Googleが運営する非営利のオンラインミュージアムサイト「Google Arts & Culture」が、日本のマンガの歴史やその影響などを包括的に紹介する「Manga Out Of The Box」を3月24日に公開した。今回、経済産業省をはじめとする13のパートナーの協力の元で制作されたオンライン展示では、マンガにまつわるさまざまなストーリーや、⾼解像度の画像、動画、ストリートビュー、さらに機械学習を活⽤したマンガ⾵イラストの作成機能などにより、マンガの世界を学ぶことができる。対応⾔語は、⽇本語、英語、スペイン語、フランス語となっており、日本のマンガ文化を世界へ向け幅広く紹介している。

Manga Out of the Box:⽇本のマンガを紐解く

今回公開されたばかりの「Manga Out of the Box」は、日本のマンガの歴史やその影響などを包括的に紹介している。21 世紀において、世界中でマンガの新しいファンは増え続けている。デジタルでもマンガを楽しめる今、Manga Out Of The Box が改めて日本のマンガの歴史や影響などを学ぶ機会につながるのではないだろうか。

「Manga Out Of The Box 」の主な展⽰内容
1. マンガの歴史について
マンガの正確な起源は未だに議論が続いているが、Manga Out Of The Boxでは、その歴史を掘り下げて知ることができる。マンガの原点として⾔及されることが多い12世紀の⿃獣戯画の巻物や、19世紀の⻄洋カリカチュアと⽇本絵画の出会いなど、美しいイラストと共にマンガの歴史を探る。

2. 著名な作家について知る
⼿塚治⾍なくして、⽇本のマンガの現在を想像することはできない。鉄腕アトムやブラック・ジャックといった作品により、⼿塚治⾍は近代の⽇本マンガを代表する作家となった。魅⼒的なストーリー展開、想像⼒を刺激する SFなどのテーマ設定を深い感性で描きあげた⼿塚作品は、後の世代の作家に⼤きな影響を与えている。⼿塚治⾍の影響を受けた作家のひとりである藤⼦・F・不⼆雄は、20世紀の児童マンガを独⾃の⽅法で定義し続け、「ドラえもん」という世界に愛されるカルチャーアイコンを⽣み出した。

Google Arts & Culture 「MANGA Out Of The Box」トップページより一部抜粋

3. 美術館を訪れる
Manga Out Of The Boxでは、ストリートビューにより、どこからでもパートナー美術館に訪れることができる。川崎市 藤⼦・F・不⼆雄ミュージアムでは、館内展⽰の様⼦に加え屋外に設置されている⼈気キャラクターのモニュメントを、豊島区⽴トキワ荘マンガミュージアムではかつて多くの作家が過ごした部屋の様⼦をスマートフォンやPCからいつでも⾒ることができる。

Google Arts & Culture 「MANGA Out Of The Box」トップページより一部抜粋

4. 現代アートへの影響について
マンガの影響は、ファッション、インターネットカルチャー、ビデオゲーム、現代アートなど、広範囲に及ぶ。著名な⽇本⼈アーティストのひとり、村上隆の作品にもマンガの影響を⾒ることができる。 Manga Out Of The Boxでは、村上隆のプロジェクトに関するオンライン展⽰「ドラえもんx村上隆。⽇本⽂化を象徴する、マンガとアートの最強コラボ」を公開している。

5. マンガ⾵イラスト作成機能
機械学習の技術を活⽤した Giga Mangaでは、「Magic mode」を使い、線や円などをランダムで描くと、マンガ⾵イラストが出来上がる。また、「Magic mode」を使わずに⾃由に描いたイラストでも、機械学習が好きな⾊を塗るお⼿伝いをしてくれる。どちらのモードでも、完成すると、描いたイラストとテイストが似たマンガや作品をおすすめしてくれる機能を持つ。また、出来上がったイラストはダウンロードできるほか、SNSで共有できる。

機械学習の技術を活⽤した Giga Manga

Google Arts & Culture プログラムマネージャを務めるエリザベス カロットさんは、「今回、『MANGA Out Of The Box』をご発表できることを私自身とても嬉しく思います。今回のプロジェクトというのは、オンライン上でマンガをレトロスペクティブとして取り上げるものとしては最大規模です。約70,000枚の画像をお披露目します。経済産業省をはじめとする多くのパートナーのご協力によって作られたこの展示の中に入っていただくと、時間を忘れてしまうくらい夢中になると思います。ぜひお楽しみいただきたいです」と語った。

また、パートナーとして参加している川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムの学芸員、小林順子さんは、「今回のプロジェクトにあたって、Googleストリートビューのために館内を撮影し、また、Art&Cultureの中で展示の一部を無料公開することについて、抵抗がなかったわけではありません」と語った上で、コロナ禍で、自身も個人的にストリートビュー等を通していくつかの美術館を見る機会があり、WEB上の閲覧であってもとても有意義な体験だったと話した。同時に、デジタルの美術館の閲覧はリアルの美術館に行かなくなる理由にはならない、という感想も持ったという。

「藤子・F・不二雄先生のことや、作品の魅力はもちろんのことですが、さまざまなマンガの情報のつながりの中で、日本や海外のファンの方に『ここで藤子・F・不二雄の肉筆の原画を見ることができる』と、知っていただけたらと思っています。様々な情報とのつながりはデジタル上で。そして、将来リアルなミュージアムへの道しるべとなる、そういった繋がりができれば、うれしく思います」

今回のプロジェクトに協力した明治大学国際日本学部教授の宮本大人さんは、今回のオンライン展示には2つの大きな意義があると語った。「1つ目は、『トピック・テーマと切り口の多様性』にあると思います。今回100以上のオンライン展示を公開していますが、非商業的、かつインターネット上の媒体でこれだけの質量でマンガについて取り上げられたことは前例にない。非常に読み応えのあるものですが、日本のマンガの全体像が容易に概観できないくらい多面的であることを体感できると思います。2つ目は、日本語だけでなく、英語やそのほか複数言語で同時に公開していること。日本のマンガについての各国の知識の落差に気付くきっかけになるのではないかと思います」

Google Arts & Cultureは、2,000を超える世界各地の美術館や博物館(⽇本においては100以上)等が所蔵する作品や⽂化遺産を鑑賞できるサービスだ。2011年に提供を開始し、ウェブサイトやiOSまたはAndroidアプリからアクセスすることで、ゴッホの星⽉夜、伊藤若冲の樹花⿃獣図屏⾵、広島平和記念資料館など、600万点を超える芸術作品や歴史的資料にアクセスすることができる。世界各地の美術館や博物館等とパートナーシップを結び、⼈類の多様な⽂化遺産に世界中のユーザーがインターネットを通じて簡単にアクセスできるサービスやツールの開発・提供に取り組んでいる。

Google Arts & Culture
MANGA Out Of The Box