アメリカにおける家族分断の長い歴史 そのトラウマは世代を越える

AP Photo/David J. Phillip

著:Jessica Pryce (フロリダ州立大学 フロリダ児童福祉研究所、Executive Director)

 不法移民に対するトランプ政権の「不寛容政策」の下、ここ数週間のあいだに何百組もの不法移民の家族が引き裂かれた。その後、移民の親子の分離措置は停止されたと伝えられているが、彼ら家族がふたたび一つに戻れるのがいつになるか、現時点では不透明だ。子供たちは恐らくフォスターホーム(里親)に引き取られるだろうという報告があり、また、少なくとも1名の十代少年が避難所から逃亡し、行方をくらましたとも伝えられる。

 しかしながら、アメリカにおいては、子供を親から分離する政策が行われたのは何もこれが初めてではない。いくつか例を挙げると、奴隷制時代のアフリカ系アメリカ人、「涙の道」の時代におけるアメリカ先住民、さらには第二次世界大戦中に抑留された日系アメリカ人までが、すべて、隔離と分断の政策に苦しんだのである。

 私は一研究者として、児童保護に関わる研究に積極的に従事し、子供を親からむやみに引き離す政策について調査を行ってきた。その私から見ると、そのような政策が多くの場合、その人の生涯を通じて取り返しのつかない悪影響を与えるということは、もはや自明すぎる事実だ。

◆家族分断の歴史
 奴隷制時代のアメリカでは、奴隷の親からその子供を取り上げて売買することが日常的に行われていた。奴隷の所有者が自分の「所有物」をどのように「処分」したとしても、所有者に対する特段の法的規制はなかった

 また1800年代には、国家主導の親子分断の次なる時代が訪れる。それはアンドリュー・ジャクソン大統領がインディアン分離法を承認した後に始まった。アメリカ先住民、中でも特に若者が、強制的に彼らの家庭やコミュニティから引き離され、特別に指定された「インディアン居留地」までの長い道のりを徒歩で移動するよう命じられた。そしてその旅の途上で数千人が死亡した。以来、この悲劇は「涙の道」と呼ばれるようになった。

 しかしその後もアメリカ政府は同様の政策を推し進めた。アメリカ先住民の子供達を寄宿学校へ強制入学させ、家族と別れて教育を受けるよう義務づけたのである。この政策の狙いは、子供達と先住民の親との間に距離を作り出し先住民固有の価値観を徐々に放棄させることだった。これは現在の研究者達の間で「強制的同化」と呼ばれる手法だ。

 この政策は、1978年のインディアン児童福祉法の成立まで続いた。この時点で初めて、アメリカ先住民の両親に対し、寄宿学校での教育を拒否する法的権利が与えられた

 アメリカ政府の家族分断政策のその他の実施例としては、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の抑留が挙げられる。ルーズベルト大統領は、アメリカ在住の日系人(その大半がアメリカ市民だった)を収容キャンプに強制移住させる命令を出した。そこでは幼児を含めた子供たちも例外ではなかった。彼らは親と共に収容される場合もあったが、親から引き離される場合もあった。

 そして、これに類似する分離政策は今なお行われている。それがもたらすネガティブで長期的なトラウマを深く考慮することなく、それは頑なに擁護され、正当化されてきた。

◆長期的影響
 奴隷制時代の家族分断の影響に関する最近の研究では、長年にわたって引き継がれてゆくトラウマが注目されている。

 研究者のジョイ・デグルーイー氏は、大きな反響を集めた彼女の著書「心的外傷後奴隷シンドローム」の中で、奴隷制時代の歴史が今日の黒人家庭にどのような影響を与えているかを解説している。

 世代を越えて引き継がれるトラウマについて長年研究してきたデグルーイー氏によれば、奴隷生活を耐え抜いた大勢の人々が抱えていた、怒りや暴力や自己否定などといったネガティブなトラウマ行動が、現代の世代に至るまで引き継がれてしまっている可能性がある。この点については「もはや常識」だと彼女は付け加えた。

 研究者たちは、アメリカ先住民の寄宿学校が与えた影響についても調査を行っている。調査結果の中では、寄宿学校における虐待について報告があり、またそれが後年どのような影響を具体的に及ぼしたかについても報告されている。子供時代の影響としては、うつ病の発症率の高さが指摘された。また、成人後の彼らがストレス管理に問題をかかえていることと、彼らが幼少期に寄宿学校で受けた不遇な体験との間には相関があるとの指摘もあった。

 里親制度の下で行われている、ある里親から別の里親へと家庭を移動する「マルティプル・プレイスメント」の悪影響については、長年研究が行われてきた。それによれば、このような不安定な家庭割り当てを体験した子供たちは、ひとつの家族から分離された後に、深いトラウマと帰属意識の喪失に悩まされるという。

 幼少期に受けた分離トラウマは、成人後に至るまで、本人の肉体と心理に多大な悪影響を与え続ける。端的に言えば、子供の健全な発育が多くの面で阻害されてしまうのだ。

2018年の家族分断
 「自分は護られており、適切なケアを受けられる」と子供自身が感じられる愛情豊かな育成環境が保証される場合には、幼少時に受けた好ましくない体験の悪影響は最小限に抑えられる。

 私たちは、今まさに起こっている事態について、ここで挙げた過去の事例と比較して考える必要がある。ひとまずトランプ大統領は、これ以上の家族分断を停止する執行令を出した。だが、すでに与えられてしまったダメージを全く無かったことにすることはできない。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated Conyac

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Text by The Conversation