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女性専用車両導入は敗北?英国で国民的議論に 日本で乗車経験のある記者は賛成

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女性専用車両導入は敗北?英国で国民的議論に 日本で乗車経験のある記者は賛成

 鉄道先進国のイギリスで、1977年に廃止された「女性専用車両」の復活を巡る議論が巻き起こっている。野党労働党の党首選に立候補している有力左派議員、ジェレミー・コービン氏が公約に掲げたのがきっかけとなり、国民的な議論に発展した。英各紙はこの話題で持ちきりだ。代表的な導入例として日本の鉄道事情も盛んに紹介されている。

 中道派のインデペンデント紙では、日本在住経験のある女性記者が、東京での女性専用車両利用体験に基づいて「賛成」を唱える一方、アラブ首長国連邦のドバイで間違って女性専用車両に乗り込み、大恥をかいた男性記者が異議を唱える記事を掲載し、両論併記の論調を展開している。一方、経済紙のフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、複数の識者の反対意見を集めている。発行部数1位の保守系テレグラフ紙も、日本、ブラジル、インドなど各国の女性専用車両の導入事例を紹介するなど、紙面の多くをこの問題に割いている。

◆政治家・識者は軒並み導入反対
 議論の発端は、労働党党首選の有力候補とされるコービン氏が、女性専用車両の復活を検討することを公約の一つに掲げたことだ。イギリスの鉄道では昨年から今年にかけて、痴漢など1399件の性的暴力事件が起きている。前年度の1117件から25%増え、過去最多を更新した。コービン氏は解決策として、1874年に導入され、1977年に完全に姿を消した女性専用車両の復活を唱えた。24日、これが明るみになると、与野党から反対意見の集中砲火を浴びる事態となった。

 ニッキー・モーガン女性担当大臣は「その考えには大きな不快感がある」と声明。1人の女性として「問題に正面から挑もうというよりは、『では、人々を隔離しよう』と言っているように見える。とても正しい方法とは思えない」と批判した。ブレア前首相派の労働党党首候補、リズ・ケンドール氏も「性別による隔離」は、セクシャル・ハラスメントの問題で「敗北を認めることだ」と、ライバル候補の提案を批判。同じく党首候補の影の内務大臣、イベット・クーパー氏も「時計の針を逆に回そうとしている」と「70年代への回帰」に異議を唱えた。3人目のライバルで影の保険大臣のアンディー・バーナム氏も「2人の女の子の父親として、女性への暴力に対処する正しい社会的な戦略を考えたい」と、コービン氏の提案には反対した(エクスプレス紙)。

 直接の担当大臣となるペリー鉄道相は、日本などを参考に一時は女性専用車両の導入に関心を示していたとされるが、24日に「識者らは隔離が解決策ではないという考えで一致している」とする声明を発表した。FTは、その識者のコメントを以下のようにまとめている。「かなり非現実的だ。特に運転手しかスタッフがいない列車では、(利用状況の)監視が難しい」(鉄道專門誌編集者)、「既に混雑している鉄道のキャパシティが減る。男性たちが、隣の女性専用車両に空席がたくさんあるのを見て、どう思うだろうか?」(欧州鉄道協会代表)、「(女性専用車両を選ばずに)一般車両に乗った女性が、ハラスメントを受け入れたと見られる懸念がある。女性専用車両が厄介者を引きつける磁石になる恐れもある」(市民団体『End Violence Against Women』広報担当)

◆東京で女性専用車両を利用した女性記者は「賛成」
 政治家、識者の多くが「反対」を唱える中、テレグラフ紙は一般市民のTwitterのコメントを拾っている。それによれば、女性を中心に「賛成」と「導入されたら利用する」という声がある一方、男性、女性の双方から「性別による隔離は新たな差別を生む」「男性を教育するのが先」といった反対意見も目立っている。

