最近何かと耳にする「ミレニアル世代」。
一般的には1980年以降に生まれた人たちのことを指し、”所有”と”シェア”という手段を、臨機応変に選ぶライフスタイルが特徴だと言われている。そんな現実的で合理的なミレニアルボーイ&ガールたちに向けた新しいホテルが、渋谷・神南エリアに3月15日にオープン。その名も「ザ・ミレニアルズ」。昨年京都でローンチした1号店に続く、ブランド2番目のホテルだ。

このホテルの特徴は、最新のテクノロジーを駆使し、快適さと便利さを追求した2018年版カプセルホテルとも言える『スマートポッド』。フロアは男女ミックスのほか、女性専用フロアもあるので、こういったホテルが初めての人も安心感がある。

こちらが『スマートポッド』。これがかなりすごい。天井高2.3メートル、床面積3平方メートルというスペースの中に、最大直角から好みの角度までリクライニングでき、ソファのようにも使えるベッドがある。一般的なカプセルホテルのように2段式ではないため頭上の空間もゆったり。リクライニング時にはベッドが前方(枕側)にスライドするので、足元側には立てるほどの余裕も。照明のトーンも調整可能だし、頭の上にはペットボトルや携帯、ガイドブックなどをとりあえず載せておけるちょっとした棚。ハンガーやタオル掛けも備え付けられていて、ロールスクリーンを下ろせば、プライベート感も保たれる。カプセルというよりは個室っぽいつくりで、ホテルのゲストルームが機能的にコンパクト化したよう。

ベッド下にはスライド式の収納がさりげなく設置されている。大型のスーツケースも開いた状態ですっぽり収まるから、荷物の多い長期旅行者にはありがたい。

ベッドの角度や照明などは全てチェックイン時に渡されるiPodで調整可能。カプセルホテル経験者なら誰もが悩むアラーム問題もこちらで解決。セットした時間にベッドが起き上がり、照明が明るくなることで物理的に起床を促すというハイテクぶりだ。各フロアに5ポッド、80インチスクリーンで動画視聴ができるプロジェクター設置のポッドも。

デザイン面では、国内外で活躍する20人のアーティストとコラボレート。
5階フロアには、彼らがスマートポッドをキャンバスに見立てて作り上げたアート作品のスマートポッドで、どれも違った個性が。こちらは東京を拠点に活動するイギリス人イラストレーター、Andrew Joyce(アンドリュー・ジョイス)が手がけたポッド。ほかにもアパレルやテレビ業界など、ジャンルを超えて活動しているJun Oson(ジュン・オソン)や、Marvel所属のコミックアーティストNico Leon(ニコ・レオン)など、インターナショナルな顔ぶれ。まさに泊まれるアートギャラリー! 
予約時に作品を指定することはできないけれど、早めにチェックインすれば、空いているポッドを選ぶことができるので、お目当てがある人はぜひ。

泊まってみると実感するのだが、どちらかというとビジネスホテルの無駄をそぎ落としたイメージ。考えてみれば納得なのだが、ビジネスホテルに泊まるときって、部屋に長居するというよりはアクティブに外出することが多いから、最低限の設備だけあればいい(少なくとも私はそう)。ここ『ミレニアルズ』は、バス、トイレを共用にすることでスペースをコンパクト化している。こちらがシャワールーム。レインシャワー付きが素敵。

トイレはシルバーで統一。ランドリーも各フロアにあるので、長期滞在でも安心。

アメニティはタオルにスリッパ、歯ブラシなど。ロゴ入りのポーチには綿棒やティッシュも。オリジナルの作務衣風のパジャマは300円でレンタルできる。

このホテルのもうひとつの特徴は、総面積の20%を費やした共用部分の充実度。
4階のレセプションエリアの横には広々としたラウンジがある。奥にはキッチンも備えていて、滞在中は自由に使ってOK。

トースターやケトルなどは『バルミューダ』で統一。もちろん食器も自由に使える。

さらに3階には宿泊者以外もドロップイン利用できるコワーキングスペース『andwork』がある。壁のネオンサインがかわいいこのスペース、ゲストは24時間365日利用可能。
ドロップインの場合6:30~翌1:00まで使えて、料金は1時間800円、1日3000円(21:00最終受付)。このプライスで3Fのコワーキングはもちろん、4Fの共用ラウンジ・キッチンまで使える上に、有料オプションで客室やシャワーの利用も可能というのが画期的。渋谷での過ごし方が変わりそう! 

宿泊料はブレックファスト込み。宿泊した翌朝はセルフでパンを焼いてコーヒーを。
「暮らす」と「泊まる」があいまいになったこの感じ、すごく新鮮で楽しい。

「暮すように泊まる」旅のスタイルが新しいトレンドとして着実に定着している2018年。私個人的にも、今後こういったアコモデーションがどんどん誕生しそうで楽しみ。東京に住んでいても、あえて泊まりに行きたいし、また遊びに行きたい。そんな気持ちになるホテルだ。


The Millennials Shibuya
東京都渋谷区神南1-20-13
全120室(うちアートポッド20室)
一泊二日(朝食付き)6,000円前後


矢吹紘子/Hiroko Yabuki
ライター兼通訳案内士。大学で日本史を学んだ後、ライターに。2008年に渡英、4年間の滞在を経て帰国後は通訳としても活動。『GINZA』『Hanako』などで執筆するかたわら、海外から日本を訪れる旅行者を日々案内している。www.tokyoai.jp