アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで、10月1日から万国博覧会が開催されている。東京2020年オリンピック・パラリンピック大会と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大により開催延期を余儀なくされていた万博。予定から1年遅れたことにより感染症対策準備も整えたとして、世界中からの観光客を受け入れての開催を実現している。

ドバイの町は、海沿いにリゾートホテルや商業施設を中心に、海上の人工島は別として、内陸部へと開発が進んでいる。今でも車で1時間も走れば未開発の地、すなわち砂漠にたどり着くほど。市街地でも、空き地などは砂漠のままであるため、舗装されていない道路や空き地にうっかり乗り入れると、タイヤが砂に埋まって抜け出せなくなることもあり、改めてこの町が砂漠の上に建っているのだと気づかされる。このドバイの広々とした内陸の砂漠地帯を利用して、約4K㎡の敷地にドバイ万博会場が完成した。

万博を訪れる客が最初に目を見張るのが、人々を迎え入れるゲート、万博のシンボル的建築だ。ロンドンに拠点を置くデザイナーAsif Khanの作品で、開閉が可能。会期中は実際に朝と夜、ゲートを開け閉めしている。マシュラビーヤと呼ばれる、イスラムの伝統建築に多く見られる幾何学模様の窓飾りをモチーフにし、素材は超軽量カーボンファイバー。最も細く、最も軽量かつ頑丈なつくりに仕上げることを第一にデザインし、高さ21m、幅30mの金網かごのようなゲートの90%は「空気」でできていると表現されているのにも納得がいく。伝統と未来を融合し、万博会場の入口と出口の役割を担っている。

次に人気のスポットは、世界最大の360°プロジェクションが可能なAl Wasl Plazaのドームだ。Waslとはアラビア語で「つながり」という意味があり、ドバイ万博のテーマ「心をつなぎ、未来を創る」にもリンク。直径130m、高さ67mの巨大なドームは、エアバスA380を2機横に並べた翼の端から端までと同じ距離がある大きさ。開閉会式や、参加各国の建国記念日の祝典、大晦日のカウントダウンにも利用されるイベントのメイン会場で、張り巡らされた膜は、日中は日陰を作り出し日が暮れると鮮やかな映像が映し出され、人々が集まる場所になっている。

テーマ別パビリオンでは、サステナビリティ地区にあるメイン・パビリオン・テラ(Terra)に注目が集まる。幅130mの巨大なテントと18本の「エネルギーの樹」が立ち、5000枚近いソーラーパネルで年間に90万台のスマートフォンが充電できるだけの電力を発電するとされている。

また今回のドバイ万博では、万博史上初めて参加国192ヶ国全部のパビリオンが出展している。

日本館は、アラベスクと麻の葉文様を組み合わせたデザインと、折り紙を表現した立体格子が張り巡らされた外観に、館内では様々なコンテンツを最新のテクノロジーで展示する人気のパビリオン。暑い日中でも入場の行列ができる場所になっている。また、反射ガラスが鏡のように風景を映しこむ外観が、建築のプロをも驚かせているスイスのパビリオンや、メソポタミア文明をテーマとするイラクのパビリオン、そしてアラブ首長国連邦のパビリオンは空を飛ぶハヤブサを象った建築で、国別パビリオンとしては最大級だ。

各国それぞれの特徴と中東・アラブとのつながりを基本テーマにしているパビリオンは、外観や展示内容だけでなく、その国のグルメを味わえるのも楽しみの一つ。場内の飲食店は200以上あり、食事目的だけで訪れる価値もある。

開場時間は朝10時から夜10時までを基本に、週末にあたる木曜日と金曜日は午前2時まで開園。暑さの厳しい日中を避けて、夕方から外出することが多い中東湾岸諸国の文化を反映しつつ、夜のライトアップに映える建物群も必見だ。

中東・アフリカ・南アジア地域で初開催となる国際博覧会。UAEの7首長国を代表したドバイの万博開催に際し、各首長国の首長は公務員に5日~7日の「万博訪問有給休暇」を付与すると発表した。またアブダビ首長国の国営石油会社も同様に、5日間の万博有給休暇を発表し、地元で開催される世界的イベントへの参加を国を挙げて推奨し、サポートしている。

ドバイはPCR検査の陰性証明を持参すれば、世界中から旅行客を受け入れ隔離措置は行っていない(10月14日現在、特定の国からの入国に制限あり)。まだ自由に海外旅行に出られないこのご時世、ドバイへ出かけて世界旅行の気分を味わう、今しかできない楽しみ方かもしれない。


ドバイEXPO(公式)
Expo 2020 Dubai 

入場料:1日券
大人 AED95(約3000円)
17歳以下の子供と60歳以上は無料
*入場には少なくとも1回のワクチン接種証明書またはPCR検査陰性の書類が必要


ライタープロフィール
Yukari Isemoto-Posth ライター