Peròはワインを買って、飲めるイタリアのワイン屋VINERIA(ヴィネリア)そのもの

東京・三軒茶屋の人気イタリアンBricca(ブリッカ)が展開するヴィネリアPeròは、ワインを買ったり、飲んだり、お茶をしたり、使い方は客次第の嬉しい店だ。

Briccaのオーナーシェフ、金田真芳さんは「時間をおけばおくほど美味しくなるのがワイン」と信じ、ブリッカのオープン以来8年間、彼の目利きで多くのワインを集めてきた。「これらのワインをレストラン以外でも、ベストな状態で楽しんでいただける機会と空間を作りたかった」と金田さん。そんな折、かねてからの知り合いでもありイタリアで様々な経験を積んできた現Peròマネージャーの森田雅人さんが、日本でヴィネリアを開きたいという思いとともに帰国。金田さんと森田さん2人のタイミングが絶妙に合い、Peròは誕生した。

潜在的にイタリア料理の世界が好きだった

森田さんの大学時代の専攻は設計・デザインで、卒業後は設計事務所で内装デザインなどを手がける仕事に従事していた。日々仕事で忙殺される中、学生時代にアルバイトをしていたイタリア料理の世界、接客業の世界への興味が再び沸き起こり、デザイン業界からイタリア料理業界へとシフトした。東京のピッツェリアで4年間勤めたのちイタリアの旅へ。北はミラノ、ヴェネツィアから、ローマ、フィレンツェ、ナポリ、アマルフィなどを経て南はシチリアまで、1ヶ月かけて各地を巡り、イタリア料理・ワインの世界でやっていこうと決心して日本に一旦帰国。その後1年かけて資金を貯め、再びイタリアに渡ったのは、森田さん30才の時。

Però マネージャー森田雅人さん |Photo by Misa Nakagaki

イタリアでの経験は直接交渉から始まった

再びイタリアに渡る際、森田さんが決めたことはひとつ、イタリアに詳しい日本の友人・知人には頼らない、というもの。「友人・知人の紹介で知り合ったら、紹介してくれた人の友達以上の関係にはなれない」との考えから、イタリアでの修行先は直接交渉のみで探すと決めたそうだ。

経験を積みたいと思う店にまずは客として行き、スタッフに話しかけ自分を知ってもらう。少しずつ距離を縮めていき、友達になってから「働かせてもらえないか」という交渉を行う。そんな体当たりのアプローチが功を奏し、レストランやヴィネリアで経験を積む機会を得ることになる。中でもローマのヴィネリアLITROでの経験は、Peròの原点になっているそうだ。

LITROでの時間

ワインやコーヒー、軽食など、客の様々な生活シーンにちょっとしたひとときを提供するローマのヴィネリア『LITRO(リトロ)』は、オーナーがこれぞと見込んだ食材やワインを扱い、客にその思いを伝えながらサービスするというスタイル。森田さんは「オーナーやスタッフが食材やワインへの熱い思いを伝えることで、客を感動させることができる」と確信したそうだ。LITROの客には、店で提供しているパンの作り手やワインの作り手などが多く、森田さんにとっては出会いの場所でもあり、その後ワイナリーで働くきっかけもLITROで掴んだ。

Photo by Misa Nakagaki

ルールが無いのがPerò

LITROの後、CARUSSIN(カルッシン)というワイナリーで自然派ワインの世界を体感して帰国、前々から知人でもあった金田さんの温めていた思いと森田さんの思いとが重なり、Peròをオープンすることとなった。

Peròでは、スタッフと客との間にコミュニケーションが生まれることを重視しているという。店内でのちょっとしたコミュニケーションが、客と店やスタッフの距離をぐっと近づける大切なきっかけだ、と森田さんは語る。

「イタリアのバールのようなノンアルコールの社交場を作りたかった」という言葉通り、カウンターでさっと喉を潤すのもよし、座ってゆっくりとコーヒーやワインを楽しむのもよし、もちろんワインを買って帰るだけでもよし、「ルールが無いのがPerò、お客様それぞれのスタイルで過ごしていただける空間でありたい」と森田さん。

自然派ワインを中心に品揃えは300~400種類ほど

ワインは、イタリアを中心に、ぶどうが本来持っている自然の酵母を活かして造られた自然派ワインを中心に300~400種類はあるそうで、中には稀少なものもあり、ワイン好きには垂涎の品揃え。しかしながら、その中から自分が飲みたい1本を探し出すのは至難の業。

「食事の内容やワインを飲むシーンなど、その時々のお客様の気分やライフスタイルに合わせて、ワインを提供していきたい。状況によってマッチするワインは千差万別、お客様との会話の中からベストな1本をご提案するようにしています」とのこと。ワインに明るくなくても、イタリアでの豊富な経験を持つ森田さんが、分かりやすい説明とともにニーズに合ったワインを選んでくれるので安心だ。

おすすめワインは?
★ピエモンテ州のカルッシン / 2015 アジノイ バルベーラ ダスティ(バルベーラ品種)
(グラス¥600)
骨格がある赤ワイン、若いものでもタンニンや酸が口の中で飛び抜けてあたってくることがなく、フレッシュでピュアな味わい。トマトソースを使った軽めの料理や加工肉の料理と相性がよい。

★シチリア州のマルコ デ バルトリ / 2016 ヴィーニャ ヴェルデ(グリッロ品種)
(グラス¥700)
たっぷりのミネラルとほどよい酸味。サラダや、コンテのようなやさしい味わいのチーズなどにマッチ。

Photo by Misa Nakagaki

“Oggi dovrei direttamente tornare a casa,
Però vorrei assaggiare un goccio di vino…”

(今日はまっすぐ家に帰らないといけない、
でも、ちょっとワインを味わっていきたいな)

金田シェフと森田マネージャーの思いと、2人の選りすぐりのワインが揃っているPerò店の壁に書かれている言葉が印象的だ。

イタリア語で「でも」「しかしながら」という意味の「Però」は、人間の弱さを表す単語ともいえ、時にはその弱さを愛おしむような空間があってもいい、そんな思いから、店の名前にしたそうだ。
熱い思いがつまったPeròで、ゆるりとした時間を過ごしてみて欲しい。

Photo by Misa Nakagaki


All photos by Misa Nakagaki

Però (ペロウ)
東京都世田谷区三軒茶屋1-40-11 B1
03-5432-9784
営業時間:
火~金17:00~24:00 土15:00~24:00 日15:00~21:00
月+不定休
Menu:
グラスワイン600円~
ボトルワイン2,200円~

奥田ここ
国内外各地の市場を「師」とあおぎ、旬の食材を中心にした和食及びイタリア料理の料理教室を主宰。外国の方の参加や築地市場内での料理教室など様々なスタイルで開催するほか、各種媒体・広告へのレシピ提供や、食材産地の取材および食に関するさまざまな話題の企画・執筆に加え、個別の要望に応じた出張料理など、国内外問わず活動中。素材の味を大切にし、無駄なく使い切る献立作りを心掛けている。
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中垣美沙 | Photographer

写真家
雑誌や書籍を中心に撮影し、自身の作品制作も行う。
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