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米軍、フィリピンに駐留可能に 南シナ海に進出する中国を見据え、両国の利害が一致

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米軍、フィリピンに駐留可能に 南シナ海に進出する中国を見据え、両国の利害が一致

 日本と同じく、四方を海に囲まれ、中国を隣国に持つフィリピン。かつては米軍が駐留していたが、フィリピンの選択を受け、1992年までに米軍はフィリピンから撤退した。その後、中国は南シナ海への進出を強め、現在、フィリピンは中国との間に激しい領有権争いを抱えている。2014年には、米軍の事実上の再駐留を可能にする「米比防衛協力強化協定」が結ばれたが、憲法違反だとの反対派の訴えにより、フィリピン最高裁で審理が行われていた。最高裁は12日、協定は合憲であるとの判断を下した。

◆貧弱なフィリピン軍を補う。建前上は「一時的」
 この協定は2014年4月、オバマ大統領のフィリピン訪問に合わせて署名された。正式条約ではなく、両国行政府間の枠組み合意である。海洋安全保障、フィリピン軍の能力向上、災害救援などでの協力強化を目的とする。

 具体的には、米軍は、フィリピン軍基地の使用、基地内での米軍用施設の設営、部隊、艦船、航空機の配備などを行えるようになる。ただしこれらは永続的なものとしてではなく、あくまで一時的なものとして認められる。例えば部隊は永続的に駐屯するのではなく、ローテーション配備される。協定は有効期限を10年としていて、これは延長が可能である。

 南シナ海問題がこの協定の原動力となった。協定の交渉は2013年8月から両国間で進められてきた。フィリピン軍だけの力では、到底、南シナ海問題で中国に立ち向かうことができない。インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)によれば、同軍には、機能しているジェット戦闘機はわずか2機しかなく、所有する艦船で最大のものは米沿岸警備隊の沿岸警備船の中古品であるという。フィリピン軍はアジアで最弱の軍の1つであると同紙は語っている。近年、フィリピン政府は、アジアで最も装備の貧弱な自国軍の強化に苦労しており、米政府に頼っている、とAP通信は伝える。INYTによると、昨年アメリカは、フィリピンへの軍事支援として約8000万ドル(94億円)を拠出した。フィリピンは昨年、東南アジアで最もアメリカの軍事支援を受けた国だった。

◆フィリピン政府は安心。アメリカも歓迎
 それだけに、協定の発効に道を開いた最高裁の判断は、フィリピン政府に安心感を与えたようだ。フィリピンの指導者らは最高裁の判断を称賛した、とINYTは伝える。アキノ大統領の報道官は、協定によってフィリピンの防衛力は「世代交代的な躍進」が可能になるだろう、と語った。フィリピン上院の国防安全保障委員会のアントニオ・トリリャーネス4世議長は、アメリカのプレゼンスの強化によって、フィリピンは中国の進出から自国を防衛できるようになるだろうと語った。「フィリピンが世界のこの地域において、もはや孤立した存在ではないと承知することが、中国に対してなんらかの心理的効果を有するだろう」と語っている。

 アメリカからもこの判断は歓迎されたことをAP通信は伝えている。INYTは、アメリカは、南シナ海での中国の影響力の高まりに対抗する取り組みにおいて重大な勝利を得た、と報じた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、両国がこの判断を歓迎した、と報じ、最高裁がアメリカのより大きな軍事的役割に道を開いた、と報じた。

 これまでの南シナ海でのアメリカの取り組みには、実効性に欠ける面があったことをINYTはほのめかしている。オバマ政権は、南シナ海での海上巡視を増やし、またフィリピンなどの同盟国に一層の軍事支援を提供することで、中国を思いとどまらせようと試みている、しかしアメリカは影響を与えるのに苦戦しており、中国は人工島で飛行場、軍事建造物、港湾施設の建設を推進している、と同紙は語る。

 だが、フィリピンとの協定は、アメリカに新たな力を与えそうである。WSJは、協定は地域でのアメリカの勢力を強化しそうなものだと述べている。カーター米国防長官は、アメリカがアジア太平洋地域でのプレゼンスを強化するつもりでいる今、フィリピンは決定的に重要な同盟国だと評したという(AP通信)。マケイン米上院軍事委員長は、「フィリピン政府が、西フィリピン海で自国が中国の威圧の標的になっていることを認識し、米政府のリーダーシップを期待している今、この協定はわが国に、フィリピンとの同盟深化、フィリピン軍との協力拡大、東南アジアでのアメリカのプレゼンス強化の新たな手段を与えるだろう」と声明で語った(WSJ)。

◆かつて米軍駐留を拒んだフィリピン
 フィリピンには、(アメリカの属領だった時代を含め)1世紀近く米軍が駐留していた、とAP通信は伝える。1986年、マルコス独裁政権が革命によって退陣させられ、フィリピンは民主化した。1987年に制定された新憲法で、外国軍による基地の使用や駐留を認める条約に対しては、今後、上院による批准などが必要と定められた。基地協定により、フィリピン国内の米軍基地の駐留期限は1991年までと定められていたが、基地の使用期限を延長する条約について、上院が否決したため、米軍の駐留は終了となった。1992年までに米軍は撤退を完了した。当時、上院の否決は、ナショナリズムが高まる中で行われたとAP通信は語る。

 INYTは現在の状況について、フィリピンではいまだに多くの人がアメリカ軍を警戒しているが、そのフィリピンで協定が承認されたことは、地域における深刻な不安と、同盟関係の移り変わりを際立たせた、と他国の例も挙げつつ語った。

 協定が違憲であるとの訴えは、かつて条約を否定した上院議員のグループらが起こしたもの。協定は条約であって、上院の批准を必要とする、というのがその主張だった。最高裁はその主張を認めず、協定は既存の条約の履行に関する行政合意であるとの政府側の主張を認め、合憲と判断した(まにら新聞)。

 最高裁の判断が示された12日には、アメリカ・ワシントンで、両国の外務・防衛担当閣僚による「2プラス2」安全保障協議が開かれた。両国の「2プラス2」開催は2012年以来。最高裁の判断は、協議の始まる数時間前に発表された、とWSJは伝える。この点について、産経ニュースは、最高裁は協議開催を前に、司法としての判断を示した格好だ、と指摘した。

(田所秀徳)

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