コペンハーゲンに来てから見つけた3つのキーワード、サスティナブルとエシカルと愛。

デンマークでは多くのことがシンプルかつ深く、これらのキーワードで成り立っている。環境や社会に配慮した持続可能なシステム、もちろんそこには愛が必要で。

わかりやすいところでは食文化。コペンハーゲンではいわゆるニューノルディックキュイジーヌというのが主流だが、コペンにある人気レストランの多くは、世界のベストレストラン50で何度も1位を獲得したNomaを卒業した人達によるもの。

ニューノルディックキュイジーヌとはまさに、Nomaが行なっている姿勢そのもの。具体的には、地元の高品質なオーガニック食材、動物や魚は無用に苦しめず自然に育ったもの、海や農地に対して正しい道徳心を持って営まれている団体のものを使用し、健康で幸せに生きるための現代の知恵と結びつけていく。それらのフィロソフィーを明確に持ち伝えていくこと。そしてそこに関わる全ての人達がなにかしらのメリットを生み出すことを基本としている。

日本の調理法や盛り付けからも影響を受けていて、出汁の取り方や発酵の技がユニークで面白い。デンマークは野生のキノコがたくさん生える季節があって、子供の頃からどのキノコを食べることが出来るのか教わる。レストランでも郊外の自然の多いところへキノコ狩りや植物採集に出かけ、料理に使える植物を探しに行く。これらの風習が国全体、北欧全体に幅広く広がってきていることがとても素晴らしい。普段、健康やカロリーを気にしているグルメな人にとってはとてもありがたい内容!

ニューノルディックキュイジーヌにおいて重要なサスティナビリティ。コペンハーゲンの人気レストランrelaeのwebに、サスティナブルな活動についてのリポートを載せているが、とても面白かったので紹介させて頂く(英語が理解できる方は是非そちらをご覧ください。もうそのまま教科書にしてもいいんじゃないかって思います)。

relaeの創設者であり、シェフのCHRISTIAN F. PUGLISI氏は、シチリアでイタリア人とノルウェイ人の親の元に生まれ、子供の頃家族でコペンハーゲンに移住し、若いうちからNomaや、今は無きスペインの名店エルブリ等でシェフの修行をし、8年前に27歳という若さでrelaeをオープンさせた。現在は自分たちが利用している食料を余すことなく循環させるために、コペンハーゲンに4店舗のお店を構えている。

relaeの向かいにカジュアルレストランの『Manfreds』、その2km先にコペンハーゲンで一番美味しいパンを作るカフェレストランの『Mirabelle』、その隣には最も人気のピザ屋さん『Beast』を運営している。

relaeでは肉や野菜の貴重な部分を提供し、Manfredsなどのカジュアルなレストランでその残りを提供し、パンも自分達で作り、その残りの小麦粉でピザやパスタを作っている。

Manfredsの手作りパスタは絶品だ。イタリア以外でこんなにも美味しいパスタを食せると思っていなかったので感動。そしてMirabelleで作るパン、こちらも本当に絶品。もちろんレストランで常温のままオリーブオイルをつけて食べるのも美味しいのだが、質の良いオーガニックバターがとても安い値段で買えるので、家で焼いて食べるのもオススメ。

relaeで使われている食材の90%以上はオーガニック。それも内容が曖昧なオーガニックではなく、細部に至って明瞭としている。地元のローカルファームからのオーガニックもしくはバイオダイナミック農法のもの、最近は自分達でオーガニックファームを運営しているそうだ。もちろんビールやワイン、ジュース等も全てオーガニック。そう、いわゆるナチュールワイン。

コペンハーゲンのいいところは、あらゆるレストランでナチュールワインが飲めるところ。ナチュールワイン好きにとってはとても嬉しい環境だ。コペンのナチュールワインショップでは、日本で販売されている同じものでも800〜1,000円くらい安く購入できたりする。そして日本でなかなか手に入りにくいものが見つかることもあるので、意外とコペンハーゲンでの家飲みは充実する。

物価も高いので毎日美味しいレストランに行くわけにも行かず、airbnbに宿泊して自炊とナチュールワインを楽しむのもいいですね!ちなみにスーパーマーケットは日本より安かったり、キャビアやイクラも日本で買うより安い。

relaeで使われている肉類についても、普通の食される動物が生かされる期間の2、3倍長い期間、つまりその動物達にとって充分な寿命の期間を自然に離し飼い、自然の摂理に従った生き方をさせるそう。もちろん彼らの食すものも人間と同じオーガニック。またそれらの動物の家族構成についても気を使われているそうだ。ストレスなく愛されてすくすく育ったハッピーな動物達、こんな言い方していいかわからないけど美味しそう!

