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ART & DESIGN

近未来素材ネオプレンを使ったバッグブランド:Witu 創始者でデザイナーのナタリー・ターンブル インタビュー

Neo-futuristic neoprene and the art of timeless design with WITU founder and designer Natalie Turbull

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“ネオプレン”という素材の名前を聞いたことはあるだろうか?主に過酷な屋外環境で使用される合成ゴム素材だ。マリンスポーツで着用するウェットスーツや、関節用のサポーター、車のファンベルトなどに使われている。厚地でクッション性があり、頑丈な素材ではあるが、一般的にバッグブランドを立ち上げる土台としては、理想的とは言えない。しかし、オーストラリアのメルボルンを拠点とするバッグブランド「Witu」は、それを実現した。

イノベーティブで近未来的、それでいて不朽のミニマリズムをもってネオプレンを取り入れており、その名のもとには熱狂的な支持者も多い。いかにして美しいバッグに仕上げるか、という課題に取り組みつつ、荒々しく混沌とした都会での生活においても傷みに耐えられるアイテムを製作している。Wituのバッグが地元メルボルンだけでなく、世界中で日常に欠かせないアイテムとして急速に人気を拡大していったのも当然と言えるだろう。

数年前にブランドを立ち上げてから、Wituはいくつもの進化段階を経てきた。すでにファン基盤が確立されていたため、彼らは比較的スローペースでブランドを構築していった。創業初期から急速に人気が高まっていたことから、これは賢明な判断だったと言えるだろう。

2016年にWituは、艾未未(Ai Weiwei)と、故 アンディ・ウォーホルの展示の一環として、メルボルンにある国立ビクトリア美術館の、限定バッグコレクションを製作した。艾未未はWituの大ファンで、自身の恋人のためにも一点購入したという。

同ブランドの軌跡を知るべく、私たちは、Wituの共同設立者であり、才能あふれるセットデザイナーでもあるナタリー・ターンブルに、ブランドの誕生秘話や日本への愛、2019年以降の展望などについて話を聞いた。

まずは、ご自身について教えてもらえますか?

私はメルボルン出身です。旅に出ることも多いですが、メルボルンに帰ってくるとやっぱりいいな、といつも思います。学生時代は、ヴィクトリアン・カレッジ・オブ・ジ・アーツで彫刻と空間デザインを学びました。

私はアートやデザイン、映画や食べ物など、心がこもっていて、しっかりと目的をもって作られたものが大好きです。なので、日本に行くのも大好きです。日本ではあらゆることが丁寧になされていると感じます。今、私はWituを運営する傍ら、クリエイティブディレクターとして、またセットデザイナーとして働いています。自分の好きなことを仕事にできているので、幸運だと思っています。

Wituをまだ知らない方に、ブランドの理念を教えていただけますか?

Wituは日々使っていただけるものを製作しています。シンプルで、洗練されていて、ミニマルなものを。

Wituがどのようにして誕生したのか、教えていただけますか?

Wituは、私とエリス・ウィルケンの2人で立ち上げました。彼女はすでに経営から離れていますが、ブランド創設時には一緒にたくさんのことを手がけました。当初は、ただ一緒に何か物作りがしたいと考えていて、何度か試行錯誤していました。Wituが生まれたのは、彼女と一緒にニューヨークを訪れてからです。ニューヨークでは、ネオプレン素材を従来(ウェットスーツなど)とはまったく違う用途で使っていたんです。それを目の当たりにし、この素材を使って何か別の形を生み出せるのではないか、という可能性を感じました。

私たちは2人とも爽やかなストリートウェアが大好きでしたが、女性向けのウェアが少ないと感じていました。特に、バッグなどのアクセサリーは少なかったんです。私たちの好きな服に合ったバッグが欲しかったのに、なかなか見つかりませんでした。

当社ではまず、自分たちや友人たちが身に着けたいものを作ることから始めました。これを気に入ってくれる人たちのネットワークがすぐに広がり、オーストラリア国内でいくつかのお店に置いてもらえるようになってからは、どんどんお客様が増えていきました。まだとても小さなブランドですが、私は自分自身や友人のために作ったものだと思っています。シンプルで毎日使える、日々欠かせないトートバッグです。

なぜバッグ製作に専念することにしたのですか?

丈夫で機能的、それでいて美しい普段使い用のバッグは、市場の隙間であると感じていました。ジム用バッグとデザイナーハンドバッグの中間にあるものですね。私は他のものに手を広げる前に、まずは少数のものに絞ってやっていこうと決心したのだと思います。今も他のことには手をつけていません。まだその段階ではないと思っています。

ネオプレンという、非常に特殊な素材を使っていますが、なぜこれを選んだのでしょうか? ネオプレンの美しさとは、どんなところでしょうか?

ネオプレンは素晴らしい素材です。デザインに関していえば、非常に多くの可能性があり、素材としては丈夫で扱いが簡単です。Wituのバッグは、どれも洗濯機で洗っていただけます。製作側としては難しい素材ではありますが、仕上がりが気に入っているので、作るだけの価値があります。

ずいぶん若い時からブランドを始められましたよね!ファッション、小売、アクセサリーのシーンへと入っていく際、その若さが苦労の種でしたか?それともプラスに働きましたか?

