写楽の浮世絵や歌舞伎の隈取、“トーキョー”とカタカナで書かれたグラフィック、日本の武将の家紋を落とし込んだインフィニティのマーク −−馴染みのある日本文化を、現代的でキャッチーなデザインに落とし込み、Tシャツやパーカーなどを展開するチャリティブランド SAMURAI CUT(サムライカット)から、“PEACE INVADER(TOKYOに降り立った平和の侵略者)”をテーマとした、新たなピースが2月22日(金)より発売される。

SAMURAI CUT(サムライカット)は、人々がファッションとチャリティを通して、世の中で起きる様々な出来事について考えるきっかけを作り、戦争のない平和な世界を目指すことを目的とした、東京発のアパレルブランド。全てのアイテムの売り上げの一部が、世界の課題解決に取り組む4つの団体へ寄付される仕組みになっており、購入者がその寄付先を「選べて」「残せる」というのが特徴だ。

昨秋、写真家のRUMI MATSUZAWAと共に企画した、チャリティイベント「YES.」を開催。彼らの趣旨に賛同したアーティスト達と共にポジティブなエネルギーを発信し話題を呼んだ。

今回は自らの個性と創造性で、全く違う業界から新たなチャレンジへと踏み出した、SAMURAI CUT JAPAN, Inc.代表の藤本純平さんにお話を伺った。

チャリティブランドSAMURAI CUTについて教えてください。

SAMURAI CUT(サムライカット)は、人々が他者を思いやる気持ちを持って助け合うことや、世の中で起きている物事について問題意識を持つきっかけをつくることを目的としたブランドです。Tシャツやパーカーなどのアイテムを展開していて、その売上の一部を、購入する人が選んだ団体へ寄付できる仕組みになっています。アイテムが売れることによる利益を重視するのではなく、あくまで、僕たちのマインドが世の中に広がることを重視することをブランドの軸としており、僕たちのプロダクトやイベントを通して、チャリティに今まで興味のなかった人たちにもアプローチし、僕たちのマインドに触れていただく。そんなブランドを目指しています

活動はいつ頃からスタートしたのでしょうか?

2017年の8月頃からウェブでの販売を始めました。まだブランドとしては発足して1年半くらいです。ブランドを始める前は、僕はもともと全く違う業界で働いていたので、服の作り方やデザインなどを一から学ぶためにカナダに渡り、ファッションブランドを展開している友人のところで住み込みをしながら修行しました。その後、帰国して会社を作り、本格的にブランドとしての活動を始めました。

人生でやりたいことをやろうと思っていてもなかなか行動に移せない人も多いと思うのですが、会社を辞めてゼロからチャレンジしようと思ったのはなぜですか?

僕は自分の人生をどう進もうかと考えるときに、毎回立ち戻る考え方が2つあって。
ひとつは、「やらない後悔よりもやる後悔」。自分が80歳になったと仮定して、自分の人生を振り返るんです。そして、その時に、ああすれば良かったと思うような選択肢はとらないようにしていて……。もし、仮に長生きしたときに「若い頃にやりきったな」って思いたいんです。後悔するくらいならチャレンジ、みたいな。

もうひとつは、「今を生きる」ということ。プロセスすらも楽しみながら生きたいので、遠い未来の姿や結果にこだわり過ぎずに生きようとは意識していますね。先ほどお話しした考え方と矛盾したり重なったりする部分もあるのですが。

一般的に、3-5年後の目標やキャリアの話を語る人も多いと思いますが、実際、5年後の世の中がどうなっているか、自分が何しているかなんて誰にもわからないと思うんですよね。5年後にどうなっているかも分からないのに、将来的な目標や結果を追い求めて、今を我慢する生き方は、私には合わず。それぐらいなら、どんなにチャレンジングであっても、プロセスも楽しめる環境にすぐに飛び込みますね。その2つの考え方が当時私の頭の中にあったSAMURAI CUTのビジョンと合致したので、会社を辞めて、この活動を始めることにしました。

新しいことを始めることに不安はなかったですか?

もちろん、遠い将来のことを考えたら不安になります。それは、会社にいても同じこと。でも、目の前の1日1日に全力に取り組んで、楽しむことができれば、そういう不安も感じなくなってくると思っています。お金も不安の種になる要素だとは思いますが、幸い僕はお金がたくさんはなくても楽しめるタイプ。お金があることで楽しめることももちろん多いかとは思いますが、お金は増やせても、時間は増やせないので、将来のお金のことを考えて不安になるよりも、今やりたいことをきちんとやり切った方がいいと思っています。自分もまだまだ出来ていないですが、もっと“今を生きなきゃ”と思っています。

チャリティブランドSAMURAI CUTを始めるきっかけは?

