペンハーゲンの郊外で自転車に乗っていた時に、いくつかの蜂の巣を見かけ、その光景は彼に蜂の物語や思い出を思い起こさせたという。それまで養蜂に挑戦したことはなかったそうだが、そのことがきっかけで養蜂家に会いに行くに至った。実際に行動に移し始めた2009年から、Bybiプロジェクトは始まった。

「蜂の中でも特にミツバチは、自然において重要な役割を果たし、農業においても野生植物や栽培植物に花粉を運ぶ重要な役割を果たしています しかし環境に有益なのは、蜂自身ではないのです」 オリバーは続けた。「それは蜂やその周辺環境に対する、私達の責任や態度に関する問題です。人々がより多くの花を植えて、彼らが住む環境を変えるためにどのように蜂を活用していくかということです。Bybiプロジェクトでは、ミツバチはそのようなことを理解するための“架け橋” として存在している。 蜂蜜を作るには、養蜂家、花、そしていくつかの蜂が必要です。もしこれらのどれか一つに集中しようとすると、バランスが悪くなるのです」。

Bybiの活動を通して、社会と環境を切り離して考えられている中で、それらは同じであり、繋がっているということを私たちに示してくれている。なぜ私たちが壊滅的な気候の状況に直面しているのかという理由は、これらの問題を別々に考えてきたからだということを、オリバーは教えてくれた。

「私たちにとって、生産するという事は、自分たちの置かれた環境に実際に良い影響を与えるということです。だから私たちはそれを豊かにする必要があるし、それらが見つかった時よりもより良い状態で残すことを考えていく必要があります」。

Bybiの取引先の企業の1つは大きな規模の会社で、工場でミツバチをキープするために多大な資金を提供している多国籍企業だ。 当初工場で働いていた人たちは、イニシアチブがとても良いと思い、より多くのことを望んでいたそう。 彼らは最終的に工場周辺の草をすべて掘り、フルーツの木や花を植え始め、今でも労働者のうちの25人が自主園芸家として働いているそうだ。

「物理的に空間を変えていき、工場の内にも外にも新しい社会との繋がりを創る。対立する世界の中で、新たに人との繋がりを創り出す。そうやってあなたが生産するハチミツが、これらのすべての関係についての象徴となるのです」 オリバーは続けた。 「そこには人生があり、環境があり、モノを生産するという行為で結びついた、新しい繋がりがある。私たちは、人々に考えさせることを促しているわけではなく、行動に移すよう応援しているのです」。

毎年5.5トンの蜂蜜を生産するBybiは、ヨーロッパ最大の都市蜂蜜生産会社だ。コペンハーゲン市内30箇所に、150個ほどの養蜂所が存在する。 全ての養蜂所で全く別の色や味のハチミツを生産している。これらの要因において最も重要な2つのポイントは、 蜂が好む花と気候だという。

ミツバチは、暖かく晴れているときにのみ飛ぶことができ、最も近くにある好都合なものをなんでも選ぶ性質なのだ。それは矛盾しているように聞こえるかもしれないが、都市で生産された蜂蜜は決して汚染されていないようだ。基本的にコペンハーゲン市内には、農薬や遺伝子組換えの植物はほとんどなく、水に溶けない車から排出される重金属もないので、花の蜜はそれらの影響を受けていないという。ミツバチは匂いにも非常に敏感で、汚染された蜜は避け、それらを巣箱に持っていくことはないのだそう。

「蜂蜜の生産は、私達の空間と所有に対する価値観を変えてくれます。 ミツバチはいかなる境界線や私有地を気にしていません。 彼らは “みんなのリンゴの木” に行きます。つまり、私たちがするべき事は、屋上や庭の1平方メートルのスペースを借りること。あとはミツバチがやってくれます」オリバーは続けた。「それは魅力的な自然現象で、人々はミツバチと彼らが花壇で行う活動を愛しています。もう一度言いますが、このように私達の街に関しても、見直すことができるのです。そこにはミツバチ、蝶、マルハナバチ、花粉を運ぶ役割のものがいて、人々はそれらを私有地に取り入れたがる。 これらが私たちが行なっている活動です」。

