Sunday Assembly:人生を祝福するための、非宗教的集会ネットワーク

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 ある土曜日の朝10時、私は白いギャラリーのようなスペースで、44人もの見知らぬ他人と一緒に瞑想している。誰もが目を閉じ、部屋の前方にいる背の高い長髪の男性、サンダーソン・ジョーンズ氏の穏やかな声に耳を澄ませる。突如、静寂を破ったのは大音量で鳴ったダブステップの音楽だ。ジョーンズ氏は活力に満ち溢れている。その後ろにあるスクリーンには、「ミニレイヴ」の文字が現れては消える。ジョーンズ氏は我々に力を抜いて、踊るよう促す。我々は不安げに笑いつつ、流れに逆らわずに踊り始める。

 一見おかしな騒ぎに見えるかもしれないが、これはあるメソッドに基づくものだ。我々を殻にこもった状態から逸脱させる、というジョーンズ氏によるエクササイズの一環で、参加者が「魂のタフマダー」と称する週末自己啓発セミナー「Retreat to the Future」の冒頭だ。部屋にいるのは20代前半から60代後半までと幅広い年齢層の人々で、職業もまちまちだ。名探偵ポワロのような口ひげの、楽しいことが大好きな海洋生物学者もいれば、エセックスのバスドライバー、そしてメニエール病に苦しむ松葉杖をついた若い女性の姿もある。

 我々を結び付けているのは、誰もが人生の岐路に立っており、人生を見つめなおしたいと考えている、ということだ。それが健康であれ、キャリアであれ、はたまた人間関係や感情的な問題であっても、ジョーンズ氏はこれから48時間かけて一連のエクササイズを通じ、我々が内なる恐れへの対処法を知り、より明るく祝福に満ちた彼のレンズを通して人生を見つめることができるよう、導きたいと考えているのだ。ジョーンズ氏は「我々は、皆さんの人生により多くの喜びと驚きをもたらし、これまでとは違う形で痛みや苦しみに対処するための技術を伝えるため、努めていきたいと考えています」と話す。このワークショップは、ジョーンズ氏が国際リーダーシップコンサルタントのマーク・マックガーゴウ博士、ラーニングサイエンス専門家のガイ・クラクストン教授とともに開発したものだ。「この週末が終わるころには、人生に大きな違いをもたらすプランやプロジェクトの、より明確なアイデアが浮かんでいることを願っています」

 ジョーンズ氏の本業は、スタンドアップ・コメディアン(日本でいう漫談家)だ。しかし、今の彼は「サンデーアッセンブリー(Sunday Assembly)」のトップとしてフルタイムで活動している。サンデーアッセンブリーは、彼がコメディアン仲間のピッパ・エヴァンズ氏とともに2013年に立ち上げた国際的な組織で、「人生を祝福するための、非宗教的集会ネットワーク」を自称している。

 この会が生まれたきっかけは2011年のこと。とあるコメディの舞台に向かう道中に出会ったジョーンズ氏とエヴァンス氏が共に、「教会のように人生を祝福する組織を作りたい、ただし神という要素は抜きで」という考えを持っていることがわかったのだ。このアイデアが実現するのに、そう時間はかからなかった。サンデーアッセンブリーの本拠地はロンドンだが、今やニュージーランドのクライストチャーチやアメリカのロサンゼルスなど、世界各地に56ものサンデーアッセンブリー支部が存在する。

 世界250の地域で、サンデーアッセンブリーの公認を待つ団体が待機リストに名を連ねている。これは、ジョーンズ氏とエヴァン氏が自ら責任をもって組織を拡大していこうとしているためだ。個々のアッセンブリーが、ある1人の意図を代弁する組織にならぬよう、サンデーアッセンブリーには公認規定など、安全対策が講じられているのだ。各サンデーアッセンブリーの運営は、社会的地位を異にする10名以上の委員によって行われること、さらに1人の人間が半数以上の集会を取り仕切ってはならない、といった決まりがある。このルールはエヴァンス氏やジョーンズ氏にも適用される。

