インパクト投資、25兆円規模に拡大 主流化に向けての課題とは?

Pavel Chagochkin / Shutterstock.com

 投資収益も得つつ社会貢献をするという新しい形の投資手法「インパクト投資」が世界的に急成長している。国連が定めた「持続可能な開発目標(Sustainable Development GoalsまたはSDGs)」の達成にもインパクト投資による貢献が期待されている。

 今年6月に出版されたインパクト投資を推進する非営利団体Global Impact Investment Network(GIIN)の2018年版調査レポートによると、インパクト投資の世界規模は2017年末で約2,281億ドル(約25.4兆円)。年間成長率は13%と著しい成長を遂げている。GIINのリサーチ・ディレクターは、この成長トレンドはインパクト投資以上に大きな兆候であり、「金融業界全体の変化を予測している」と述べている。

 大きな期待が寄せられているインパクト投資だが、従来の投資概念を覆すような主流化にあたってはまだ課題点が残る。

                                                                                                                 

◆幅広いリスク・リターンに合う投資
 インパクト投資と言っても投資先は幅が広く、地域、業種、成長ステージもファンドによって様々である。米イーベイ設立者によって設立されたインパクト投資会社Omidyar Network(オミデイア・ネットワーク)は米国及び発展途上国のインターネットやモバイルテクノロジー、教育、金融サービス、ガバナンスと市民の関与、財産権などに関する企業や非営利団体に幅広く投資している。ジュネーブに本社を置くインパクト投資ファンド会社Symbiotics(シンバイオティックス)は発展途上国の金融サービス企業への投資に特化している。

 GIINのレポートは、幅広いリスク・リターンに合う投資がなされていないと指摘する。シード・ステージのベンチャー企業などは社会インパクト創出の可能性があったとしても資金調達は難しい。高リスクの案件に投資がされず、多くのファンドが同じような企業やプロジェクトに投資をしているのが現状だ。

 理由としては主に投資家のリスク許容度の低さがレポートでは指摘されている。インパクト投資は寄付を通じて行う従来の国際援助やチャリティー活動とは異なり、投資収益を得る必要がある。利益率は異なるかもしれないが、投資家が財団や非営利団体であってもリターンを望むのは同じだ。

 そんななかで注目されているのが「ブレンデッド・ファイナンス」と呼ばれる投資手法である。異なる投資リターンを要求する投資家から資金を集めて投資することによって、リスク許容度の低い投資家も巻き込むことが可能になる。

◆「インパクト・ウオッシュ」
 近年のインパクト投資の成長の背景には、大手ファンド運営会社によるインパクト投資への参入が挙げられる。しかし、インパクト投資経験の浅い企業が増えるにつれて、インパクトの定義、評価の仕方の問題があやふやになるのではないかという懸念もされている。この危険性はブレーン・ウォッシュ(英語で「洗脳」の意味)からできた造語「impact-wash(インパクト・ウォッシュ)」とも呼ばれている。

 社会的インパクトがあってのインパクト投資。運用資産額の増加とともに社会的にもたらすインパクトの増加を期待するのが当たり前だ。

 インパクト投資に関わるメンバー226団体を対象に行ったアンケートに基づいているGIINレポートでは、インパクト・ウォッシュの問題に関して、アンケート回答者の8割は投資家に対してのインパクト評価などの情報の開示を広めることを解決策として挙げている。しかし社会インパクト評価の統一が困難なのが現状だ。

 第三者によるインパクト投資の認証や行動規範の設定なども解決策として挙げられているが、実際に実行するのは難しいだろう。

◆アジアでの成長
 GIINのレポートによると、世界的に見てもアジアへの投資額が低いことがわかる。特に東アジアは2017年の投資総額の4%と、北アフリカの4%と並んで最低レベルである。

 シンガポールに本部を置く資金提供者たちのネットワークAVPN(Asian Venture Philanthropy Network)によると、インパクト投資の概念が浸透していない、インパクト投資を支えるエコシステムが未熟、投資家のリスクに対する認識、などがアジアにおけるインパクト投資発展の問題として挙げられている。

 アジアにおいてはロックフェラー財団など、インパクト投資において革新的な取り組みを行なっている財団が欧米に比べて少ないのも大きな理由だろう。

 将来アジア地域の資産総額成長が予測されるため、インパクト投資の成長も期待されている。

 本当の意味での主流化には課題が残るが、より一層の成長が期待されるインパクト投資。「全ての投資をインパクト投資に」と願う投資家も少なくない。地球が無ければ、消費者がいなければ、企業は成り立たないと考えれば、長期的に見て生き残れるのは持続可能性がある企業、つまり環境・社会・経済を考慮する企業のみ、とも言える。ミレニアル世代が牽引すると見られるインパクト投資、今後の動きに注目だ。

Text by 中川沙和

Recommends