Bybiの製品は毎年テストされており、食品の安全性について懸念することはないようだ。

自らのスポンサーに依拠する非営利団体であるBybiは、自社製品を販売をするだけではなく、ビジネスの関わりを通して資金も調達している。 また、純粋な蜂蜜を生産することの他にも、ビールやキャンディー、ラムやアイスクリームなど地元の企業とのコラボレーションによって幅広く食品を生産している。 それに加えて、Nomaをはじめとするレストランや、蜂の幼虫を販売している人、様々な工芸や芸術作りのために蜂の製品を使用しているアーティスト、またはパフォーマンスのためのユニークなスペース作りをするミュージシャンなどともコラボレーションをしているそうだ。

Bybiによる蜂蜜作りの解釈は、自然の摂理とそれらが都市で果たす役割についてどう理解するかを示している。都市部で生活していると、そこから離れる機会や距離を、気づかぬうちに奪われている。ミツバチは多くの植物の受粉に役立つ最も貴重な昆虫のうちの一つだ。それと同時に、彼らは気候変動の脅威にさらされている。ミツバチの生態系に置いて、気温の上昇や気象条件の変化は、彼らの重要な仕事を奪うことになるかもしれない。

私たちの未来は、私たちが地球をどのように扱っているかにかかっている。そしてその限界値について、ミツバチは私たちに、これらのことを思い出させる一種として象徴しているのだ。


All photos by Markus Oxelman

Markus Oxelman & Natsuko Natsuyama

2017年、コペンハーゲンでたまたま同じシェアアパートに住んでいたMarkusとNatsukoは、色んな国を行き来するライフスタイル、食やワイン、アートや音楽の趣味が近かったため、すぐに意気投合し多くの時間を共有し始めた。2018年には数ヶ月共にジョージアに滞在した。現在は両者共、コペンハーゲン、東京を行き来しながら、コペンハーゲンやジョージアにまつわる記事を執筆している。
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“It’s not just about making honey. What we are fundamentally doing is changing our relationship with nature. It is about looking at how we can connect people back to nature in the city, and how we use that to create a more inclusive community, and at the same time to enrich the environment that is around us.”

It’s a warm but windy day, so we are speaking inside Bybi’s storage room, where founder Oliver Maxwell immediately gets told by a customer from the other side of the room how much she is buying and confirming that she has transferred the money from her phone. It’s clear that it is not the first time they see each other, and Oliver just answers, “That’s ok, I trust you.”

Bybi’s office is located in the small enclaved area of Sundholm in Copenhagen. Originally built and to some extent still functioning as an area where the homeless, people with addiction and socially related issues can get help, shelter, treatment as well as work while being on the edge of society. Oliver explains that they choose this location not because they were looking for it specifically, but because it was the only place open minded enough to let an idea as Bybi in. Being of a background in anthropology, Oliver has a big interest for the meeting of the rules and structures of society and the wild side of human nature, as well as what it means to be a human in nature.

Looking inside a beehive, we can observe a kind of society. The bees are communicating, looking, calling and organising inside their hives. The way different cultures have looked at bees are reflecting back themselves in many ways. “The ancient Egyptians thought honey was more valuable than gold. The ancient Greeks saw this pyramid structure in the hive where a supreme ruler (the queen) is ruling over the others (the working bees). The Victorians were obsessed by bees and honey as a symbol of capitalism. They saw the workers toiling for the queen to produce this profitable honey. And that model we still talk about today when we say things like “Working hard as a bee,” explains Oliver. “Bees communicate in sophisticated ways, and their societies are actually democratic in a sense. Today we are standing in front of so many societal problems to be solved, and looking at bees we can learn some things for how to deal with these issues and show us a different way of being together in society. We work in partnerships with businesses, social projects, community organisations, we work to show that we are not just passive consumers, but we are all active co-producers,” he adds.

Oliver founded Bybi after the climate conference in 2008. The outcome of the discussions had put him under unrest and frustration with trying to find actual ways to establish system critical businesses. Riding on his bicycle in the outskirts of Copenhagen one following day, he saw some bee hives. The sight brought him to think of stories and memories of bees and as he had never tried beekeeping before, he went to meet the beekeeper, eventually started practicing, and the Bybi project was started eventually up and running in 2009.

