コペンハーゲン市内から電車でおよそ2時間、車で1時間ほど北へ進んだ広大な敷地に、Rudolph Tegners Museum & Statuepark (ルドルフ・タイナー彫刻美術館)は存在する。見渡す限りに緑が広がり、牛や羊達がいる丘の上に、現代的でミニマリスティックな建築が現れる。

ルドルフ・タイナーは、20世紀初頭に活躍したデンマーク人の彫刻家。
この彫刻美術館はルドルフ本人により設計され、同じくデンマーク人の有名な建築家・家具デザイナー、そしてレンガ積み職人としての修行経験がある、モーエンス・ラッセンがアシスタントに加わり1938年に造られた。

そこには約200点ものルドルフの作品が展示されており、まるで彼のアトリエ兼住居にでも来たような、彼の世界観をその大自然のある環境も含め体験できる場所だ。

ルドルフは自分と自分の彫刻が、周辺には何もなく孤独感すら感じるこの場所に呼ばれているようなインスピレーションを受け、ここに自身で美術館を設計し多くの彫刻作品を収容した。

建築には、火災が起きないようにとコンクリートを選び、より自然を身近に感じられるようにと天井にはガラスを用いて造られている。外の日の光が差し込み心地よい空間だ。

若かりし頃にギリシャやイタリアを旅したというルドルフは、ミケランジェロの作品に影響を受けた。彫刻に近づいて行くと、そこから感情の波が伝わって来るような躍動感がある。

ルドルフの作品は、ただただ美しいものばかりではない。
彼の作品の中には、想像しきれないような表現や大胆で少し強烈なイメージすら受けるものもあり、一目見るとその異様さに引き込まれていく。ルドルフがどういった人物だったか、とても知りたくなるような。その強烈で時に暴力的で大胆な表現が、デンマークではしばしば物議を醸していたそうだ。

かなり大きい作品もあり、サイズ感がその異様さをさらに引き立てる。

美術館の外にも作品は点在している。
時間が止まったように感じる美術館の中で見る彼の作品と、遠くに牛がいたりする丘の上で見る作品は、また違った印象を受ける。そして作品を見て回りながらこの場所の魅力にも気づかされる。

休憩したくなったら、美術館の裏にはカフェがあるのでここで休憩。
美術館の凛とした冷たさとは裏腹に、とてもほっこりとする佇まい。コーヒーはいくらでもおかわり自由だからね! と言って、おかわりのコーヒーを入れて周る店主。飲んだカップはみんなカウンターへ戻す。人の家にお邪魔しているような感じが、なんともデンマークらしく心が温まる。

コペンハーゲンには素敵な美術館がたくさんあるが、この美術館は市内から少し遠いこともあり、ローカルの人々の間でもそこまで知られていないようだ。混み合うことがないので、ゆっくりと作品と向き合うことができる。

ルドルフ・タイナーについてもっと知ってみたくなったものの、英語での映像や本は出版されておらず、多くの情報も残されていないらしい。この場所に行って、感じるしかないようだ。


Rudolph Tegner Museum
Museumsvej 19, 3120 Dronningmølle, Denmark
営業期間:4月半ばから8月まで

NATSUKO

モデル・ライター
東京でのモデル活動後、2014年から拠点を海外に移す。上海、バンコク、シンガポール、NY、ミラノ、LA、ケープタウン、ベルリンと次々と住む場所・仕事をする場所を変えていき、ノマドスタイルとモデル業の両立を実現。2017年からコペンハーゲンをベースに「旅」と「コペンハーゲン」の魅力を伝えるライターとしても活動している。
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