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韓国当局が異例にも北朝鮮軍幹部の亡命を認めたのはなぜか? 相次ぐ脱北の発表の背景とは

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韓国当局が異例にも北朝鮮軍幹部の亡命を認めたのはなぜか? 相次ぐ脱北の発表の背景とは

 韓国ではこの数日、2件の脱北が立て続けに大きな話題となった。1つは、中国にある北朝鮮レストラン従業員13人の集団脱北、もう1つは、北朝鮮軍の対韓国工作活動を担当する中核組織、偵察総局幹部の脱北だ。どちらも意味するところは大きく、韓国メディアは対北朝鮮制裁の効果や、金正恩体制の揺らぎを指摘する。だがどちらの件でも、政府当局の発表に異例の面があったため、与党セヌリ党が13日の韓国国会議員選挙に向け、選挙対策のアピールとして用いたとの見方が韓国内外のメディアから聞かれる。

◆制裁の影響で上納金が出せず、処罰を恐れて脱北を決意か
 北朝鮮は外貨獲得のため、自国民を海外の北朝鮮レストランに派遣して働かせている。その際、亡命の危険性が低い人物を選抜している。韓国の中央日報社説によると、北朝鮮レストランの従業員は中産層以上で教育も受けたエリート家庭出身者がほとんどだという。中央日報の別記事によると、北朝鮮は外貨稼ぎのために海外に派遣する場合、「出身成分」が良い人の中から思想検証などの厳格な手続きを踏んで選抜するという。「出身成分」というのは北朝鮮に存在するとされる身分制度で、出自によって体制への忠誠度が異なることを想定している。

 さらに北朝鮮当局からは監視員が派遣される。対北朝鮮消息筋の言として中央日報が伝えるところによると、「保衛部員(監視員)は北の住民の中でも党性が最も強い人物」であり、「特に海外に派遣する保衛部員は何度も検証をして脱北の心配がない人物が選抜される」という。にもかかわらず、韓国政府当局者(上記消息筋とは別人)によると、今回の集団脱北を主導したのは、他ならぬその監視員だったとのことである。「保衛部員が脱北を主導したというのは驚くことだ」とこの当局者は語っている。

 集団脱北は、相互監視のシステムや監視員の存在のため難易度が高く、今回のものが金正恩体制では初めてのものだ。だが、中央日報によると、今後は同様の集団脱北が相次ぐ可能性が高いという。

 レストランの監視員・従業員は、北朝鮮当局に対する一定の上納金、また時には追加の上納金を義務として課されている。任務を完遂できない場合は厳しい検閲と処罰が伴う、と中央日報社説は語っている。これが現在、非常に重い負担としてのしかかっているようだ。

 聯合ニュースによると、韓国政府が、各国にある北朝鮮レストランの利用自粛を勧告し、現地の韓国系住民も利用を控える運動を展開したことで経営難に陥り、廃業する店が相次いでいるという。もともと韓国人観光客の利用が主だったようで、カンボジアの首都プノンペンにある店舗の場合では、8~9割が韓国人観光客だったそうだ。

 韓国統一省によると、今回の集団脱北者の女性が「対北制裁が強まり、北の体制にもう希望はないと考えて、希望があるソウルに脱出することになった」と語ったという(中央日報)。

◆軍関係者ではこれまでで最も高い階級の脱北者
 また11日には、北朝鮮の偵察総局の大佐が昨年韓国に亡命していたことを「北朝鮮の事情に精通した消息筋」が明らかにした、と韓国の聯合ニュースが報じた。この報道を受け、同日、韓国国防省と統一省の報道官が、亡命は事実だと認めた。

 聯合ニュースによると、偵察総局は北朝鮮の軍事的な挑発行為を含む韓国工作を総括する主要機関。金正恩第1書記に直接報告することができ、軍の中核組織と言える、としている。偵察総局の大佐は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の一般部隊の中将に相当するそうだ。

