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中国の圧力? 撤回され憶測呼んだASEANの“共同声明” 南シナ海問題に「深刻な懸念」

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中国の圧力? 撤回され憶測呼んだASEANの“共同声明” 南シナ海問題に「深刻な懸念」

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の外相らは14日、中国雲南省で特別会合を行い、南シナ海問題について話し合った。だが終了後に予定されていた共同記者会見はキャンセルとなり、共同声明も発表されなかったことから、話し合いは物別れに終わったとの観測が広く持たれた。さらに、ASEANサイドだけで発表した共同声明は、名指しは避けながらも、南シナ海での中国の行動に対して、異例の強い語調で「深刻な懸念」を表明するものだった。ところが、この声明は発表された数時間後に「修正が必要」として撤回された。中国から圧力がかかったのではないか、との憶測を呼んだが、さまざまな報道が飛び交っており、事態は複雑なようである。

◆協調を望む中国、懸念を表明するASEAN
 南シナ海での中国の主張をめぐって、フィリピンはオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に仲裁を申し立てている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、その判断は数週間以内に下るものとみられている。中国はその判断には従わないことを公言しているが、判断を前にしたこの時期、中国には今回の会合で、ASEANとの結束を強調しておく狙いがあったようだ。ブルームバーグによると、中国の王毅外相は、この会合は「タイムリーかつ重要な戦略的対話」だと評していたそうである。日本経済新聞によると、会合は直前に開催が決まったもので、中国には、ASEANに経済協力を示し反発を和らげる狙いがあるとみられていたとのことだ。

 WSJがASEANの外交官らの情報として伝えるところでは、この会合は、今年2月のASEAN外相会合で最初に提唱されたもので、マレーシアが、南シナ海での最近の展開をめぐるASEANの懸念を表明する場として提案したそうだ。

 ASEAN側の共同声明とされたものについてAFPは内容を伝えているが、それを見ると、会合では実際に、ASEAN側から中国に対して「深刻な懸念」が強く表明されたようだ。AFPによると、会合ではASEAN側と中国の外相間で「率直な意見交換」があったが、これは激しい外交的やりとりをほのめかす言葉であるという。

 WSJは声明の内容について、争議解決では国際法を尊重するようASEAN外相らは強く主張したが、これは、中国政府が仲裁判断受け入れを拒絶していることへの、うっすらとぼかした非難の言葉だ、と語っている。

◆ASEANらしからぬ、南シナ海問題でまとまった共同声明?
 ASEANが共同声明としてこれらを主張したことは、ASEANらしからぬ、異例のものだという印象を引き起こしたようだ。

 ASEAN加盟10ヶ国の中でも、南シナ海問題に関し、中国に対する姿勢には温度差がある。当事国として島などの領有権を争っている国もあれば、中国の経済的影響が大きく、親中国的な姿勢を固守している国もある。そういった事情もあり、これまでASEANは南シナ海問題について共同声明を取りまとめるのに苦労してきた。共同声明の発行には、10ヶ国全ての合意が必要だ。ブルームバーグやAFP、WSJなどさまざまなメディアは、この歴史と、今回の共同声明を対照的に捉えている。WSJは、ASEANがこの共同声明を出したことについて、中国政府に対抗する団結を異例にも示したものと述べた。

 さらに、その内容も、名指しこそしないものの、はっきりと中国の行動に注文を付けるものだ。AP通信は、加盟国間の分断を考えると、地域の問題についてこのような強い文言を使用するのはASEANにとって異例だと述べている。

 この声明は、中国がいくつかのASEAN加盟国に圧力をかけようと試みていることを含めた、中国の最近の行動への不満を反映していたと、この会合に通じている東南アジアの1国の政府当局者がブルームバーグに語っている。

◆発表から約3時間後に撤回
 だが、この共同声明も、ブルームバーグによると発表から約3時間後、緊急に修正が必要だとして撤回された。AFPによると、声明を発表したのも、撤回を発表したのも、マレーシア外務省だったという。AFP、AP通信などによると、声明は14日夜、同外務省がネットのチャットグループに出したものだそうだ。それ以上の説明はないが、報道関係者が使っていたものだろうか。

 マレーシア外務省の報道官は、ASEAN事務局がその声明の発表を承認していたが、その後、同国外務省に撤回を通知してきたと語っている(AFP)。

 なお15日夜の時点で、修正後の共同声明は発表されていない。WSJによると、あるASEAN加盟国の上級外交官が、撤回後、ASEANは共同声明を出さないことを決定したが、加盟国は、望むのであれば、個々に声明を発表することになる、と語ったという。シンガポールやインドネシアは撤回前に、この共同声明と同趣旨の声明を発表していた。ベトナムは撤回後、共同声明をなぞった声明を発表したそうだ。

 この件に関して、さまざまな報道が乱れ飛んだ。まず、この共同声明は、中国の圧力によって撤回されたという説である。ブルームバーグの上述の政府当局者は、ASEAN外相らは当初、その声明に合意していたが、中国がASEANの今年の議長国のラオスに働きかけた後で、その声明は撤回された、と語っている。

 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙によると、中国外務省の陸慷報道官は15日の定例会見で、中国はASEANのどの国にも、共同声明の撤回について圧力をかけていない、と語った。もっとも、中国はそもそも、これは共同声明ではなかったとの立場である。AFPによると、同報道官は「わが国はASEAN側に確認したが、AFPが報じた声明なるものは、ASEANの公式文書ではない」と語っていた。

◆「共同声明」とされたものは実は……
 それでは、あの文書は一体何だったのか。その説得力ある説明は、AFPの新たに現れた記事に見られる。それによると、マレーシアが発表した文書は、単に、ASEAN外相が会議後の記者会見で参照するための「メディア・ガイドライン」であり、合意を経た最終声明ではなかった、というのだ。これは、インドネシア外務省Arrmanatha Nasir報道官がAFPに明かしたとのことである。

 Nasir報道官によれば、会合が予定より長引き、そのせいで「(共同)記者会見がキャンセルとなり、多数のASEAN外相はすぐに去らなければならなかった」という。さらに「ASEAN外相には、メディア・ガイドラインの内容をどのようにメディアに発表するかについて、話し合う機会がなかった」とのことだ。マレーシアはこの文書の位置づけを間違えて発表した恐れがある。

 中国の王外相が行った記者発表は、予定より5時間遅れて行われた。王外相とともに、今回の会合の共同議長だったシンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相が、予定では共同で発表をするはずだったところ、同外相は帰国便に乗らなければならなかったため、それをキャンセルした、と中国外務省は語っていた(WSJ)。それとも整合する。

 それでは、共同記者会見が行われなかったことなどから生まれた、「会合で中国とASEANは物別れに終わった」という観測は、根拠のないものだったのだろうか。そうではないようだ。共同声明はどうやら幻のものだったようだが、内容自体はASEAN全体のお墨付きを得たもののようである。さらに共同議長国シンガポールなど、個々の国が出した声明の中で、ASEAN側が中国に「深刻な懸念」を伝えたことは明らかにされている。毎日新聞は、ASEANが中国との直接協議の場で懸念を伝えるのは異例だとしている。

(田所秀徳)

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