 日本で女性専用車両が導入された頃に、東京に住んでいたというインデペンデント紙の女性記者、ビクトリア・リチャーズ記者は、自身の利用経験をもとに、女性専用車両に「賛成」の立場を取っている。リチャーズ記者は、ロンドンの地下鉄も混んでいると言われるが、日本の通勤電車の混雑は比較にならないと説明。ぎゅうぎゅう詰めの車両では後ろから「触る、撫でる、揉む」のは容易なことで、被害者にできるのは勇気を出して犯人の手を掴み「痴漢です!」と叫ぶことだけだとしている。そして、それは礼儀作法が行き渡った日本では非常に難しい事で、多くの女性が泣き寝入りを強いられている、と自身が最寄り駅から自宅マンションまで不審者につけられた経験とともに記している。そして、英国内の反対意見を「理解できる」としつつも、政治家たちは現実的な目の前の問題を無視しているとし、「短期的で有効な解決策」として、女性専用車両の導入に賛成している。

 一方、同じインデペンデント紙の男性記者、リチャード・ジンマン記者は、ドバイの地下鉄での赤っ恥体験を綴る。同氏は出張初日に間違えて女性専用車両に乗り込んだ。何人かの女性が微笑みかけ、そのうちの1人はクスクスと笑っていた。ジンマン記者は、最初は「なんてフレンドリーな空間だ」と、女性ばかりの車両の雰囲気に和んだという。しかし、電車が出発してしばらくすると、目の前の民族衣装姿の「エレガントな若い女性」に、流暢な英語で「ここは女性専用車両です」と冷たく言い放たれた。事態を把握したジンマン記者は「フェラーリよりも赤く」頬を染め、「Walk of shame(恥の道)を一般車両に向かって歩み始めた」という。背後では、「少なくとも私の想像の中では、クスクス笑いが爆笑に変わっていた」と記す。

 ドバイでは、女性専用車両に乗った“現行犯”の男性は、約3200円の罰金を課せられる。ジンマン記者は、明確な賛否は述べていないが、「女性たちが広い空間を楽しんでいる一方で、男性たちは険しい顔でイワシの群れのようにぎゅうぎゅう詰めになる」事態が、過去に発生していたと指摘。また、ドバイでは、ルールを破って女性専用車両に乗り込み、「ただそこに立ってジロジロと女性たちを眺めている」という変質者の存在が問題視されていることも取り上げている。

◆インドでは乗車男性に「腹筋運動の刑」
 イギリスの女性専用車両の歴史は、導入先進国とされる日本よりも100年以上前の1874年に遡る。ただし、当初から利用者が非常に少なかったため、すぐに希望者による予約制に変わった。以来、英国の鉄道には事実上女性専用車両は存在せず、1977年に正式に廃止された。

 テレグラフ紙は、各国の女性専用車両導入状況を特集している。日本については、痴漢が3倍のペースで激増していたのを受け、いち早く2000年に導入したと紹介。以後、女性ばかりでなく冤罪を恐れる男性たちにも広く歓迎され、「東京、大阪といった大都市では、今や文化の一部になっている」と記す。

 同紙が紹介するその他の国の状況は以下の通り。

(ブラジル)2006年に首都リオ・デ・ジャネイロの通勤電車と地下鉄で導入。しかし、初日から男性たちが強行乗車したことが報じられ、2013年になっても同じことが起きているという報道があった。監視する警備員はごく一部の駅にしか配置されておらず、女性専用車両は形骸化している。2009年には女性専用車両で乗客がナイフで脅される事件も発生した。

(メキシコ)首都メキシコ・シティで2000年に導入。その後、女性ドライバーによる警報ボタンとメイク道具サービス付きの「女性専用タクシー」も普及。

(インドネシア)首都ジャカルタで2012年に導入も、7ヶ月後に廃止。理由は一般車両との乗車率の偏り。鉄道会社は、今後全体のキャパシティを増やしたうえで、再導入を検討するとしている。

(エジプト)首都カイロの地下鉄で2007年から導入。しかし、混雑時には一般車両からしばしば男性が流入。行商人は女性専用車両を歓迎しており、女性向けのアクセサリーなどが盛んに車内販売されている。

(インド)首都ニューデリーなど5つの大都市で「女性専用列車」を導入。この列車がホームに停車すると、警備員が男性たちをドアから遠ざける。乗車した男性には罰金。それでも守らない男性が多く、2010年から、女性グループが自発的にルールを破った男性たちに「腹筋運動の刑」を課している。

(イラン)首都テヘランの地下鉄で数年前から後方数車両を女性専用にしている。文化の一部として受け入れられている。2006年には女性運転手による女性専用バスも運行。

(内村浩介)

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