川内原発、再稼働は誰が決める? 責任ぼかす政府・規制委に海外から批判

 原子力規制委員会は16日、鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について、安全性が新しい規制基準に適合しているとする審査結果を了承した。「適合」の判断が下されたのは、昨年7月に従来よりも厳しい基準が施行されて以来、初めて。

 海外メディアも「日本の原発復活への第一歩」と注目し、再稼働に向けた今後の課題や問題点に言及している。

【首相や地元首長も再稼働に前向きだが・・・】
 新基準は、福島第一原発の事故を受け、想定される津波などの自然災害の規模を引き上げるなど、より厳しいものになっている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、九州電力が作成した400ページに及ぶ審査報告書が了承されたことにより、「川内原発は大きな自然災害やテロにも耐えると判断された」と報じた。これは、今後日本で行われる審査のテンプレートになる、と予想している。

 安倍首相は訪問先の宮城県で、記者団に「再稼働に向けて地元の理解を求めていきたい」などと語ったという。川内原発がある薩摩川内市の岩切秀雄市長も「川内原発は厳しい基準を満たした。私は安全だと理解している」と語ったという。

 また、原子力規制委員会の田中俊一委員長は審査結果を了承した会合の席で、「これは非常に大きなステップだ」などと発言。一方、その会場の外では小規模な反対派の集会が行われ、原子力規制委員会を「原子力村の操り人形」などと糾弾したという(インターナショナル・ビジネス・タイムズ=IBT)。

【ゴーサインは誰が?】
 原子力規制委員会は今後、審査報告をウェブサイトに公表し、国民の意見を1ヶ月間公募した後、それを加味したうえで適否を正式決定するとしている。日本各紙は、川内原発は早ければ今年10月に再稼働するとみている。

 一方、ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、「九州電力や推進派の政治家たちは、まだ喜んでいるわけではない」と記す。最終的に再稼働にゴーサインを出すのは誰か、ということがはっきりしていないからだという。原子力規制委員会には原発を止める権限はあるが、稼働・再稼働を命じる権限は法的に与えられていない、と同紙は指摘する。

 田中俊一委員長自身もこれに関して、「最終的な責任は自分たちにはない」と繰り返し発言しており、今回の記者会見でも「再稼働の決定は地元住民と電力会社、政府の間で行われるべきだ」と語った(WSJ)。一方、政府は「安全性を判断する責任は原子力規制委員会にある」とする立場を取っていると同紙は指摘。九州電力も「承認後に取るべきステップがはっきりしない」などと、再稼働について踏み込んだコメントを避けているという。

 WSJによると、グリーンピース・ジャパンなどの反対派グループは、当事者たちのこうした態度を「責任のなすりつけ合い」「故意に責任の所在をあいまいにしている」などと批判している。

【ウラン価格が持ち直す?】
 各海外メディアは、根強い世論の反対も再稼働を目指す安倍政権の前に立ちはだかると見ている。FTは、最新の世論調査を見ても「日本人のマジョリティが原子力を完全に破棄したがっている」とし、今回の判断によって原発の安全性に関する「感情的な議論」に再び火がつくだろうと記す。

 またIBTは、原発の燃料となるウラン市場にも目を向ける。福島第一原発の事故以降、日本の需要減によりウランの市場価格が安値を更新し続ける中、今回の日本の動きにより「持ち直すかもしれない」とするニューヨークのブローカーのコメントを紹介している。

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Text by NewSphere 編集部