いま会社を始めていれば、もっと賢くできたでしょうね。当初からWituに興味を持ってくれる海外のショップも多かったので、もう少しうまいやり方を知っていたら、とは思います。年齢とともに経験も増えますが、若いうちは人生の責任にかかわる障害や制約にとらわれず、自由に飛び込んでいくことができます。ですから、良いことこそあれ、悪いことはなく、発展途上ということですね。

この数年間で、Wituはどのように変化してきましたか?

すべて1人で切り盛りするようになったのが、非常に大きな変化です。まだ慣れていませんし、他の仕事もうまくこなしながら会社を維持していくのは大変です。製作に長い時間がかかっていますが、必ず、そう遠くなく新しいコレクションをリリースする予定です。5年間ほどになりますが、私はとても成長しましたし、バッグに求めるものも変わりました。実はセリーヌなどのデザイナーバッグが大好きなので、Wituの立ち位置について悩むこともありますし、自分たちが身に着けたいバッグを作るという原点に立ち返ることもあります。ブランドが生き続けるスペースを探しながら、今はこんな風に変化していますね。

メルボルンを拠点にしているということですが、まだ訪れたことのない人に、どんな街か教えていただけますか?

メルボルンは、ニューヨークなどの大都市の、かつての姿だと思います。世界の他の地域からとても遠く離れているけれど、多くの支援と偉大なクリエイティブネットワークにより、文化と創造性のハブになっています。人々は素晴らしく、食事も最高、アートはユニークです。住みやすい場所ですが、そのありがたみを忘れないためにはこまめに街を離れることも必要ですね。

日本にも何度か来られていますが、日本のどこが好きですか?

先ほども言いましたが、日本は他の国とは違い、文化的に独特のデザインとクリエイティビティがあります。デザインへの理解はとてもインスパイアされており、細部に目が行き届いているところが非常に気に入っています。何度か行っていますが、またすぐにでも行きたいですね。もし荷物をまとめて、ただ楽しむために世界のどこでも遊びに行っていい、となったら日本に行くかもしれません。住んでしまうとロマンが崩れてしまうかな、とも思いますが、そうはならないような気がするのです。もしかしたら、いつかは、という感じです。

東京のクリエイティブシーンとメルボルンのクリエイティブシーンに、何らかのつながりはありますか?

多かれ少なかれ、間違いなくあると思います。どちらの街にも、クリエイティブな世界の人々にとって、魅力的な部分がありますね。美味しい食事に、デザイン、アート、そして、食べ物ですかね。

Witu以外で、オーストラリアの注目すべきデザイナーやブランドはありますか?

本当にたくさんあります。 Arnsdorfは、仕立てとデザインが普及のクラシックスタイルで、美しいレーベルだと思います。私のお気に入りの洋服ブランドはKlokeです。

お気に入りのWituアイテムもしくはコレクションは?理由も教えてください。

私は毎日、Habitatシリーズの黒いトートバッグを使っています。私はシンプル好きガールなので、見逃せませんね。

2018年以降の展望があれば教えてください。

2018年はもうすぐ終わってしまいますが、現時点ではブランドの進むべき場所と次のステップを確立することが重要です。来年を良い年にするためにも、そこを整理していきたいですね。


WITU website

Nat Turbull website

Lucy Dayman | ルーシー・デイマン

オーストラリア生まれ。2016年、オーストラリア・メルボルンでのカルチャー・音楽雑誌の編集の仕事を辞め、日本で旅をしながら仕事を始める。フリーランスライターとしての仕事と旅の傍ら、フィルム写真を撮影している。
Instagram: @lucy.dayman.
HP: lucydayman.com

Neoprene is a rubber based material typically reserved for rugged outdoor use – think wetsuits, orthopaedic braces, and car fan belts. Thick, cushiony, and robust, it’s one of the last materials you’d typically consider would make the ideal foundation on which to build an accessories brand, but Australian label Witu did just that.

Based in Melbourne, the Witu name has built a cult following thanks to their innovative neo-futuristic, yet timelessly minimalistic adoption of neoprene. Challenging the ideas of what makes accessories beautiful while simultaneously creating objects able to withstand the wear and tear of rough and tumble urban life, it’s no surprise Witu’s bags quickly gained traction as an everyday staple both locally and internationally.

After launching a handful of years ago, the brand has gone through a number of evolutionary stages. Since building on the already established fan base, they’ve taken a little more of a backseat of late. The decision to slow down a little is a considered move given the meteoritic rise to popularity in its early days.

In 2016 the label created a capsule collection of bags for Melbourne’s NGV (Nation Gallery of Victoria) collection as a part of the Ai Weiwei x Andy Warhol exhibit. Ai Weiwei was such a fan of the bags he took one for his girlfriend.

