「現代の奴隷」世界に4600万人、日本にも… 搾取を止めるために我々にできることとは?

 今や奴隷制度を合法としている国はないが、人身売買、強制労働などの「現代の奴隷制度」は、途上国を中心に世界各地に蔓延しているのが実情だ。このような違法な搾取を止めるのに必要なのは、消費者の意識と経済体制の改革だと海外の識者が訴えている。

◆過去のものではない奴隷制
 オーストラリアの富豪、アンドリュー・フォレスト氏が設立したウォーク・フリー財団の調査による『Global Slavery Index』によれば、世界167ヶ国で4580万人が奴隷状態で暮らしているという。シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH)は、「現代の奴隷制度」とは脅迫、暴力、威圧、だましなどのため、人が搾取され、その環境から逃れることができない状態を指すとし、隠れた犯罪だと説明している。人身売買、強制的婚姻、強制労働、借金による束縛がその例だ。

 アトランティック誌によれば、奴隷制度はモーリタニアが1981年に廃止したことで、表向きは世界から姿を消したことになっているが、いまだにすべての国で見られ、圧政が続く、または人権が守られていない貧しい国々では、当たり前のように行われているという。現代の奴隷と化している人々の58%は、インド、中国、パキスタン、バングラデシュ、ウズベキスタンに住んでおり、インドだけでも1840万人もいる。多くが農業、漁業、製造業、建設業に従事し、女性や子供が性的労働や強制的な結婚を強いられるケースも広く見られるとのことだ(Global Slavery Index)。

 人口比で最悪なのは北朝鮮の4.4%で、次いでウズベキスタン4%、カンボジア1.6%、インド1.4%、カタール1.4%と続いている。ちなみに日本において現代の奴隷とされる人の数は29万200人と推定され、人口比で0.228%となっている(同)。

◆知らない間に奴隷制に加担?
 娘に人身売買の話を聞いたことがきっかけで、現代の奴隷制撲滅に取り組むようになったフォレスト氏は、データなしでは解決策は探せないというビル・ゲイツ氏の言葉に背中を押され、『Global Slavery Index』の調査を決めたという。

 フォレスト氏は、地元オーストラリアの「現代の奴隷」は4300人で世界でも下位に位置づけられているが、奴隷制のホットスポットとなっている国で作られた商品を買うことで搾取に加担してしまう、とSMHに説明する。だからこそ、個々の消費者は商品を買う際に、それがどこから来たものなのか、強制労働によって製造されたかどうかを尋ねるべきだと述べ、もし店側が答えられず気まずい沈黙となれば、それが経営者に伝わり、最終的に客の不安を取り除こうという動きにつながると主張する。

 同氏はまた、見て見ぬふりをする企業も多いと指摘し、ビジネスリーダーたちが表に出て来ることができ、積極的に奴隷的労働を見つけ廃絶した場合、メディアにおいて公表されるような環境を作っていくことが、政府にとって最良の方法ではないかと語っている。

◆奴隷制の撲滅には資本主義が必要
 フォーブス誌に寄稿したアダムスミス研究所のフェロー、ティム・ウォーストール氏は、「資本主義は我々を単に賃金の奴隷としてしまう」という主張もあるが、資本主義こそが奴隷制度を撲滅するものだと述べる。

 同氏は『Global Slavery Index』の数字を見れば、現代の奴隷はGDPとの関連性が強く、ほぼ世界で唯一のスターリン主義国家として残る北朝鮮は例外とし、貧しい国ほど奴隷的搾取が多いことが分かると指摘している。また、経済発展の定義は人の労働がより生産的になることであり、その国が発展すれば、生産性の低い強制労働は、単なる不十分な方法になってしまうとも述べる。結論として、解決策は貧しい国を豊かな国に育てていくことだとし、市場、資本主義、貿易の拡大が必要だとしている。

Text by 山川 真智子