バンド仲間として半世紀以上を共にし、数多くのアルバムをリリースしてきた。しかし、アートポップ・バンド「スパークス」を率いる兄弟のロン・メイル(79歳)とラッセル・メイル(76歳)は、近いうちに引退するつもりは全くない。
バンドのサウンドは結成以来、常に進化を続けている。ロンとラッセルは、同じスタイルにとどまったり過去の成功に安住したりする衝動に抗うことを最重要課題と考えている。彼らは28枚目のスタジオ・アルバム『Mad!』のリリースとツアーを控え、なぜ創作を続けるのか、インスピレーションが降りるのを待つのではなく追い求める姿勢、そして若い世代が自分たちの音楽と出会うことの意味について、AP通信の取材に答えた。このインタビューはわかりやすさと簡潔さのために編集されている。
AP(記者): お二人はロサンゼルスでロック音楽の重要な時期に育ちましたが、キャリアの初期には一時期イギリスにも移りましたよね。環境は創作活動に影響を与えると感じますか?
ロン: 僕たちが活動を始めた頃は、ヨーロッパなんて一度も行ったことがなかったんです。でも、あたかも自分たちがイギリスのバンドであるかのようにふるまっていました。というのも、自分たちが本当に惹かれていたのはイギリスの音楽だったからです。
それに、僕たちはイメージのあるバンドが好きでした。当時のLAのバンドって、イメージを打ち出すことは“音楽的誠実さに反する”って考えられていて、でもそれって馬鹿げてると思ってたんですよ。だから僕たちは自然とイギリスのバンドに惹かれていったんです。ビーチ・ボーイズとか一部を除けば、LAのバンドにはほとんど影響を受けていないですね。

Photo by Rebecca Cabage/Invision/AP
AP: なぜこんなにも多くの音楽を作り続けているのか、自分たちで考えたことはありますか?
ロン: 周りの人からは「多作だね」とよく言われるんですが、自分たちではあまりそう感じていないんです。僕たちがやっていることのひとつは、「インスピレーションを待たない」ということですね。ひらめきが落ちてくるのを待っていると、思った以上に時間がかかってしまうことがあるので。
だから僕たちは、すべてがうまくいくわけではないと分かっていても、とにかくたくさん取り組むんです。多作だと“見せかける”ためには、実際に机に向かってアイデアを追いかけ続けないといけない。何か神がかり的なひらめきが降ってくるのを待つよりも、自分たちから動いていくスタイルですね。
AP: 引退を考えたことはありますか?
ラッセル: 引退?それって何?(笑)
人生のすべてが「何かを創り出すこと」であるなら、それ以外のことをするなんて考えられないですよね。だから…そんなことは一度も頭をよぎったことがありません。もしかしたら僕たちは引退という概念に鈍感なのかもしれないけど、とにかく本当に幸せなんですよ。
AP: 「The Last Dinner Party」があなたたちの楽曲「This Town Ain’t Big Enough For The Both Of Us」をカバーしましたよね。若いリスナーたちがあなたたちの音楽に共鳴していることに驚きはあります?
ラッセル: 若い世代のフォロワーが増えてきているのはとても嬉しいことですし、Sparksのファン層が本当に多様になっているのも喜ばしいことです。自分たちがやっていることが、現代的な形で若い人たちやいろんな背景を持つ人たちに届いていると実感できるのは、すごく励みになります。
もちろん、デビュー当時からずっと応援してくれているファンが今も変わらずいてくれるのはとてもありがたいことです。でも、新しいファンたちはSparksに対するまったく違う視点を持っていて、それもすごく面白いんです。
昔からのファンにとっては「この時代こそが黄金期だ」と感じていることがあるけれど、若いファンたちはそういった過去の“基準”を持っていない。そういうのって、むしろ健全なんじゃないかと思っています。ここ数年のアルバムを通じてSparksに出会った彼らにとっては、今こそがSparksの黄金期なんです。
AP: お二人はパシフィック・パリセーズで育ったと読みました。最近の火災について、どのように受け止めていますか?
ラッセル: パリセーズ全体が……もう、本当に信じられないような状況で、とても悲しいです。僕が通っていた小学校も完全に焼けてしまって、本当に言葉を失いました。いまだに現実として受け止めきれないですね。ものすごく衝撃的です。
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By KRYSTA FAURIA Associated Press
LOS ANGELES(AP)