パリ・オリンピックを1カ月後に控えたこの日、ルイ・ヴィトンはパリの国連文化機関ユネスコ本部で豪華なメンズウェアのショーケースを行い、人間と、その肌の美しさを称賛した。人肌のあらゆる色彩をまとったモデルたちが、ルイ・ヴィトンのシグネチャーであるダミエ・チェックが描かれた芝生の上の巨大な球体の周りを練り歩き、視覚的な多様性のシンフォニーを生み出した。
2025年春夏コレクションのショーのハイライト:
「これは人間へのオマージュだった」。エッフェル塔と巨大な貝殻の地球儀を背景にしたルイ・ヴィトンのショーは、まるで大陸を横断する旅のようだった。「ブラックからダークブラウン、ブラウン、ライトブラウン、ベージュ、少しグレーが入って……そして最後に白になりました」2025年春夏コレクションについて、シンガーからクチュリエに転身したファレル・ウィリアムスは語った。
この見事なコレクションは、かつてコートジボワールのアビジャンを本拠地とし存在した多国籍航空会社、Air Afrique(エール・アフリック)のラゲージのデザインからインスピレーションを得ており、グリーン、ブルー、ブラックの色合いのチェック柄が際立って特徴的だった。ルイ・ヴィトンによると、1960年代から2002年まで運航されていたこの航空会社はいま、ディアスポラ的な、離散した人々の創造性の象徴となっている。アフリカ系移民たちの創造性や対話を生むための新しいプラットフォームとして刊行されたカルチャーマガジン『Air Afrique』の創設者兼クリエイティブ ・ ディレクターであるLamine Diaoune(ラミン・ディアン)や、フォトグラファーのDjiby Kebe(ジビー・ケベ)といったクリエイターたちの貢献により、ファレルはコレクションにグローバルな統一感を吹き込んだ。
大使たちが集う国連の文化本部にインスパイアされたファレルは、さまざまな原型を探求した。外交官は、1970年代のテーラリングを取り入れた深みのある豊かなトーンで登場。探検家は、ユーティリティ・ジャケットやベストなど、頑丈でありながらスタイリッシュなアウターウェアを着て登場した。もう一人の重要人物であるダンディな彼は、ラインストーンやパールの刺繍で飾られたジャケットやコートを着て、ダミエチェックの芝生のランウェイを闊歩した。
雲が移り変わり、世界の国旗がはためくドラマチックな空を背景に、コレクションの色彩はモデルたちの多様性を反映し、多文化の調和の中で暗い色調から明るい色調へと移り変わっていった。このテーマは衣服にも拡張され、ピクセル化されたパイソン柄やアフリカを中心とした世界地図などが登場。ダミエパターンを再解釈し、淡いブラウンのチェックにマルチカラーのアクセントを加えた。サッカーボールのレザー・デザインは、世界中で人気のスポーツに敬意を表している。
このショーは端正で売りやすいもので、ディアスポラの豊かさの中で、複雑さと見かけのシンプルさが融合していた。
ボタンにはエナメルの地図が埋め込まれ、素材にはLVのロゴがさりげなくエンボス加工されている。黒地に黒の刺繍や、クリスタルやパールのアクセントといった複雑なディテールが、洗練さをさらに高めていた。他の箇所では、ソフトレザーのヴィンテージ風のデザインに、オーバーサイズのモノグラム・パターンとエイジング加工が施されたレザートリムがあしらわれた。
今回もショーもまた、ファレルはファッションショーというよりも、人々にインスピレーションを与える芸術的ビジョンを披露する行為に近いものにした。これが時代精神、流れなのだろう。拍手を送るスターたちの中には、スウェーデンの女優、アリシア・ヴィキャンデルやドイツおよびアイルランドの俳優、マイケル・ファスベンダーもいた。
現在の世界の混乱と、国連ビル周辺にある世界の国旗が、いくつかの国が対立している、あるいはそれ以上の最悪な状態にあることについてファレルは「(このショーが)人々がひとつになるきっかけになるとはあえて思わない」と語った。「しかし、平和の概念を提示し、その可能性を詩的な方法で提示することが、私たちにできる唯一のことなのです」
By THOMAS ADAMSON AP Fashion Writer
PARIS (AP)