 その偵察総局大佐による脱北は、軍関係者ではこれまでで最も高位の人物の脱北だという。聯合ニュースによると、「大佐は偵察総局の対韓国工作業務に関し詳細に供述したようだ」と上述の消息筋が語ったそうだ。また朝鮮日報は、北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋が、「この大佐は、気が変わりやすい金正恩第1書記の下で働いていると、いつ命を失うか分からないという危機感を日頃から持っていたため、亡命を決意したと聞いている」と述べたと伝えている。

◆恐怖政治の反動か。脱北を決意する人たちが増えている
 北朝鮮のエリート層では亡命の動きが活発になっているようである。東亜日報は、国家情報院国家安保戦略研究所のコ・ヨンファン副院長が、「最近、海外の北朝鮮公館の職員や駐在員の中には、子供の教育のために亡命を選択するケースが増えている」と語ったことを伝えている。同紙は、北朝鮮に戻れば子供の将来がないと考えて亡命を選択するケースも増えている、と語っている。

 また、2013年12月に金第1書記が叔母の夫である張成沢氏を処刑した後、多くの公館職員や駐在員が召還され、収容所に送られたり処刑されたりしたが、それ以降、「疑わしい召還令」を受ければ北朝鮮に戻らないと決心する公館職員や駐在員が多くなった、とコ副院長は語っている。

「北朝鮮公館の職員や駐在員の間で、北朝鮮のために命を捧げて働く価値があるのかという懐疑が大きくなっている」とコ副院長は語ったそうだ。

 また脱北者全体でも、今年1~3月は前年同期に比べて大幅に増加したという(聯合ニュース)。金第1書記が中朝国境地帯の監視を強化したため、脱北者の数はそれまで著しい減少傾向にあった。

 BBCによると、南北分断以降、北朝鮮から韓国に亡命した人の数は約2万9000人に上るという。

◆異例の当局発表に、与党の選挙対策を疑う声
 北朝鮮レストラン従業員の集団脱北と、偵察総局大佐の脱北の当局の発表には、どちらもイレギュラーな点があった。

 前者の場合、7日に入国した事実を8日にメディアに公表するというスピードぶりだった。中央日報は政府の性急さを指摘している。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)もこの点に注目した。今回の記者発表を行った統一省は通常、脱北者に関しては沈黙を大いに守る、と述べている。中央日報は、亡命の発表によって脱北者の身辺と北朝鮮内の家族の安全が危うくなる可能性を指摘している。

 政府は国連制裁の効果を強調しようとして生じたことだと釈明するが、総選挙をわずか5日後に控えた時点で総選挙用の北風(北朝鮮利用)だという批判を受けても何も言うことができないだろう、と中央日報は指摘する。DWも同様の見解を伝えている。「北風」について、(選挙の際に)与党セヌリ党はこのアプローチを取ることで知られている、と語る。自党が主要政策としている安全保障と北朝鮮(南北問題)に関心を集中させることで、票を獲得しようとしているというのだ。「選挙の直前にこういったことが起こるのは、かなり普通のことだ」とNKニュースのHa-Young Choi記者はDWに語っている。

 政権に批判的なハンギョレ紙は、韓国の情報機関である国家情報院が介入した「企画脱北」という疑惑もさらに高まっている、と主張している。いくつかの状況証拠を挙げながら、国家情報院が企画、主導した脱北であるとの見方を伝えている。

 また偵察総局大佐の脱北報道を当局が認めたことについて、聯合ニュースは、国防部が北朝鮮軍幹部の亡命事実を認めるのは異例で、13日の国会議員選挙を控え、青瓦台(大統領府)が公表するよう指示したとの疑惑が浮上している、と伝えている。

 この一件は聯合ニュースが「消息筋」の発言を報じたことで始まったが、発言内容を見ると、この人物は当局内部の情報に通じていることがわかる。内部者による意図的なリークだったことも考えられる。

 国防部の報道官は12日、公表について「青瓦台が指示したというのは事実ではない」と語っている。また大統領府と協議したかについては、「具体的に話せない」と答えた(聯合ニュース)。

(田所秀徳)

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