かつてフランス人はランチに2時間かけることは当たり前と言われていた頃もあったが、今となっては1時間程度で済ませる人達も増えてきており、数年前からは日本文化である“お弁当”が浸透し始めている。

そんな中、日本人にはもちろんフランス人にも大人気のお弁当屋さんが、パリの3区、10区、11区にまたがり老若男女の憩いの場所となっているRepubulique(レピュブリック)広場からすぐ近い場所にある。

最近パリの1区『パレ・ロワイアル』で2店舗目をオープンした 、“BENTO&GO!” のシェフ立花 剛さん。「父親が洋食の料理人で、小さい頃から厨房に遊びに行っていました。だからそれ以外の職業はイメージできなかったです」。そう話す彼が料理人への道を進むときに、ごく自然に選んだのはフレンチだった。

フランス・リヨンにある辻調理師専門学校、シャトーエスコフィエ校を卒業後、フランスと日本で料理人としての経験を積んだ。その道を進んでいた彼が、友人の誘いがきっかけでパリの和食店「鳥兆」で働くこととなった。この頃から、よくホームパーティで料理を作っていたことがきっかけで、「将来的に身近な人たちに自分の作った料理をたくさん食べてもらいたい」という思いが強くなり、「このままフレンチの道に進んでお店を開いた時、コース料理を友達は食べに来てくれるだろうか?あまり来てもらえないのは寂しい。。」と思った時に、和食だ!と直感で感じたそう。

「鳥兆では、料理人として雇われていたこともあり、当時の自分に足りないところは全部入らせてもらいました。昼はサービスもやったし、魚がきたら捌く。焼き鳥、天ぷら、お寿司など、初めてここでしっかり和食に触れましたね。フランスの食材や魚をどうやって和食にしていくか、というのを覚えることが出来たのはとてもよかったです。なので食材など困ることはなく臨機応変に対応出来ますが、逆に日本に行ったら手が余っちゃいますね。笑

サービスをしていてフランス人に日本食を出すときに、彼らの性格や好みなど勘違いしていたことがすごくわかったし、面白くて今にも生きてます。例えば、知らない日本食には手を出さないとか、座ってすぐメニューも見ずに割り箸割ってみたり、とりあえず小皿に醤油入れてみたり。ご飯にたくさん醤油をかけて食べるのもそこで知りましたね。 あと、意外と(自分自身が)日本食について知らない、説明ができなかったりすることも、改めて確認することができました」。

「そして信頼させることが大事で、例えばシャケの塩焼きなどフランス人にとって馴染みのあるメニューを食べてもらって、ここのシャケ美味しいなってなれば他を試そうとするので、説明して、この人が作るなら美味しいかもって、そうなったらこっちのもん。このお店でもそれをしたいんですよね。なのでうちのメニューも、ありきたり3本柱です。鶏の照り焼き、シャケの塩焼き、みたいな感じで。 それが頼みやすいし、ちょっと試してみようかなってなると思うので。そこで美味しいって思ってもらえたら、日替わりでハンバーグや鮭のちゃんちゃん焼きなどを提案してみて、食べてみようかなって思ってもらえたら」。

今回いただいたのは、鶏の照り焼き弁当。 皮はパリッとしていてお肉はふんわり、照り焼きソースは濃すぎず、フレンチに疲れた胃に沁みる優しい味付け。野菜も季節のもの、彩りを考えてバランスよく配置され、ハートの卵焼きが目でも楽しめるお弁当だ。

イートインスペースではお茶が用意されており、夏は麦茶、冬はほうじ茶が用意されている。この美味しいお茶はなに?とよく聞かれるそうで、店内に説明書きも貼ってあった。ご飯は別で温められるようにと他の容器に入っており、そんな優しい心遣いにほっこりしてしまう。 ゆかりご飯はフランス人にも好評のようで、店内でゆかりの販売もしている。他にも単品で枝豆や、パティシエ 佐藤亮太郎氏によるデザートなども用意している。

今後は、一軒目の立ち飲み居酒屋のようなお店もしていきたいということで、取材の際になんと唐揚げを出してくれた。カラッとジューシー、酢玉ねぎが添えてあることで重すぎなくいただいた。 きんぴらごぼうやポテトサラダなどを小鉢として出して、アペリティフとして気軽に使ってもらえたら、と話す。

「夢は家庭料理本を出すこと。家でも出来る、難しいことはそんなにない少しのテクニックだったり、例えばアンディーブ(日本では英名のチコリーとして流通している、キク科の野菜)も、グラタンくらいでしか使われないけど、辛子味噌で合えるというような提案をしたいですね。実際お店では大根おろしもびっくりされます。大根をおろしたものって多分フランスにはないですからね。フランス人に、寿司やラーメンだけじゃない、僕たちが日本で実際食べているような、パスタやハンバーグ、カレーなどをすべてを日本食として、ごく一般的な家庭料理をここで提案していきたいなと思っています」。

BENTO&GO!の2号店は、お持ち帰り専用店でスピードに特化したお店を目標としているそう。フランスらしい美しい建造物と季節折々の花や現代アートがあるパレロワイヤルも近くにあるので、これから暖かくなったらぜひお持ち帰りをして外で楽しみたい。

立ち飲み屋も家庭料理本も、今後の展開が気になる剛さんに注目!


【Profile】
立花 剛 1983年生まれ。山梨県出身。
リヨンの辻調理師専門学校シャトーエスコフィエ校を卒業。
Valenceの「Maison PIC」という3つ星レストランで研修をし帰国。
東京のLe Grand Comptoireで働いた後、2008年フランスに戻る。パリでは日本食レストラン鳥兆、れんげにて合計6年間勤務した後、 BENTO&GO! オープンと同時にシェフに就任。

【Information】
République店
・Adresse 18 Rue Notre dame de Nazareth 75003 Paris
・Métro Temple (3番線) / République (3. 5. 8. 9. 11番線)
・営業時間 月-金 12:00 – 14:30 / 18:00 – 21:00、土 12:00 – 14:30、日曜定休
・Tel 06.50.03.06.63

Rivoli店(持ち帰りのみ)
・Adresse 3 Rue Sauval, 75001 Paris
・Métro Louvre-Rivoli(1番線)
・営業時間 月-土 12:00 – 14:30
・Tel 07.78.56.84.74

Mail:bentoandgo@gmail.com
www.bentoandgo.com
Facebook
Instagram
Twitter