To learn more about what the label has been up to lately, we spoke with Natalie Turnbull who is not only the Witu co-founder but also a talented set-designer. We talked about the birth of the label, her love of Japan and what’s on the cards for 2019 and beyond.

Can you tell us a little about yourself?

I’m from Melbourne originally. I’ve travelled a fair bit but always love coming home to Melbourne. I studied Sculpture and Spatial Practice at the Victorian College of Art.

I love art, design, film, food, anything done with intention and purpose. I love going to Japan, for this reason, it seems like everything there is so well considered. I now work as a creative director and set designer as well as running Witu. I think I’m lucky to do what I enjoy as my job.

How would you describe the Witu ethos to someone who doesn’t know about the brand?

Witu is about creating pieces for the everyday. Simple, refined, minimal.

Can you run us through the origins of Witu?

Myself and Elise Wilken founded Witu. She has since left the business, but a lot of the founding of the brand was done together. At first, I think we just wanted to make things together, so we tried a few things but it was after a trip to NYC together that Witu was born. We had seen the material neoprene over there being beyond the more conventional uses at the time (i.e. wetsuits) and saw the possibility of using this material to create other shapes.

We both loved clean streetwear but felt this was lacking for womenswear, especially when it came to accessories. We wanted a bag that would go with the clothing we liked to wear, and there wasn’t much around.

The company started as a way to create pieces we wanted to wear, and our friends would want to wear. The network of who liked it grew quickly, and after getting into a few stores around Australia, it was reaching more and more people. It’s still a really small brand, but I like to think it’s still something we created for ourselves and our friends. It’s that simple everyday tote bag that you’ll feel a little lost without.

Why did you decide to focus predominantly on creating accessories?

We felt there was a gap in the market for an everyday bag that was sturdy, functional but also beautiful. Somewhere in between a gym bag and a designer handbag. I guess we decided to focus on getting a few things right before expanding to other things, which I haven’t taken off the cards, just haven’t got there yet.

You make your items from neoprene which is a very specific material, why did you choose it? What do you think is so beautiful about neoprene?

Neoprene is a fantastic material. In terms of design, it has so many possibilities, and as a material, it’s so sturdy easy to care for. All of our bags are entirely machine washable. While it’s a harder material to work within a manufacturing sense, we love the outcome, so it makes it worth it.

You started the label when you were quite young! Do you think your age hindered or benefitted your break into the fashion/ retail/ accessories scene?

I think if I was starting now, I would be a lot wiser. We had a lot of interest from overseas stores at the start, ones I wish I had known how to deal with better. Experience comes with age, but also when you are younger, you are so much freer to jump into something without hindrance or restrictions around commitments in life. So it’s good and not bad, but a learning curve.

Over the past few years, how has Witu changed?

It’s been a significant change doing it all myself, I still think I am getting used to that and just keeping it afloat with my other work going well is a challenge. It’s been a long time in the making, but I am definitely due to release a new collection sooner rather than later. I have grown a lot in the last say, five years, so also what I want in a bag has changed. I actually love designer bags like Celine, and so it makes me question where Witu fits in and again go back to the origins of creating bags that we want to wear. It’s changing now in that way, finding that space for the brand to exist.

You’re based in Melbourne, how would you explain Melbourne as a city to someone who has never been?

Melbourne is what the big cities like New York used to be, I think. Just so far away from the rest of the world. But it’s a cultural and creative hub with a lot of support and a great creative network. The people are great; the food is excellent, the art is unique. It’s a nice place to live, but also a place I think you need to leave every so often to appreciate it.

You’ve visited Japan a few times in the past, what is it that you love about the country so much?

As I mentioned above, Japan as a culture do design and creativity unlike any other country in the world. The country’s understanding of design is so inspiring, and their attention to every detail is something I love. I’ve been a few times now and hope to go again soon. If I could pack up and move anywhere in the world just for fun, it would be there. I do wonder if living there would ruin the romance of the place, but I have a feeling it wouldn’t. Maybe one day…

In terms of the Tokyo creative scene and Melbourne creative scene do you see any connections?

In some ways, definitely. I think things that appeal to people in the creative world exist in both cities. Good food, design, art, food.

Are there any other designers/ labels from Australia you think people should keep an eye on?

There are so many really. I think Arnsdorf is such a beautiful label, the tailoring and designs are classic and timeless. My favourite clothing brand is Kloke.

Do you have a favourite Witu item/ collection? Why?

I use my habitat tote in black every day, I’m a simple gal and can’t go past it.

What are your plans for the rest of 2018 and beyond?

The year is almost over, but what’s essential for me at the moment is solidifying where I want to take the brand and what the next steps are. I’m hoping to have that sorted so next year can be a good one.


WITU website

Nat Turbull website

Lucy Dayman

Originally from Australia, in 2016 Lucy left her job as an editor of a culture and music magazine in Melbourne to live, work and travel in Japan. Between freelance writing and traveling, she’s been dabbling in film some very amateur film photography, which you can check out on her Instagram: @lucy.dayman. Check out her other writing work and photos at lucydayman.com

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