90年代から活躍し続ける アメリカのプロのスケートボーダー Elissa Steamer(エリッサ・スティーマー)はスケート界でもビッグな存在として知られるが、昨年話題を集めた、映画「スケートキッチン」などでこの数年のスケートカルチャーに新しい波を感じさせるのは、ミレニアル世代のガールズスケーター達の存在。彼女たちはどのようにしてスケートに惹かれていったのか。アムステルダムのガールズスケータークルー 「FOEF」 の2人に話を訊いた。

左がYAEL、右がPASCALE

早速ですが、2人はどういうきっかけでスケートボードをはじめましたか?

YAEL:小さい時にアメリカの映画「ロード・オブ・ドッグタウン(Lords of Dogtown)」を見てから、ずっとスケートに憧れていて。それまではずっとスケートをやりたいと思ってたんだけど、スケーターは男の子しかいなかったからはじめづらかった。滑ってみたりはしていたんだけど、仲間がいなかったから続かなかった。あるとき意を決して、オリンピアパークに行ったんだけど、みんなの邪魔にならないように隅で練習してた。

PASCALE:スケートはずっとやりたかった。かっこいいと思ってたし。でも一緒にやる人も教えてくれる人もいなかったから、最初長い間は1人でやってたかな。それが変わったきっかけは、このパークでインターンを始めたこと。それで、1年半前にガールズナイトをやりはじめてから初めてガールズスケーターと出会えた。

一緒に仲間がいないと、なかなか楽しみづらいですよね。最初はガールズスケーターを集めるのも大変だったのでは?

PASCALE:そうですね。でもやっぱりSNSが大きいかな。身近にガールズスケーターがいなくても、SNSを見ればいろんな人を知ることができて。そこで1人じゃないんだと思えた。それに、最初にガールズナイトのイベントをやったときは、オランダ中のガールズスケーターをインスタで探して、1人1人DMを送ったの。ここに来て一緒に滑ろうって。そうしたらたくさんの女の子が来てくれた。

YAEL:私も、アムスに来てガールズナイトに来てからガールズスケーターの仲間ができた。それからはスケートが何倍も楽しくなって。それからはいつも仲間と一緒にいる。

なるほど、現代ならではの仲間のつくりかたですね。そのメンバーが、「FOEF」?

そう。いまは基本メンバーは5人で、いつもみんなでスケートして、パーティしてる。たまには男子に混ざったりもするけど。

いまはZINEを通しての発信も。

PASCALE&YAEL:沢山の人たちとつながるようになったんだけど、やっぱりまだ多くは男子だったから、ガールズコミニティを育てたかった。それに、FOEFメンバーはクリエイティブなことが得意で、それまでにたくさんの写真を撮っていたから、それを形にしたかった。内容はスケートだけにはしたくなくて、ライフスタイルに着目していて。ファッションやパーティー、全てを含めてスタイル。スケートカルチャーが私たちにくれたもの、”友情”や”自己肯定感”などを発信できたらいいなと思ってる。

現在2号目の制作中と聞きました。

PASCALE:そう、最初の号は4月に出して、2号目はバルセロナへ行って作ったの。友人の繋がりでイライザって子と知り合って。イライザは「ローラーズマガジン」という雑誌をやっていて。そこにはガールズスケーターのコミュニティがあって、彼女たちのコミュニティをきっかけに、ポルトガル、フィンランド、ブライトンなど色んなところから来た人たちと出会えた。

ZINEを発行していく上で大変なことは?

やっぱり、利益になることじゃないから費用の面は難しかった。でも、このパークの同僚にポラロイドでも働ている人がいて、その人の繋がりでポラロイドからサポートを受けたり、ナイキも支援してくれてる。印刷代、紙代、リリースパーティの費用まで出してくれて。でも中身は全て自由につくらせてくれた。撮ったフィルム写真は、バルセロナに知り合いの女の子たちがラボを持っていて、そこへ送って安く現像してもらっているの。女の子たちだけで作ってるっていうのもとてもいいよね。

ZINEを作ったことによって、周りに起きた変化や、2人自身が変化したことはありますか?
自分たちをより表現できるようになった。そしてジンづくりに参加した全員が、それをつくる過程でコラボレーションなどをしてクリエイティブな感性を高めることができた。

カルチャーとしてのスケートが生き続ける一方で、最近はコンテストが話題になったりもしているけどそれについてはどう思う?

PASCALE:私たちはストリートスケーターだから、コンテストに出たりはしないんだけど、私は一応コンテストは見てる。

YAEL:私は見てない(笑)コンテストは見てない人が多い気がする。それよりビデオパートの方が見たいよね。

2人にとってのアムステルダムって?

とてもインターナショナルで寛容な場所。みんなが家族のようで、助け合って、一緒に楽しんでいるの。みんな違うバックグラウンドでも関係ない。誰でも受け入れてくれるのがアムステルダム。いつか日本にも行ってみたいな。他にはコペンハーゲン、マルメ、ベルリン辺りにも行きたい。

今後の展望は?
はっきりとしたプランはなくて、ただ、楽しいと思うものをつくり続けていきたい。それを好きになってくれる人がいればさらに嬉しい。Tシャツとかはつくろうって話はしてるところ。

これからを楽しみにしてます。他のガールズスケーター達に伝えたいことはありますか?

スケートをするのが怖くても、やりたかったらまずやってみること。年齢も関係ないし、楽しかったらとにかくやり続けていけば、ぜったい仲間が見つかるはず。仲間が見つかればもっと上手くなってもっと楽しくなる。転んでも立ち上がっていこう。


Photos by Takanobu Watanabe

TAKANOBU WATANABE

デンマーク在住・映像作家
東京で出版社に勤務した後、映像作家に転身。2018年よりデンマークを拠点に移す。
オンラインマーケターとしての仕事をする傍ら、ドキュメンタリーをメインとした制作活動を行っている。

HP:https://www.takanobuwatanabe.com/