ケープタウンに1ヶ月間の滞在中、南アフリカ最大級の自然動物保護区、”クルーガナショナルパーク”へ行って来た。

ケープタウンからヨハネスブルグ経由でファラボルワ空港へ。地理的には南アフリカのちょうど北東の角。北はジンバブエ、東はモザンビークの国境に隣接している。ヨハネスブルグからは車で5時間ほどだ。ファラボルワ空港へは今回宿泊させて頂いたホテル、Leadwoodの方が迎えに来てくれた。

国立公園と言っても、その敷地の広さはおよそ20,000㎢、東京都9個分くらいに相当するので、ほとんど自然そのままの状態と言える。その広大な敷地の中におよそ147種の哺乳動物、約500種の鳥類、116種の爬虫類、34種の両生類、49種の魚類、457種の樹木、全部で1,500種ほどいるそうだ。

国立公園の中にはたくさんのホテルが点在していて、どのホテルも動物が警戒しないよう、自然に調和したデザインで作られている。今回私達は国立公園に隣接したサビサンド私設動物保護区にあるプライベートロッジに宿泊したが、実際に同着するまでホテルがどこにあるかが全くわからなかったほどだ。このホテルでは、みんなが静かにくつろげるよう、ゲストは同時に3組まで。ホテルのスタッフも限られた人達だけで、滞在中は家族のように接してくれた。本当は1週間くらいかけてゆっくり腰をすえて動物達と出会う日々を楽しむべきだと言われたが、今回は3泊4日の短い滞在だった。

到着してすぐにランチを用意してくれた。アフリカ料理というよりは創作料理だが、すごくヘルシーで食べ馴染みがある味付けでどれも美味しい。ちなみにリクエストも受け付けてくれて、ワインはワインセラーから好きなだけ選んで飲んでいいとのこと。

部屋の造りは自然と融合し、手作り感とモダンな家具のバランスがちょうど良い。

南アフリカはヨーロッパから飛行機で12時間ほどかかるとはいえ、時差がないので多くのヨーロピアンのデスティネーションになっている。そのためかラグジュアリーなロッジがたくさんあり、このLeadwoodもそのうちのひとつ。

ここでゆっくりくつろいで本を読んだり、自然を眺めたりしていたいが、基本的には毎日、動物達が活発に活動する早朝の5時頃と夕方5時頃に、野生動物を観察しに行くことになっている。もちろんスキップすることもできるが、ここには野生動物を観察に来ているので、毎日早寝早起きを徹底して早朝からの探検に備えた。

ちなみにサファリとは、もともと欧米の人達がアフリカ東部で大型野生動物をハンティングして楽しむツアーのことで、今では世界的に動物愛護の精神が高まり、多くの人にとってサファリと言えば、“銃の代わりにカメラに持ち替え野生動物達を観察するツアー”を意味するようになった。そして今ではそれが “ゲームドライブ” と呼ばれている。ゲームドライブとは、基本的にセルフドライブで敷地内を探索することを意味する。

私達が今回宿泊したような私設動物保護区内にあるプライベートロッジは、いくつかのロッジでその敷地を占領して、国立公園と差別化して私設化されているエリアだ。もちろんそこは何かで仕切られているわけではなく、動物達もその間を自由に行き来している。そこで行われるゲームドライブのことは“プライベートゲームリザーブ”と呼ばれている。

クルーガー国立公園に行く際に、私設動物保護区にてプライベートゲームリザーブに参加するか、国立公園内に宿泊して自分たちで車を運転するゲームドライブのどちらがいいかはいつも議論に上がっているそうだ。

基本的にプライベートゲームリザーブでは、オープンエアの4WD車を運転しながら解説をしてくれる”レンジャー”と一緒に遠くにいる動物を見つけたり、また動物の足跡を辿りどの方向へ行ったかを推測する”トラッカー”の2人が同行する6人乗りが基本パターンだ。

プライベートゲームリザーブのいいところは、レンジャーが同行することによって、オフロードや茂みの中、川の中にまで入って行くことが可能で、より至近距離まで動物達に近づくことが許可されているところだ。さらにレンジャーは車からおりて草むらに動物達を探しに歩くこともでき、夜の走行も許可されている。そのためレンジャーは念のためにライフルを所持している。プライベートゲームリザーブで働くレンジャー達はこの業界の中ではエリートという位置になる。知識も豊富なため、ゲームドライブ中のトークも一流だ。

