コペンハーゲン市内には素敵な公園や緑道、緑溢れる川沿いがたくさんある。

長い冬がようやく終わり春になる頃、みんな待ちに待った季節がやってきた、と気持ちが盛り上がっている。とはいえ、昼間は10度前後、夜は5度前後と、日陰や日が落ちてからはまだ冬とも言える寒さだが、コペンハーゲンではこのぐらいの気温になって太陽さえ出ていれば、少し寒いと感じながらもなるべく外に出て過ごす。カフェやレストランでも、店内より屋外の席の方が圧倒的に人気だ。

公園や川沿いに座り込んでいる人も増えてきて、街中から活気が伝わってくる。まるでお祭り気分だ。店先や友達と会えば挨拶がわりに天気の話になる。元々コペンハーゲンに住んでいた友達とたまたまメールのやりとりをしていたら、”遂に春が来たんだってね?よかったね!!” と、まるでお祝い事をするような勢いだ。もう少し暖かくなれば、どこに行ってもピクニックをしている人達で溢れかえる。みんな各々のお気に入り日光浴スポットがある。

コペンハーゲンにある公園はどれも本当に素敵で、とても綺麗に手入れされている。どの公園からもデザインセンスの高さが見受けられる。もしコペンハーゲンに数日間旅行に来て、その中でどの公園に行くか迷ったら、アシステンス教会墓地(Asisstence Cemetary) がオススメだ。コペンハーゲンのヒップなエリア、ノアブロのNørrebrogade通りからアシステンス教会墓地に入れば、墓地というよりただただ素敵な公園が目の前に広がる。

アシステンス教会墓地は250年ほど前にできて以来、童話作家のアンデルセンや有名な哲学者キルケゴールを始め、アメリカ人 Jazzミュージシャンのベン・ウェブスター等、たくさんの著名人のお墓が建っている。一つ一つのお墓がとても個性的でクリエイティブ。どんな形にするかは本人や家族が自由に決めていいようだ。

配置のしかたもバラバラだったり均等だったり。全体のバランスを保つためにむやみやたらにお墓を増やさないようにしているそうだ。

お墓から人柄や職業が想像できるものもある。

草木の植え方も絶妙で、どれも素人の技にしては平均的にセンスが高い。
暖かい季節にはリスが走り回っている。

日本のお墓のようなネガティブなイメージはなく、なんならまだそこに人が生きているような個性や愛がある。まるで石の博物館にでも来たような見応えだ。実際にこの墓地は、地元の人から旅行者にまで親しまれ、本を読んだり、ランニングをしたり、ピクニックをしたりと、ノアブロエリアで最も愛される公園として存在している。

遡ること1800年初頭にはまだ今のようなお墓のスタイルではなく、草むら状態の教会の庭に刻印もされていない石が並んでいて、司教達は死者への敬意を示すために草刈りをし、草むら状態から墓地を守ることに重きを置いていたそう。さらには夜の教会墓地にはだれも近寄りたくない、悪霊や幽霊がいるかもしれない場所として認識されていたそうだ。長い年月を経て、お墓をただ故人を偲ぶ場所としてだけではなく、そこから人が楽しめる場所として変化させていったのだ。

また他の教会墓地はどうなっているのだろう?と思いカールスベアのビール工場の近くにあるVestre Cemetary、日本語名は”西の墓地”と呼ばれている墓地にも行ってみたそちらもかなりでかくて、アシステンス教会墓地とはまた違った雰囲気。規模はアシステンス教会墓地のおよそ倍の52,000㎡だ。

お供えものもユニークで、こちらの作家さんのお墓と思われるところには、以前たくさんのペンが刺されていた。

デンマークは1年のうちほぼ半分は冬で、冬の間は日照時間も短かく、太陽が顔を出す日も限られているので、それ以外の季節や太陽の出ているうちはなるべく外に出て楽しもう、という思いが意識的にある。そう行った気候の影響で、デンマーク人の環境やインテリアに置けるデザインセンスの高さは構築されたのだろう。

コペンハーゲンに来たら是非どこかの公園に行って、ゆったりと流れる時間に身を委ねてみてほしい。そこでもしどこの公園に行くかアイディアがなければ、アシステンス教会墓地に足を運んでお気に入りのお墓を探してみるのも楽しいかもしれない。


NATSUKO モデル・ライター
東京でのモデル活動後、2014年から拠点を海外に移す。上海、バンコク、シンガポール、NY、ミラノ、LA、ケープタウン、ベルリンと次々と住む場所・仕事をする場所を変えていき、ノマドスタイルとモデル業の両立を実現。2017年からコペンハーゲンをベースに「旅」と「コペンハーゲン」の魅力を伝えるライターとしても活動している。

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