オランダ、ロッテルダムを拠点にするビンテージファッションブランドThe New Studio。現在ではビンテージ商品をキュレートし販売するだけではく、ローカルブランドとの限定コラボ商品開発、そしてクリエイティブスタジオとして、ビジネスの幅を拡大している。そんなThe New Studioはパリファッションウィーク期間の9月29日から10月2日にかけて4日間のpop-upを大盛況に収めた。質の良いミニマリスティックでシックなスタイルを中心に扱うThe New Studioは、現在オランダだけではなく、ヨーロッパ全体のビンテージシーンに新たな風を吹かせている。
The New Studioの創立者Eva Cordiaは高校卒業後、インテリアデザイン、ファッションマーケティング、クロスメディアコミュニケーションなど、6年間に渡り様々なクリエイティブな分野で勉学に励んだ。そんなEvaに、ビンテージファッション、ブランドの誕生に至るまでの道のり、そして今後のThe New Studioの挑戦について話を聞いた。
The New Studioを始めようと思ったきっかけはなんですか?
「私がビンテージビジネスをスタートさせたきっかけは、両親の影響が大きかったと思います。元々両親がビンテージの物が好きで、家具やレコードなど、私の育った家には数多くの彼らのビンテージコレクションがありました。その影響もあり、大学進学頃から、週末には一人でマーケットへ繰り出し、ユニークなビンテージ品を探すことにハマりだしました」
そんなEvaは、自身のインターンシップ期間中の2017年にVintage Findsという名でインスタグラムアカウントを立ち上げる。活動初期は月に一度、彼女がマーケットなどで見つけたビンテージの服をインスタグラムに投稿し、販売していた。しかし当時のEvaにとってインスタグラムページは一種の趣味に過ぎず、今のような形になるとは思ってもいなかったそう。
The New Studioとしてスタートしたきっかけを教えてください。
「私がインスタグラムページを始めて2年が経った頃、現在のco-ownerであり、私の元同僚であるSilviaをチームに迎え、2020年にThe New Studioとして正式にブランドを立ち上げました。Silviaをチームに迎えることによって、自分が気に入ったものを売るという考えから、消費者のニーズ、ビジュアルマーケティング、そしてプロジェクトといった幅広い面から自身のビジネスを考えるようになりました」
現在は20代・30代の男女をターゲットに商品のキュレーションをおこなっているThe New Studio
「私たちはただビンテージというレーベルのついた洋服をかき集めて販売するのではなく、The New Studioの商品と認識してもらえるよう、質の良さ、そして色や形にこだわり、キュレーション自体に統一性を持たせています」
ブランド創立後も、Evaはビンテージ家具を中心に扱うFundamenteでソーシャルメディアのプロジェクトマネジャーとして、その後はアムステルダムにあるハイエンドファッションブランド: Moiseでアシスタントマネジャーとしてフルタイムで働きながら自身のビジネスと両立させていたが、今年に入ってフリーランサーとしてThe New Studioに自身のキャリアを捧げることを決意した。
コロナ禍の中という災禍の中で活動を開始したThe New Studioですが、ブランドを大きくしていく上で特に大変だったことはありますか?