もし自分が食されるタイプの動物なら、こんな風に愛されて幸せに生きて、さらに特別な場所で調理されて食べられたい。またよく食関連のドキュメンタリーで見るように、動物や働く人達が悲しい思いをした産物に比べて、確実に良いことしかない。

魚介類に関しても、MSCという水産資源や海洋環境、また加工や流通の過程に置いても厳しい審査が行われている漁業認証があるそうで、そちらを得ているもののみを取り扱っているそうだ。つまりこちらもハッピーな天然魚。一部の塩やシトラス、アンチョビ等は近隣諸国からより美味しいものを仕入れているそうで、やはりそれらを作っている団体も同じスタンスでサスティナブルな活動をする団体だそうだ。

自分の家族に対する愛の姿勢を、動物だけでなく食材や環境、または社会も含め全てに対して同じ姿勢って、素晴らしい。

さらに面白いのはゴミに対する姿勢。コーヒーの粉はマッシュルームを作るのに最適だそうで、これらのレストランから出たオーガニックコーヒーの粉は、オイスターマッシュルームを育てるのに利用され、またそれをお店で提供されているとのこと。こちらはrelaeの数件隣にある『Beyond Coffee』という団体が始めた活動だそうだ。そこで家庭用のキットも販売している。

そしてオーガニック野菜は余すとこなく使うスタンスなのだそうだが、それでも出てしまったゴミは畑の肥料として再利用し、残されたパンクズは鶏の餌に、残ったタップウォーターは掃除の際に利用している。また水の使用量の制限、水力発電による再生可能エネルギーの使用、トイレの流れる水やLEDライト等の機能、掃除に利用する洗剤等、お店に関わること細部にわたってベストを尽くしている。

また、お店間の食品等の運び出しには車は使わずクリスチャニアバイクを利用し、その際に使われるダンボールや木箱なども業者間で再利用し合うそうだ。もちろんここで働く人たちにも、同じ愛と食べ物やシステムが与えられていて、年に何度か旅行へ行ったり、また健康に気を遣うためのフットボールチーム、語学学習のケア等もあるそう。ちなみにインターンの方達も含め週休3日。この辺りが北欧らしいと感じる。効率よく働きしっかり休む。

そんなに色々とこだわっているなら値段が高いんじゃない?と思うが、そこに関わる全ての人達に正当な対価が支払われ、または請求されることにこだわっているそうだ。
そしたら味がそんなになんじゃない?と思うが、既に世界のベストレストラン50と世界のベストサステイナブルレストランにもランクインし、ミシュラン一つ星も獲得、さらには最も安いミシュラン一つ星とも言われている。非の打ち所がない。

そんな中、シェフのCHRISTIAN F. PUGLISI氏は、それでもまだこれで充分だと感じたことはなく、学ぶこともやるべきこともまだまだたくさんあると。

美味しいものを提供し食すという行為が、環境や社会、またはそこに関わる全ての人達にとって直接的に良い行為となる。とはいえ、私たちにとってそのようなレストランに頻繁に足を運ぶことも、運営することも簡単ではない。しかしコペンハーゲンではこういったシステムがすでにベースになって来ている。

今自分にできることと言えば、いつも買う適当なチョコレートを5回分我慢して、正しいモラルの元で作られたチョコレートを高いけど1回買うことくらいだ。


NATSUKO モデル・ライター
東京でのモデル活動後、2014年から拠点を海外に移す。上海、バンコク、シンガポール、NY、ミラノ、LA、ケープタウン、ベルリンと次々と住む場所・仕事をする場所を変えていき、ノマドスタイルとモデル業の両立を実現。2017年からコペンハーゲンをベースに「旅」と「コペンハーゲン」の魅力を伝えるライターとしても活動している。

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