生産性とは一秒一秒を最適化することだとされ、スクリーンが仕事と私生活の境界を曖昧にする現代。そんな時代にあって、あえてペースを落とし、デジタルから距離を取るために「過去のコミュニケーションツール」に目を向ける人々が増えている。

手紙を書くこと、タイプライタークラブへの参加、カリグラフィーや封蝋(ワックスシール)を紹介するTikTokコミュニティなど、触覚的な活動がレトロな筆記文化を再びよみがえらせている。それらは単なる懐古趣味ではなく、テクノロジーとの距離を見直し、時間をより意識的に使い、他者と深い関係を築くための手段となっている。

俳優・映画監督オーソン・ウェルズが所有していたロイヤル社製「ロイヤル・ポータブル・タイプライター」(1931年頃製造)AP Photo/Kirsty Wigglesworth, File

「私にとってペンパルは友人です。電話で話す友達や、カフェで会う友人と何ら変わりません」と語るのは、カリフォルニア州クレアモント在住の手紙愛好家、メリッサ・ボビット(42)。現在は約12人と文通しているが、多い時には40人ものペンパルがいたという。

「一人の相手に集中して、その人の言葉を丁寧に読み、自分の心の内を分かち合う。その行為は、まるでセラピーのようです」

かつて遠く離れた人と想いを伝え合う唯一の手段だったインクと紙、そして筆記具は、今もなお世界中の人々を結びつけている。以下では、スネイルメール(郵便)の魅力と、始めるためのヒントを当事者たちが語る。

ペンパルからの手紙 AP Photo / Charles Krupa, File

書くことは、日常からのエスケープ

常に「つながっている」ことが求められる社会において、手紙を書くことやスクラップブッキングのようなアナログな趣味は、集中力と忍耐を必要とする。ペンを取り、封蝋で封をし、紙面をレイアウトする行為は、美しい成果物を生むだけでなく、内省のための静かな時間をもたらす。

シカゴ在住の学生、ステファニア・コントパノス(21)は、友人関係も学業もオンライン中心の生活の中で、スマートフォンやパソコンから離れることの難しさを感じているという。
「友達と夕食をしていて、気づいたら全員がスマホを見ていることがあります。そんな時は、意識的に置くようにしています」

彼女は家族や友人にポストカードを送り、スクラップブッキングや「ジャンクジャーナリング」(チケットやレシートなど日常の紙物を再利用して記録する手法)を楽しむことで、意図的にデジタルから距離を取っている。郵便局に行くこと自体が、カンザスに住む母親とのアクティビティとなり、郵便局員との会話など、普段なら出会うことのない人々との交流も生まれているという。

ノスタルジーが育むコミュニティ

カナダ・オンタリオ州在住のキキ・クラッセン(28)にとって、手紙を書くことはノスタルジーそのものだ。郵便労働者を代表するカナダ郵便労働組合のメンバーだった亡き母とのつながりを感じられるからだという。

2024年10月、クラッセンは月額制の郵便サービス「Lucky Duck Mail Club」を立ち上げた。毎月、彼女のアート作品、インスピレーションを与える言葉、メッセージが参加者に届けられる。現在、会員は最大で36カ国、1,000人以上にのぼる。

「机に向かうと、自然と自分の言葉を選び、内省する時間が生まれます」と彼女は語る。「書くことは脆さを受け入れる行為でもあります。気持ちは文字にすると表現しやすい。返事を読んで涙したこともあります。紙は多くの人にとって安全な場所なのだと思います。書いて、送って、そして手放す」

長年文通を続けてきたボビットにとって、請求書や広告ではないものが郵便受けに入っている瞬間には「大きな喜び」があるという。「もし皆が手紙で郵便受けを満たしたら、もっと優しい世界になるはず。少なくとも、郵便受けを開けるのが憂鬱ではなくなります」

彼女は小学校低学年で初めてペンパルクラブに参加し、その後は世界中の人とポストカードを交換するオンラインプロジェクト「Postcrossing」を通じて交流を広げた。カード交換が、やがて手紙へ、そして友情へと発展したケースも多いという。

ペンパルからの手紙 AP Photo / Charles Krupa, File

アナログが生む「本当のつながり」

同様の想いから、ダラス在住のDJ、ロバート・オウォイェレ(34)は、月に一度の「アナログ・ギャザリング」イベント「CAYA」を立ち上げた。開催から1年足らずで、手紙を書く夜、塗り絵、レコード鑑賞などのイベントを企画している。

「デジタル時代は、つながっているようでいて、実は幻想的なつながりを生みがちです」と彼は言う。「本当のつながりは、対面で生まれる。触れること、目で見ることによって、私たちは自然と深く関わることができる。アナログな活動は、その象徴です」

始めるためのヒント

手紙を書くことやヴィンテージな趣味は一見手軽に思えるが、忙しい日常の中で「ゆっくりする時間」を確保するのは容易ではない。

コントパノスは、時間の使い方を見直すことが重要だったと語る。「年齢を重ねるにつれて、どれほど多くの時間をスマホに費やしてきたかに気づきました」自分にとって本当に好きなことを見つけ、それを優先することで、趣味は生活の一部になったという。

高価な道具や長時間を必要としない趣味も多く存在する。タイプライタークラブ「Type Pals」への参加、カリフォルニア州の国際印刷博物館が主催する「ロサンゼルス・プリンターズ・フェア」、Instagramの「Wax Seal Guild」やFacebookの「The Calligraphy Hub」といったコミュニティに足を踏み入れることは、始めるきっかけになる。

クラッセンは、SNS上の反応を見て、ヴィンテージ筆記具や小さな触覚的喜びの復活がトレンドになる兆しを感じているという。

「2026年、女の子たちはアナログに向かうのです」


By CHEYANNE MUMPHREY Associated Press