パリ6区に店を構える『 Restaurant TOYO(レストラン トヨ) 』。
オーナーシェフ・中山豊光氏の、“西洋と東洋を融合させた唯一無二の料理”を求めて、地元のパリだけでなく、世界中から食通たちが集まるレストランだ。

この春、満を持して海外初出店となる『 Restaurant TOYO Tokyo 』が、東京ミッドタウン日比谷にオープンした。

五感で味わう、西洋と東洋が融合したカウンターフレンチ

パリの店と同じく、カウンタースタイルのミニマルな空間が広がる店内。
席に座ると、出迎えてくれるのは目の前に並べられた旬の食材たち。和食でよく使われるようなものも多く並び、今日はどんな食材をどんな料理で味わえるのか、と座った瞬間からわくわくさせてくれるのも、カウンタースタイルならでは。

パリでの経験が長い中山シェフだが、郷土への思いが強く、日本の文化・伝統的な美意識を大切にしている。はしり・旬・名残りといった食材の季節のうつろいを表現する懐石料理のように、食材の旬の美味しさを活かすことを重視し、一つ一つ丁寧に創り出す中山シェフの料理は、フレンチと和のペアリングともいえる。例えば、ディナーコースでは9種類ほどの料理を通し、様々な食材を味わってもらおうというのも中山シェフ流のこだわりだ。

食材を切ったり、火にかけたり、シェフたちが料理をしている音が耳にやさしく届き、美味しそうな香りがふんわり鼻をかすめるなど、料理が出されるまでの時間も余すところなく楽しみたいと思わせてくれる。中山シェフの「カウンターの中からお客様の声に常に耳をかたむけています」という言葉からもわかるように、客が何を求めているかを考え、何気ない会話の中から唯一無二の贅沢な時間を創り上げていこうとする姿勢が、中山シェフの哲学。目で、耳で、舌で、五感で味わう時間と空間はまるでライブのようだ。

Photo : Masahiro Okamura (CROSSOVER)

目線とほぼ同じ高さで、しなやかに食材を扱うシェフたちの美しく無駄のない動きを見ているうちに、さっと料理が供される。食材の魅力を最大限に引き出し、素材同士の美味しさが皿の中で折り重なった料理は、食材そのものが持つ美味しさを改めて気づかせてくれるものばかり。

毎日市場に足を運んで仕入れをしているだけあり、魚介や野菜、添えられたハーブや花など、口に入れた瞬間、鼻に抜ける香りから、鮮度の良さが伝わってくる。TOYO Tokyoが創り出す食材同士の組み合わせは、シンプルさと奥行きとを合わせもち、これまで出会ったことのないようなテイストにはっとさせられる。

中山豊光シェフと、東京店を任された大森雄哉シェフ

子供の頃から料理を作ることが好きだったという中山シェフは、食品専門の高校を卒業後、大阪の調理師専門学校、神戸の伝説的なフランス料理店での修行を経て渡仏。現地のフランス料理店や日本料理店に勤める中で、ファッションデザイナーの髙田賢三氏に出会う。世界各国からのゲストをもてなす髙田賢三のプライベートシェフに。その後、2009年に独立してパリにRestaurant TOYOをオープンさせた。

そして東京店を任されている大森雄哉シェフは、母親の料理教室を子供の頃から手伝っていたそうで、料理の道にすすむのはごく自然な流れだったとのこと。長崎や熊本などのフランス料理店での経験と、二度の渡仏を通じて中山シェフの素材を大切にする独自の考えを学び、TOYO Tokyoのシェフに就任。

日本とフランス。ともに経験豊かな両シェフに好きな食材を伺ったところ、中山シェフはお米、大森シェフは魚介とのこと。東京店ではパリ店同様、フレンチでありながらディナーコースでは〆に中山シェフの好きな食材でもある、お米を使ったパエリア(炊き込みごはん)がいただける。直火で炊かれたごはん本来の美味しさが際立つパエリアに、そえられた温泉玉子をからめながらいただく〆ごはんは絶品。

また、中山シェフがその実力を認める大森シェフの魚介メニューは、海の幸豊富な長崎や熊本で積んできた料理人としての経験を活かしている。毎日築地で仕入れる極上の魚介に丁寧な手当てをして美味しさを引き出し、様々なメニューに仕立てていただけるのも東京店ならではだ。

押し花と茶道

旬のご馳走のシャワーを浴びるようなTOYO Tokyoの料理は、どこかで目にしたことがあるような花の姿、葉っぱの舞い散る情景、うつろう自然の景色までも感じられるのが興味深いところ。
そこには、「フランスの自然の中で出逢った花々を押し花にしていました。葉っぱの姿が美しい花が好きです」と話す、中山シェフの感性が現れているように感じる。

自然や季節を愛でることも大切なエッセンスである、茶道の哲学から多くを学んでいるという大森シェフが、中山シェフの感性をどのように受け継ぎ表現しているのか、というのもTOYO Tokyoの楽しみどころだ。

北海道産バイガイのパネ香草(カタバミ)を添えて / Photo : Masahiro Okamura (CROSSOVER)

楽しくフレンチを

中山シェフは、「もっと食事を楽しんでもらえたらと思います。料理のことやワインのことを知っていても知らなくても、シンプルに料理を楽しみに来てもらいたいですね。お酒を飲めない方には、TOYO特製・季節のフルーツ、例えば柚子などを使ったノンアルコールのオリジナルカクテルもご用意しています」と話す。

東京ミッドタウン日比谷3階の奥まったエリアに、髙田賢三氏が描いた中山シェフの肖像画がエントランスで静かに出迎えてくれるTOYO Tokyo、フレンチレストランというと少し気後れしてしまうかもしれないが、ぜひ足を運んでみてほしい。

Photo : Masahiro Okamura (CROSSOVER)


Restaurant TOYO Tokyo

東京都千代田区有楽町1丁目1番2号 東京ミッドタウン日比谷3F
Tel.03-6273-3340
http://toyojapan.jp/

ランチ 11:30~14:30
ディナー 17:30~23:00

Menu:
ランチコース5000円~
ディナーコース15000円~


奥田ここ
国内外各地の市場を「師」とあおぎ、旬の食材を中心にした和食及びイタリア料理の料理教室を主宰。外国の方の参加や築地市場内での料理教室など様々なスタイルで開催するほか、各種媒体・広告へのレシピ提供や、食材産地の取材および食に関するさまざまな話題の企画・執筆に加え、個別の要望に応じた出張料理など、国内外問わず活動中。素材の味を大切にし、無駄なく使い切る献立作りを心掛けている。
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