「コロナの規制によってビンテージ品の買い出しや、pop-upのロケーションハンティングなど、プロジェクトがうまく進められない時期がありました。実は先月行ったパリでのpop-upも、半年前を予定していたのですが、当時のフランス政府のコロナの規制により人数制限など色々他の要因も考えなければならざるを得ない状況だったので、今回の時期に延期をすることにしました。
The New Studioの今までの道のりを振り返ってみて、やはり0からのスタートだったので、自分達にとってどんなやり方が合っているのか、常に試行錯誤しながらブランドを成長させてきました」
The New Studioは今年の4月から6月の2ヶ月間、ロッテルダムにストアをオープンさせるという、新たな挑戦を試みた。
今夏ロッテルダムに期間限定でストアをオープンした経験について教えてください。
「私たちのモットーとして、気になることがあったらなんでも行動に移してみるということを大切にしています。そのため今回も、ブランド立ち上げ当初から頭の中にあった“ストアを構える”という1つのアイディアを実現させてみました。ストア期間を通じて、私たちのフォロワーやサポートしてもらっている人々に実際に会うことができ、良い機会になりました。しかし最終的にストアを持つこと自体は私たちが集中してやりたいことではないという結論に至り、これからはpop upやプロジェクトを中心に活動していくことに決めました」
ストアのチャプターに幕を閉じたThe New Studioは、パリでのpop upに力を注ぎ、4日間のpop-upは大盛況を収めた。特にパリで開催するということはEvaのブランド設立当初からの1つの目標であったため、The New Studioの歴史を大きく刻むことができたと本人は語った。エッジの効いたレザーやベージュやカーキなど自然色を中心としたワイドパンツやカーゴパンツといったミニマリスティックでシックな洋服を揃えたポップアップはパリ人だけでなく世界中の多くのファッショニスタたちを魅了した。
「世界中から来た多くのコンテントクリエイターやインフルエンサーが私たちのpop-upに足を運び、コラボしたいとアイディアを提案してくれたり、コンテント作りに協力してくれる人もいて私たち自身もとてもインスパイアされました」
そしてそんなThe New Studioは12月に2度目の海外主張Pop upをベルギーのアントワープで開催した。
今後どんなブランドを目指しているのか教えてください。
「私はThe New Studioというブランドとして、ただのビンテージショップという型にハマりたくないと思っています。古着やビンテージと聞いた時に、欠陥があり、汚れていて古着独特の匂いがするなど、ネガティブなことを想像する人もいるかもしれません。しかし私たちはThe New Studioのビンテージ品のコレクションを通じて、街の店頭で見る新品の衣類と同じような見た目のクオリティーで、より優れて長持ちする素材作られたビンテージ品があるということ、そしてその品物に第二の人生を与えてあげることができるということ証明したいのです。だからむしろThe New Studioでの買い物を中古ショッピングと捉えるよりも、この時代の新しい買い物の形として捉えてほしいと願っています。そして将来、もっとこのような形でビンテージファッションをいろんな人に楽しんでほしいですね」
これからどんなことに挑戦したいですか?
「最近ではビンテージ品をキュレートし販売するだけでなく、私たちはPRコンサルティング、クリエイティブダイレクティングなど、クリエイティブスタジオとしての活動を開始しました。アムステルダムやロッテルダムを中心にサステイナビリティーをテーマとしたスモールビジネスブランドとのコラボレーションプロジェクトにも力を入れています。近日のプロジェクトとしては、ドライフラワーを使用して衣服を染めている、Studio Naniとのコラボ商品を販売する予定です。現在は私とSilviaの2人でビジネスを展開していますが、将来的には、ビンテージファッションと並行して、グラフィックデザイナーやカメラマンなど、多彩な人材を集めて、クリエイティブスタジオとしてブランドを大きくしていきたいとも思っています」
最後に伝えたいメッセージはありますか?
「たとえあなたが15歳であろうと50歳であろうと、良いアイディアを持っていて、好奇心やクリエイティブなことが好きだったら、私たちはいつでも協力して何かを作りたいと思っています。今までのThe New Studioの歴史を振り返ってみてもそうですが、私たちは人との関わりを大切にしながら成長してきました。現在私たちのようなビジネスモデルのビンテージブランドがヨーロッパで流行していますが、私たちは他のブランドをライバルとは捉えていなくて、共に支え合って、ビンテージ、サステイナブルファッションを進めていきたいと願っています」
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The New Studio
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Kate Takada
オランダ、ロッテルダム在住
現在オランダ、ロッテルダムの大学でメディア・コミュニケーションを学ぶ。
2022年の1月にIto Collectiveというオランダで活躍するアジア人やアジア文化について発信するインスタグラムページを立ち上げる。
現在はロッテルダムを中心にdjとしても活動している。