“Bees, and especially honeybees play an essential role in the natural environment as well as in farming where they are the main pollinators of wild as well as domestic plants. But it is not the bees themselves that are an environmental benefit” says Oliver, ”It is the behaviour we attach to them and around them. It’s how we use the bees to encourage people to plant more flowers, and to change the environment in which they are living.” In the Bybi project, the bees works as a “bridge” to understanding such things. “Making honey demands three things: a beekeeper, flowers and some bees. If you try to focus on one of these, you will have an imbalanced system.”

Bybi shows us that the social and the environmental is the same, in a world where we have decided to keep them apart. Oliver tells that the cause of why we are facing a catastrophic climate situation is because we have kept these issues separate. “Our means of producing is what actually influences the environment around us. So we need to enrich it, we need to make sure we leave things in a better condition than the way it was found.”

One of the companies who Bybi is working with is a big, multinational company that pays them for keeping bees by their factory. Initially, the factory workers thought the initiative was so good that they wanted more. They eventually dug up all the grass around the factory and started planting fruit trees and flowers, and 25 of the workers are now serving as voluntary gardeners. “In that way you transform a physical space. You create new social connections, both within and outside the factory. You create a new understanding of the human connection in a global conflict. And you produce some honey which becomes a symbol of all these relationships together.” Oliver says.“There are livelihoods, there are environments and there are new connections that are bound together in that action of producing stuff. We are not inspiring people to be thinking of, we’re encouraging them to do.”

Oliver tells me that Bybi, with a yearly production of 5,5 tonnes of honey, is the largest urban honey producer in Europe. The 150 bee colonies located in 30 different places around Copenhagen. Each of these sites are producing honey of clearly different colour and taste. The only two things that affects these factors; the flowers available, and the weather. The bees can only fly when it is warm and sunny, and they will always choose whatever is nearer and most convenient. Oliver also stated that although it might seem contradictory, urban produced honey is not contaminated in any way, and since there are basically no pesticides or fewer genetically modified plants in the city, as well as heavy metals exhausted from cars not being soluble in water, makes the nectar free from such things. Bees are also very sensitive to smell so they will avoid polluted nectar, and would they bring it to the hive, they would be rejected by the guard bees.

“Honey production is something that changes our perception of space and property. The bees don’t respect anybody’s boundaries or private property. They go to everybody’s apple trees. So all we need to do is to borrow a square meter of space on a rooftop or in the yard of some business, and then the bees will do the rest.” He continues, “It a fascinating natural phenomenon, people love the bees, and the activity they bring to their flower beds. But again, we could recalculate our whole city like this. So there would be bees, butterflies, bumblebees and other pollinators, and people would invite them into their private area. So that is what we are doing.” The products of Bybi are tested every year and there are never any concerns regarding food safety.

Being a non-profit organisation that relies on sponsoring itself, Bybi sells their products as well as gains some funds through business relations. Except for producing pure honey, Bybi also has a wide range of other products made in collaboration with other local companies such as beer, candy, rum and ice cream. A part from this, they also have collaborations with restaurants, for instance Noma, to who they were selling bee larvae, as well as for artists who are using bee products for different sorts of crafts and artistic practices, or musicians using their unique spaces for performances.

The way honey and honey making is interpreted by Bybi provides a way on understanding nature, and the role that it plays in the city. In our everyday lives, this is something that often can go lost as the distance and opportunities to leave urban areas might be difficult to combine with a life lived in the city. Bees are one of our most precious insects, serving for the pollination of a great part of our flora. At the same time they are threatened by climate change, and rising temperatures and changing weather conditions might put them of their job, as it doesn’t take much more than a few degrees of change, or rain, for them to abandon their very important role in the ecosystem of the world. The way our future will look is depending on how we are treating the planet, and at this critical point, bees symbolizes a species that reminds us of this.


All photos by Markus Oxelman

Markus Oxelman & Natsuko Natsuyama

Met in 2017 in Copenhagen while they were both staying in the same shared apartment. They bonded quickly over both enjoying the travelling lifestyle, food, wine, art and music among other things. Both are based between Copenhagen and Tokyo but also spends occasional time in Georgia. Started writing about Copenhagen and Georgia in 2018.
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