ミニマリスト、ノーム・コアブームの影響か、ミレニアル世代にとって、“同じ服を着続ける“ということは、もはやスタンダードかもしれない。数々の成功者たちが毎日同じ服を着続けているという話もあまりに有名である。Appleの創業者であるスティーブ・ジョブス、Facebookの創設者 マーク・ザッカーバーグ、元アメリカ大統領のバラク・オバマや、ファッション界を牽引したカール・ラガーフェルド——また、アルベルト・アインシュタインも生前、常に同じ洋服を着続けていたのだとか。

もともと服装の自由度が高いIT業界に加え、日本でも大企業がドレスコードを緩めたりと、ビジネスシーンにおける服装のカジュアル化が進み、さらにコロナ禍の影響により在宅勤務やリモートワークが大きく普及し、「スーツ」を着る機会はますます少なくなった。ワイシャツに変わって普段Tシャツを着用している人はかなり多いのではないだろうか。

ベーシックなアイテムだからこそ、素材やディティールの違いで着心地や印象が大きく異なる無地のTシャツ。さまざまなブランドでベーシックなアイテムとして販売されているため、どのTシャツを選べば良いかを悩む人は多いかもしれない。今回は、”毎日着るものだから心地よく長く着られる一着”にこだわったTシャツブランド『CW/CD』を紹介したい。

「いつでも着たい、いつでも着られるTシャツ」をコンセプトに今夏始動したCW/CDは、IT, Web業界で活動してきたディレクターのtakuroさんと、ファッション業界で自身のブランド(semoh)を運営しているデザイナーの上山浩征さんによるサブスクリプション(定期購入)型のTシャツ・デリバリーサービスだ。インタビューでは、このプロジェクトを運営する2人に、話を聞いた。

CW/CD ディレクターのtakuroさん

課題を解決するために生まれたTシャツ

CW/CDは、ディレクターのtakuroさんが普段抱えていた課題を解決したいという想いから生まれたのだという。「普段、『シンプルでおしゃれな洋服を着たい』という気持ちはあるのですが、仕事もプライベートも忙しい毎日を過ごしていると、買い物に行けなかったり、正直どこで何を買えばいいのかを考えるのも大変です。以前、友人に『いつも同じTシャツを着てるね』と言われてハッとすることがありました(笑) Tシャツを選ぶときは着心地を重視していますが、着心地が良いかどうかは大体買った後に気づくことが多いですし、気に入ってリピートしたくてもどこで買ったかわからないとか商品自体無くなっていたりすることもあって……そういったことも解決したいと思っていました」

一方で、デザイナーの上山さんは、このサービスを始めることは「挑戦」だと話す。「僕はもともとサブスクリプション・サービスに興味がありました。洋服はsemoh(自身のブランド)を作っているので、何かやるのなら洋服以外でと考えていたのですが、『使い捨てじゃない無地のTシャツ』を存在させるために、かなり挑戦になるけれどやってみようと思いました」  

上山さんは、洋服に限らずとも現代のものづくりと消費者意識について常々違和感を感じてきたという。「元々洋服は着られる期間が長いものだけれど、それを短くしているのが今の社会の仕組み。使い捨て意識の、要は『今年着るためだけの洋服』というものの割合が多くなってきているので、それを原点に戻すという考えです。活動としてはとてもシンプルですが、ビジネス的には難しいところに挑戦してみようと」

色はBlackとWhiteの2色、各3サイズ展開。リラックス感のあるシルエット。首周りや袖口の縫製はしっかりとしている。

綺麗に長く着るためのクオリティ

上山さんのデザインする『使い捨てじゃないTシャツ』は、素材と縫製クオリティにこだわりがある。素材は天然素材である綿。いわゆるTシャツの中では少し細い糸を使うことで、最初から生地に柔らかさが生まれ、洗濯をすることでさらに柔らかくなるけれど、”ヨレヨレ”にはならないのだという。実際に着てみるとふわっと柔らかく心地よい肌触りだ。

「Tシャツで重要となるシルエットは、身体を通す部分の伸縮性や幅の広さを考慮し、着やすさと見栄えが両立できるよう、カットソーの縫製クオリティが高い日本の工場のご協力のもと作っています。あとは、例えば雑な洗い方をした時にどれくらい伸びるかといった、強度を保ちながらも硬くならないような着地点。袖や裾先の一部分だけが伸びることを防ぐための縫製を行なっているので、生地全体が柔らかく経年していきます。綿100%にしたのは、吸水性が高く通気性も肌触りも良い。より自然であることも理由ですが、それが一番無理のないことでもあるからです」

例えば、無地のシンプルなものだから安く手軽なものを選んで購入しても、何度か洗濯するうちに色褪せたり形が崩れたりして、すぐに一枚では着られなくなってしまった経験はないだろうか。Tシャツを20~30枚持っているというtakuroさんは、それらを「一軍、二軍、三軍」と呼び使い分けているという。「人前で一枚でも着られる『一軍』、一枚だと心もとないけれどジャケットの下やインナーとして着られる『二軍』、あとは人前では着られなくなって部屋着になる『三軍』です(笑)なんだかんだで、二軍から三軍にするまでに粘っちゃうんですよね…」

上山さんは、なんと過去にTシャツを着ること自体を辞めた経験があるのだそう。「理由はすぐに古くなって着れなくなるから。いまはまた着るようになりましたが、そういった時期を経て作るものは、自分でも着たいと思うTシャツですね。そういう意味でもCW/CDのTシャツは、takuroくんの言う経年とともに変化するポジション——一軍から二軍までの期間が長いものだと言えます。最終的には雑巾ないし捨てることになるけれど、そこにいくまでの道のりが長い、息の長いTシャツです。綺麗な状態のものを長く着てもらえますし、雑に扱って擦れていっても、部屋着になる。服のわかりやすいプロセスを、このシンプルなTシャツで表現しました」

CW/CD デザイナーの上山さん

領域の違う2人だからできること

takuroさんはIT、上山さんはファッションと、それぞれ違う道を歩んできた2人が組むから生み出せた価値もある。「生地と縫製に、洋服屋目線でのしっかりとしたクオリティを保ちながら、コスパが良い。毎月継続的に購入してもらうことを前提とした金額設定になっているので、通常であればこの金額では購入できないと断言できます」と上山さん。単純にものの価値としては、1枚購入するだけでお得だと胸を張る。

「『洋服作り』という、時代が変わっても変わらない、人が手を動かして作るアナログとITを組み合わせることで、一番シンプルなことをやる。洋服とオンラインを組み合わせて、リアルな日常生活に取り入れてみるだけで、ひとつの買い物ですけど、生活の引き算ができる。自信を持つために余計なものを省くことができると思います。コスパの良さにのって、毎月付き合って”愛着を持てるただのTシャツ”に出会っていただけたら嬉しいですね」
 

CW/CD

CW/CDは、サブスクリプション(定期購入)型のサービス。
コンセプトである「いつでも着たい、いつでも着られるTシャツ」を提供している。Tシャツは白と黒の2色、サイズは3サイズ展開。
会員登録をして定期購入いただいたユーザーの方に、毎回買い物に行かなくても定期的に着たいTシャツをお届けする。Webサイトでは、定期的に会員・購入者限定のコンテンツを配信中。

Instagram:CW/CD