「意識変えてくれた」日本支援のジャカルタ地下鉄、市民の新たな文化に

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 深刻な渋滞緩和の切り札として期待される、ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)が開業した。地下と高架部分を走り、ジャカルタの中心部と南部を30分で結ぶ。乗客のマナーの悪さなども報じられているが、数十年間待ちに待った市民にはおおむね好評だ。ジョコ大統領も、MRTが「新しい文化」の一部となったと胸を張る。日本の技術と資金援助で作られたインフラが、ジャカルタ市民の生活を変えようとしている。

◆正確できれい 公共交通機関への意識が変わった
 BBCによれば、実はジャカルタにはMRT開業前からバスや通勤列車などの大量輸送システムはあった。しかし、第一の選択肢として市民に選ばれることはなく、通勤に公共交通機関を使う人は、ジャカルタの人口の20%しかいない。ジャカルタ市民にとって、不便で使い勝手の悪い公共交通機関と、渋滞に巻き込まれる自動車やバイクしか選択肢はない状況だった。

 通勤経験のあるライターのイカ・クリスマンタリ氏は、これまでまったく公共交通機関を信頼してこなかったという。しかしMRTに試乗し、これこそが悪夢のような通勤から解放してくれるものだと気づいたそうだ。まず、手軽に乗れて渋滞もない。インドネシアではまれな定時発車で、車両内部は清潔で整然としている。同氏は渋滞を見下ろして走る車両の窓から見える青空と、交通渋滞に打ち勝ったという特権的な気分に恐れ入ったとしている。初めて公共交通機関にプライドを持てたとし、この気持ちはほかの市民も同じではないかとしている(ジャカルタ・ポスト紙)。

Text by 山川 真智子