会社員として働いていた頃、睡眠時間が3時間くらいの日がずっと続いていた時期があったんです。その当時は右も左も分からないまま、いろんなことを経験して、自分が本当にやりたいことをがむしゃらに探していました。ある日、夜遅くに帰宅して、テレビをつけたら、たまたま戦争の報道が目に留まって。僕は家族の都合や仕事で、海外を転々としており、世界各地に多くの友達がいるのですが、その報道を観たとき、ふと、「なんでこの人たちは戦争をやっているのだろう」と素直に疑問に思いました。その瞬間にこの疑問を解消しないと気が済まない衝動に駆られました。

ちょうど同じくらいの時期に、自分が生まれてきた意味やヒトとして生きる意味を考えていて。その二つのタイミングがマッチしたことが結果としてSAMURAI CUTを始めるきっかけになりました。

人として生きる意味、ですか?

自分が生まれた理由って考えたりしないですか?とてつもなく広い宇宙があって、大きな地球があって、でも、僕たちはこんなに小さい。僕たちはこの小さな世界で四苦八苦しながら頑張って生きているわけですが、仮に僕たちが全員居なくなったって、宇宙はそのままなんです。何も影響がないんですよ。だから、宇宙レベルで考えたら僕らが生まれたことには意味がないと思うんです。

宇宙からの視点で物事を考えると、私たち人間がとても小さな存在に感じますよね。

そういうことを踏まえて、改めて「生きる意味」を考えてみると、僕は、“自己として”と生きることと、“ヒトとして”生きることは違うと思うんです。先ほど「僕たちには生まれてきた意味がない」という話をしましたが、それは”自己として”の生きる意味を探した場合の観点で。”自己として”生きる分には、別に誰とも会わないで引きこもってひとりでゲームをしたり、バイクに乗って爆音を鳴らして人に迷惑かけたりしても、自分が楽しければそれでいい。そこでひっそり亡くなろうが、トラブルになろうが、宇宙レベルで考えると意味は見いだせないと思っています。そういう”自己として”の生きる意味は無い。

でも“ヒトとして”生きる意味を考えると、別の視点が生まれたんです。というのも、人体って不思議で、簡単に死なないようにできていますよね。死にたいと思ったときにすぐに死ぬことができたらいいじゃないですか。でも体を傷つけたら痛いし、息を止めたら苦しくなる。それは人間の身体がすぐ死なないようにできているからで、それって、一つ生きる意味と捉えられると思うんです。そして更にそれを掘り下げた時に、ヒトがそのようにできているのは種の繁栄のためなのではないかという結論に至りました。自然界も種が絶えないように様々に進化していて、ヒトもその一つなのではないかと。そうなると、種の繁栄のためには、数が減らないことや、ヒトが幸せになっていくことが大切だと考えていて。

なので、戦争がなくなることや苦しい思いをしたり悲しむ人が減ることは、ヒトとして種の繁栄に貢献できることだと思いました。また、自分たちも楽しくて、同時にヒトとしても世の中がポジティブな方向に動くことは、生まれてきた意味として一番充実しているのではないかなぁと思いました。

なるほど。今シーズンは“PEACE INVADER(TOKYOに降り立った平和の侵略者)”をテーマとされていますね。

SAMURAI CUTの思いを宇宙からの目線で発信することをテーマとしています。地球人は同じ惑星の住人同士にもかかわらず、思想、宗教、政治など様々な理由で互いに侵略し合っています。時には命をも奪い合っているこの現状を考え、良い方向へ向かおうというメッセージを込めて作りました。SAMURAI CUTのマインドを持った侵略者がTOKYOに降り立ち、愛と平和のシグナルを惑星全体に発信することがコンセプトです。

SAMURAI CUTの商品を購入する際に寄付先を選ぶことができるそうですが、どのような団体があるのでしょうか?

この活動を始めた時には繋がりが何もなかったので、ゼロから様々な団体を調べました。これまで関係を築いてきた4つの寄付先へ売上の一部を寄付しています。具体的には、医療品の提供を通じてアフリカの人々に当たり前の医療を届ける「AfriMedico」、シリアとヨルダンの2つの国の子供への教育プロジェクト「国境なき子どもたち(KnK)」、東日本大震災より被災者支援活動を続けている「ジャパンプラットフォーム(JPF)」、ウミガメを保護する、オーストラリアの非営利・非政府組織の「Sea Turtle Foundation」です。国籍・人種・宗教・貧富に関係なく、誰も経験しうる課題に取り組んでいる団体さんにお声を掛けさせていただき、一緒に活動させていただいています。また、それぞれの活動内容や活動状況を継続してHPやSNS(TwitterやFacebook)で情報発信を行っている団体さんであることも一緒に活動させていただく上で重要でした。

昨年初めて行われたチャリティイベント「YES.」の反応はいかがでしたか?今後の予定は?

10代後半-20代前半の若い世代もたくさん来てくれて、すごくポジティブな反応があったことはとても嬉しかったですね。イベント当日は寄付先のNPO団体の方々をご招待していたのですが、NPO団体の方とイベントに来てくれた若い世代の人たちが一緒に話しているところを見て、「自分たちがやりたかったことはまさにこれだ」と感じました。今年もイベントを企画しようと思っているので、これまでチャリティに関心がなかった人たちにもアプローチできたら嬉しいです。


SAMURAI CUT
http://samuraicut.com/