日本がインドネシアのゴミ問題のお手本に? 清潔な街並み、現地の清掃活動…

 インドネシアの社会問題といえば、ゴミ問題が挙げられる。この国の住人は、都市衛生についての意識が薄いと言われている。確かに、街を歩けばゴミがあらゆる所に落ちている。ペットボトル、煙草の吸殻、スナック菓子の袋、焼き鳥の串等々、大量の投棄物が首都ジャカルタのあちこちに散らばっている。

 ジャカルタだけではなく、世界最大の島嶼国家インドネシア全土で人々のポイ捨てによる環境汚染が深刻化している。そして一部の自覚的な市民やマスコミは、「ポイ捨てをやめよう」という趣旨のキャンペーン活動に必死だ。

 そんななか、インドネシア市民の間で日本の光景が注目されている。どのような光景か?それは我々日本人が普段接している街並みである。

◆日本の街並みが現地で話題に
 現地大手メディアのデティックニュースのトラベルカテゴリーに、日本の街並みの写真を複数掲載した記事が公開された。記事のタイトルは、「いつインドネシアは日本のように清潔になるのか?」だ。特に何の変哲もない日本の歩道、スクランブル交差点、新幹線駅のホームなどである。日本の都市部の良好な衛生状態を紹介しているものなのだが、「吸い殻一つ落ちていない街の写真」は、インドネシア市民にとっては「Hebat!(凄い)」と感じるようだ。

 同メディアは日本で取材を行い、驚きをもって下記のように紹介している。

「日本の観光ガイドを務めるヨシノ・タツオ氏は『両親と子どもたちが毎朝家の周囲を清掃するという行為は、我々日本人の文化の中に根付いています』と話す。そして日本人の健康習慣の一つとして、ゴミの分別が挙げられる。燃えるゴミ、燃えないゴミ、そしてペットボトルから雑誌、新聞まで。さらにゴミの分別は公共のゴミ回収場だけで行われるのではなく、各家庭においてもそれが実施されている」

◆ゴミに埋もれる自然
 ハフィントンポストが一昨年配信した記事には、ジャワ島のとある海岸でサーフィンをした写真が掲載されているが、何とパイプラインの中に様々なゴミが集まっている。木屑やビニールゴミなど、一目見ただけで身の毛のよだつような光景がそこにある。

 残念ながら、これがインドネシアの現状である。そしてこの問題は、もちろん海だけに限らない。ジャワ島内の火山の周辺にキャンプサイトが整備されると、利用者が残していく膨大な量のゴミが必ず問題化してしまう。現地通信社オーケーゾーンは、ジャワ島最高峰スメル山にあるキャンプ場の現状を記事にしている。これも添付写真だけで、現地の悲惨な状況がよく読み取れる。記事は「スメル山周辺では、毎日約250キロのゴミが投棄されている」と記している。

 キャンプ場のゴミというのは、海でのそれと違ってガスコンロに使うカセット缶やオイル缶など、危険なものも多い。それが毎日250キロも出ているのだ。国立公園の管理スタッフは、もはや悲鳴を上げている。この国の衛生問題の改善は、待ったなしだ。

◆手を取り合ってゴミ問題に立ち向かう
 首都ジャカルタの若者は、それを黙って見ていることはできないようだ。最近では、「ポイ捨ては恥」というスローガンをこの街でよく耳にする。これは『ジャカルタお掃除クラブ』という団体が始めたキャンペーンだ。

 実はこの団体、そもそもは日本人駐在員が集まってできたものである。当初はブン・カルノ競技場周辺の清掃を日本人だけで、月に数回やっていたものが徐々に話題となり、今やジャカルタ州知事もキャンペーンを後押しするようになった。その経緯を、現地紙コラン・シンドが詳しく伝えている。

 考えてみれば、日本も昔からゴミ問題と無縁だったわけではない。インドネシアと同じように、市民の出す大量のゴミをどう処理するかが国会で議論されたこともある。それを努力と創意工夫でどうにか解決に導いたのは、ほんの最近の出来事だ。海外の事例を通じて注意を喚起しているインドネシアにも変革の時が訪れているのかもしれない。

Text by 澤田真一