ロシア唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」廃艦か 浮きドック沈没、改修できず

Ministry of Defence / Wikimedia Commons

 ソビエト連邦時代に建造された重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は、ロシア連邦海軍で現在保有する唯一の空母だ。老朽化が進むことから運用の限界を指摘する声も出るなか、改修作業による延命が試みられている。しかしドック入りした同艦を待っていたのは、クレーン落下による甲板破損という悲劇だった。代替補修施設の目処は立たず、スクラップ場行きとの観測も出ている。

◆クレーン直撃
 クレーンの落下事故が起きた昨年10月、アドミラル・クズネツォフはロシア北西部の町・ムルマンスクに停泊していた。改修作業のため、船体ごと水上で浮上させる「浮きドック」入りしていたところを、70トン級のクレーン2基が落下し甲板を直撃した。甲板には直径4.5メートルほどの穴が開いている。事故の原因は作業中の停電だとされているものの、国営の電力会社は、送電は正常だったと主張している。

 アドミラル・クズネツォフは2016年と2017年、シリア政府軍支援のため地中海に展開していた。2016年には帰路の運河航行中に煙を激しく噴出し始め、ロシア空軍が緊急発進する事態を招いた。昨年の改修作業は1997年以来の大規模なもので、その内容は懸案だったボイラーの交換・補修に加え、フライトデッキおよびハンガーの改良から指令機能の強化まで多岐にわたる。本来であれば2020年ないしは2021年に全工程を終える計画だった。

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Text by 青葉やまと