また敷地内では、一つの場所に3台以上の車が停車してはいけない、20分以上同じ場所に停車してはいけないなど、みんなが混雑を避けるためのルールも設けられている。そのためどこにいてもとても静かで落ち着いて、広大な自然の中に自分達と動物達だけがいる感覚を味わえる。

一方で国立公園内にはカジュアルなロッジがたくさんあり、値段もリーズナブル。自分達で車を運転するゲームドライブは、夜明けから夕方までの走行のみ許可されており、基本的に舗装された道の上を走らなければいけないなどのルールがあるようで、どこにいても車で混雑しており、動物達が出現しているスポットでは特に車の渋滞が起こったりする難点があるようだ。しかし敷地は広大に広く、相当な数の動物達がいるので、自分達で運転したとしても動物達に出会える可能性は引けをとらないらしいし、そこにいる動物達に違いはない。

他にも、より自然を身近なものとして体感するキャンプ施設もある。そこではライフルを携えたレンジャーを先導に8人1グループで1列となり、トラッカーを列の最後に従えて、歩いて野生動物を観察しに行くウォーキングサファリや、またそれよりもさらに自然に寄り添う感覚を味わえる、象の背中に乗って公園内を周遊するエレファント・バッグ・サファリなどもあるようだ。

きっとどれも楽しいと思うが、今回私達は限られた休みを静かに過ごし快適な場所で美味しい食事を食べて、ゲームドライブ中は写真を撮ることに集中するため、サビサンド私設動物保護区にあるロッジに宿泊することにした。到着したその日の夕方から早速、同じ日に到着したドイツ人夫婦と4WDに乗り合わせ動物たちを観察しに出かけた。

今回同行してくれたレンジャーのお兄さんは、育ちの良さそうな南アフリカとイタリア人のハーフ。陽気な性格で常に場を盛り上げてくれた。動物に遭遇するたびに、動物の歴史や個性について解説をするその様子から、動物への愛がとても伝わってきた。この”レンジャー”のキャラクターによって、プライベートゲームリザーブの内容はだいぶ変わってきそうだ。

インパラの群には毎日遭遇した。

レンジャーは他のレンジャーたちとトランシーバーで動物目撃情報をシェアしている。特にビッグ5と言われているサイ、ゾウ、ライオン、ヒョウ、バッファローがいる場所には他の人達も集まってくる。

ビッグ5と呼ばれる動物達は遭遇するのが難しい訳ではなく、もともと狩猟するのが大変危険な動物として有名だったそうだ。私達は3日間プライベートゲームリザーブに参加した中で、簡単に遭遇できると噂のバッファローには会えず、それ以外のビッグ5と言われている動物達には何度か遭遇できた。

動物達は私達のことを全く気にせず悠然と過ごしている。

シマウマは臆病なので人間の存在に気づくとすぐに逃げて行った。

他にもキリンやブルに遭遇できた。こんなに間近で野生動物を見られるなんて、少し緊張感があるがどの動物達も落ち着いている。

しかしどういうわけか、全く動物達に会えない日もあった。レンジャーとトラッカーの二人が草むらに動物達を探しに行く姿も。そんな日はロッジの方達によって、シャンパンを草原の中に仕込んで置くというサプライズもあって、周遊中に車から降りてみんなで乾杯。

ちょうど宿泊していたコテージの裏庭でもブルを見つけた。なんとも美しい自然が生み出した模様。

今まで動物園で見てきた動物と違って、野生動物は毛並みがとても美しく、表情もワイルドで迫力がある。もう少し長く滞在すれば、より多くの動物達に遭遇できていたのに!と思うと3泊4日は確かに短かったかもしれない。次回は1週間ほど腰を据えて滞在してみたい。

プライベートロッジの中にもかなりのバリエーションがあり、どのロッジも素敵すぎて選びきれないほどだ。ぜひ自分に合ったスタイルのクルーガーナショナルパークでの過ごし方を探してみてほしい。


Column:南アフリカはケープタウンで暮らすように旅する1ヶ月間 -前編- はこちら


NATSUKO モデル・ライター
東京でのモデル活動後、2014年から拠点を海外に移す。上海、バンコク、シンガポール、NY、ミラノ、LA、ケープタウン、ベルリンと次々と住む場所・仕事をする場所を変えていき、ノマドスタイルとモデル業の両立を実現。2017年からコペンハーゲンをベースに「旅」と「コペンハーゲン」の魅力を伝えるライターとしても活動している。

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