 サンデーアッセンブリーは「Live Better, Help Often, Wonder More(より良く生き、より人を助け、より好奇心を抱く)」という人生を肯定するモットーを掲げている。しかし、毎月行われる集会は伝統的な教会のものと骨格構造的には同じだ。ただ、本質的に宗教的な要素は排除されている。毎回約1時間にわたるアッセンブリーの内容は、前述のモットーに基づくもので、思想家や科学者、詩人、そしてコミュニティのメンバーによる講演などが行われる。会の終盤にはお茶とビスケットもふるまわれる。60分の間にはカラオケのように、ポップスを皆で歌うコーナーもある。ジョーンズ氏とエヴァンス氏はこれを賛美歌に代わる「パワーチーズ」と呼ぶ。

 私はジョーンズ氏に興味をひかれた。この記事を書くにあたってリサーチを行う以前は、サンデーアッセンブリーに参加したことはなく、本格的な集会で胡散臭いほどに楽しそうに集う人々の画像をオンラインで見たことしかなかった。私はサンダーソン・ジョーンズ氏への個人崇拝、そして自分自身を深く掘り下げるため、「Retreat to the future」に参加することにした。彼がカリスマ性のある人格で人々を魅了する、ただの一発屋なのか、それとも彼の仕事が大義をなすものなのか、見極めたいと思う。

 一風変わったダブステップ・エクササイズを終えると、ジョーンズ氏はまるで大掛かりないたずらをうまくやり遂げた子供のように、嬉しそうな笑顔を浮かべている。彼からは、ポジティブさがあふれている。もしも彼の非宗教的な活動を構成するものが、人生を祝福することであるなら、ジョーンズ氏は非常にその技術に長けている。「もし誰かが芸術やワインを鑑賞するコースを受講しても、それをおかしいとは思わないだろう。しかし、我々が常にしていること、つまり“生きる”ことを鑑賞するコースというのは存在しない」。聴衆は皆うなずく。なぜなら、ジョーンズ氏の言葉を通すと、その考え方がしごくまっとうに聞こえるからだ。

 ジョーンズ氏は、人とつながり、人々の気持ちを楽にする才能を持ち合わせている。しかし、だからといってなぜ彼が他人を導くことができるのか、疑問に思う。「サンデーアッセンブリーでは、人生の生き方を伝えたりすることはありません。ただ、人々が自ら答えを見つけられるような空間を作る手助けをしていきたいだけです」とジョーンズ氏は言う。

 瞑想クラスの初日は、筆記および体を動かすエクササイズを行う。まずは外に出て自然界の奇跡をマインドフルな感覚として取り込む。それから屋内で、無生物に対して感謝しながら、部屋中を歩き回るエクササイズを行う。このエクササイズが目指すのは、心の状態を変化させる方法を示すこと、また、人生に祝福すべきものが多いかを理解する、ということだ。「私は、感謝と怒りを同時に感じることは非常に難しいと気付いたのです」とジョーンズ氏は言う。「時々、自分の気分が下がっているときには、感謝の念を感じられるものを探すのです。それは、とても効果があります」

 瞑想クラスは全般的にエネルギッシュなトーンで実施される。私は外向的な人間ではなく、初めのうちは激しく喜々として歌い踊ることが難しい。最も居心地が良いのはグループワークの時間で、そこではジョーンズ氏から、話したこともない人と常に共同作業するよう奨励される。スピリチュアルなお見合いのようでもあるが、ジョーンズ氏の真の狙いはまた別にある。彼は、我々が瞑想クラスを終えたとき、支援のネットワークが出来上がっているように計らってくれているのだ。

 ジョーンズ氏を語るうえでは、伝説的なエピソードも多い。彼はハグの世界最長記録を2度も更新しており、身長は6フィート4インチ(約193センチメートル)もある。ふさふさの立派な口ひげを生やし、チェックのシャツを身に着け、すねまである黒い編み上げのブーツを履いているため、余計に背が高く見える。彼はヒップスターのメサイアと、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のバトルシーンに出てくる戦士のエキストラを足して2で割ったような風貌をしている。

 しかし、彼が人々に対し、自分同様、人生に情熱を燃やせるよう支援する原動力はどこから来るのだろうか。ジョーンズ氏は、参加グループに自分の身の上話を披露する。「私の母は、私が10歳の誕生日を迎えた翌日に他界しました。そのせいで、私は非常に若いころから生と死について考えるようになりました。さらに、人生を祝福し、人として生きられる幸運を祝福する、という哲学を持つようになったのです」と彼は言う。「人生を祝福する、ということに専念することで、日々の過ごし方を変え、できる限り充実した人生を生きるモチベーションを手に入れ、夢を夢で終わらせない、という可能性が生まれるのです」

 ジョーンズ氏がこれまで成しえてきたことのほとんどが、母親の死を原動力にしてきたものだ。2009年に開かれた世界最大級の演芸祭「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」で、彼は初めて大きなスタンドアップショーを行ったが、その時のネタも終始「死」をテーマにしたものだった。

「私の最初のショーは、“新たな悲痛なる、しかし究極の人生肯定型の、死にまつわるショー”と呼ばれました。私は人々に、正面から人生を受け止め、それによって自分が変化するような感覚を与えようとしていたのを覚えています。でも、当時の私はそのための言語を知らず、まだスタンドアップの修行中でしたから、あの時はたまたま、うまくいっただけなのです。私が亡くなった母について語っていただけですから、公開セラピーのように映ったこともあったでしょう。素晴らしい漫談とは言えませんでしたね」

 ジョーンズ氏は言葉を止め、声を立てて笑う。彼はよく笑う方だ。その笑い声はとても大きく、力強く、周りに伝染しやすく、そして自らを「ネタ」にすることもためらわない。

「当時の私は、まったくクレイジーでした。 40ものロボットダンス大会を開き、コメディドラマを聞くことのできる電話サービスもやりました。ただ、皆さんコメディドラマを聞くためではなく、自分を慰めるためにプレミアム料金の番号にかけるようになってしまいましたね」。サンダーソン氏は、そう言ってまた爆笑する。

 ジョーンズ氏が歩んできたキャリアは、一筋縄ではない。ブリストル大学卒業後、全寮制の学校で教育を受けたジョーンズ氏は、雑誌「エコノミスト(The Economist)」編集部に勤務していたが、スタンドアップ・コメディアンになるため25歳で退社。「レディマガジン(The Lady Magazine)」で映画の批評担当チーフの副業もこなしていた。

 2011年のエジンバラフリンジでは、ジョーンズ氏は自らスタンドアップショーのチケットを手販売し始めた。彼はこれを「手販売のコメディ」と呼んだ。彼は次にオーストラリアの首都に目を向けた。挑戦から逃げるわけではなく、「シドニーのオペラハウスで上演し、そのチケットを手販売したら、ばかげているだろうな、と思いつき、自然な流れで先方に連絡をとったのです」。2012年、彼は個人で経済的に大きなリスクを背負い、会場に予約を入れた。幸運なことに、会場は満員となった。彼は当時を振り返り、観客の一人ひとりを知ることができたので、サンデーアッセンブリーの基盤となるコミュニティを作る上で、非常に価値のある経験をしたと認識している。

 コミュニティは、ジョーンズ氏の炎を燃やす中心的存在だ。人間の組織として最も古くから知られる形の1つである(宗教的な)集会を別用途で利用することで、サンデーアッセンブリーは人々にコミュニティを形成する力を与えようとしている。そして、ジョーンズ氏はその組織を「ライフフルネス」という考え方で結び付けている。

「集会でいうライフフルネスとは、瞑想にとってのマインドフルネスにあたるものです」。これはロンドンで開催された瞑想イベントの前日、ブライトンでのTED(世界規模の講演会)での談話にてジョーンズ氏が初めて公に語ったものだ。

「自分たちがやっていることを、マインドフルネスのレンズを通してみるのは有用です。マインドフルネスを主流派へ導いたとされるジョン・カバット・ジン氏が、仏教の瞑想を非宗教的で非排他的なものに変化させたように、ライフフルネスもまた集会のコミュニティを非宗教的で根本的に非排他的なものに変えていくのです。これは、個人の成長と他者への気づかいに重点を置き、コミュニティ内で人生を共有する方法なのです」

 これは一見、不可能なことに思える。ジョーンズ氏側が、ありえないほど考えが甘いと安易にとらえられかねない。しかし、コミュニティがひどく必要とされる時代の社会にこそ、彼の使命がある。

 国立社会研究センターによると、この10年間、イギリスの総人口の半数以上(53%)が特定の宗教を信仰していないといい、孤独感を感じる割合は突き抜けて高い状況にある。歴史的に、寺院やモスク、そして教会は、危機の時代に人々が互いに支え合うコミュニティの要だった。

「今、これまでにないデジタルなコミュニケーション方法が生まれたことで、社会との分断やコミュニティの減少がいくつもの問題を生んでいます。人々が互いに顔を合わせる機会ははるかに減っています。労働時間や通勤時間が長くなり、ネットフリックスのように家で楽しむエンターテイメントも充実している。かつては皆外に出て、互いに心地よさを感じられる場所を求めていたのに。社会的なつながりが減ることは、喫煙よりも飲酒よりも、運動不足よりも体に悪影響を及ぼす、という興味深い研究もあります」とジョーンズ氏はいう。彼の業績は社会起業家をサポートすることで高い評価を受ける国際ネットワークのアショカ財団に認められた。財団は2016年、ジョーンズ氏を生涯会員に認定した。これは、パキスタン正義運動のイムラン・カーン氏や2014年ノーベル平和賞受賞者のインディアン・カイラシュ・サティアテイ氏といった人道主義勢力に並ぶ栄誉だ。

 アショカ・フェローシップ・マネージャーのフロリアン・ラッチ氏は「ジョーンズ氏はただ非宗教的な教会を作っただけではなく、コミュニティを結集させてくれました。彼は賢明にも、人が自らステップアップし、コミュニティ内で自ら変革者となれるよう、社会的な技術として教会を活用したのです」と語る。

 コミュニティの考え方は「Retreat to the Future」に欠かせないものだ。ここでは、10枚チケットが売れるごとに、(本来経済的な理由で購入できない人のために)無料チケットが発行される。これはライフホイールというエクササイズを行うとよくわかる。我々は円グラフを作り、人間関係やキャリア、身体的な幸福など、人生の10のセクションに点数をつける。そのうち2つのセクションには「大義」(自分よりも大きな大義に何かを与え、貢献しているか)と「コミュニティ」という見出しがつけられていた。

「これらの要素は、本人とっては重要でないかもしれませんが、我々は人生においてこのようなことが無視される非宗教的な時代に生きていますから、あえて皆さんに提示しているのです」とジョーンズ氏は言う。「コミュニティと人生は同じコインの表と裏にあり、サンデーアッセンブリーの本質では、リンクしています。人間関係を持たない人生は、人生とは呼べません。そして祝福する価値のない人生を送る人との関係もまた、コミュニティとは言えないのです」

 ジョーンズ氏の言葉は核心をついており、目からうろこが落ちる瞬間がある。私は自分が典型的な、個人主義で無宗教の社会が生み出した自己中心的な存在であることに気がついた。信念とコミュニティのセクションでは、私はほぼ0点だった。私は貴重な教訓を得、自分が暮らすノース・ロンドンのコミュニティにより貢献したいと思うきっかけをもらった。まずは、娘が通う学校のクリスマスフェアのお手伝いに参加することにした。また、サンデーアッセンブリーの全国的な「Help Often」のコミュニティアクションプログラムにも申し込んだ。

 日曜日の夕方、家に帰る前、我々は3名からなる「説明責任グループ」に分けられた。これは、この週末以降の行動計画を互いに見て助け合うためのものだ。部屋の中には、仕事に関する報告を提出する人もいれば、健康を重視する人もいるし、国を動かそうという人もいる。瞑想のおかげで、私は小説家になりたいという夢を追い続けることになった。私はこれからも書くことをやめないが、ただ発信することにあらゆる面で、自分を追い込まないよう努めることにする。

 車で帰宅しながら、私はインスピレーションを感じている。私はシャイな人間だが、少なくとも日曜日の午後6時までは、ジョーンズ氏によって私は喜びで泣き、飛び跳ねる瞑想を行い、ほとんど知らない女性3人と抱擁し(私はハグする人間ではないので、これはすごいことなのだ)、そして人生で最高の瞬間と最悪の瞬間を人々と分かち合った。私はもはや彼らを見知らぬ他人と呼ぶことはできない。良い時間を過ごし、そのうちの2人とは2週間後に会う約束をしている。

 今後5カ月間、ジョーンズ氏はブリストル、ラスベガス、サンフランシスコで「Retreat to the Future」を開催する。そして、今後も社会をより「個人主義的でない場所」にするという使命を継続していく。彼に別れを告げた時も、彼は微笑んでいた。彼は今まさに、世界へ羽ばたこうとしている。

Text by NewSphere 編集部

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