リサイクルの厳しい現実…米自治体の多くが税金投入 焼却より割高になるケースも

 新聞、雑誌から空き缶、ペットボトルまで、少なくとも先進国ではリサイクルは当たり前となった。環境を保護し、資源を有効に使う目的で普及したリサイクルだが、その仕組みが抱える問題点も、指摘されている。

◆リサイクルには金がかかる
 ワシントン・ポスト紙(WP)は、首都ワシントンD.C.と近郊からのリサイクルごみが搬入される、米メリーランド州エルクリッジの施設を取材。多くの自治体がリサイクル推進のため、家庭用に大型のリサイクル用ゴミ箱を導入し、ゴミの仕分けも不要とした結果、思わぬ問題が起きていると報じている。

 リサイクル施設では、紙類、ガラス、金属、プラスチックなどを自動で仕分けする設備を導入している。しかし、リサイクル用ゴミ箱の大型化に伴い、なんでもそこに入れてしまう住民が続出。ゴミと化してしまうものが増え、その処理費用がかさみ、首都ワシントンD.C.がリサイクル事業から得る利益は50%以上減ったという。これにより、今やリサイクルに市が費やす費用は、焼却処理に比べ、24%も割高になっている(WP)。

 再利用されるものの中身が、ここ数十年で劇的に変化したことも、リサイクルの利益が上がらない原因だ。かつてはリサイクルの中心であった、新聞紙、プラスチックボトル、缶は減少。激減する新聞紙に代わり、ジャンクメールや食品の箱などが再生用のメインとなり、紙以外の素材の除去に手間がかかるようになった。輸送コスト削減のため、スチール缶やペットボトルはスリム化し、その分買取り額も下がっている。ネットショッピングの普及で、段ボールだけは増加しているが、再生紙用の原料としての輸出先である中国では、取引価格は今や5年前の半分以下だという(WP)。

 WPは、リサイクル産業は今や全国的に赤字だと述べる。全米最大のリサイクル会社でエルクリッジの施設を所有するWaste Management社は、今年第一四半期に1600万ドル(約20億円)の損失を計上。また全米で2000以上の自治体が、リサイクルで利益を上げるどころか、処理のために税金を投入しているという。Waste Management社の幹部は、「顧客を助けたいが、利益を出せなければ続けられない」とし、リサイクル資源の価格が下落する今、自治体のさらなる負担が必要だと説明。リサイクルは高くつく事業になっていることを示唆した。

◆処理方法は確立。でもビジネスにはならない
 英ガーディアン紙は、海洋汚染の原因となり得る、不適切に捨てられたたばこの吸い殻について報じている。専門家によれば、たばこのフィルターは何千もの小さなプラスチックのファイバーで構成されており、海に流れ出れば、生物に悪影響を与えるらしい。

 吸い殻を集める取組みは、環境保護団体が始めているが、リサイクル設備がないため、埋め立て施設に送られている。すでに吸い殻を無害なプラスチックに再生する方法は開発されているが、今のところ回収と処理のコストが再生後のプラスチックの価格に見合わないため、民間企業がリサイクルへの興味を示さない。現段階では、処理方法を開発した米Terracycle社が、たばこ業界からの資金援助を受け、リサイクルに取り組んでいるのが現状で(ガーディアン紙)、ここでもコストが障害となっている。

◆太陽光発電も、リサイクルが悩み
 ロシアのRTは、日本のソーラーパネルのリサイクルに関する、気になるニュースを報じている。日本では福島の原発事故以来、太陽光発電が人気だが、環境省によれば、2040年までに、77万トンのソーラーパネルが寿命を迎えるということだ。パネルには有害物質も含まれており、そのまま廃棄されれば環境汚染にもつながる。

 EUでは、太陽光発電で出る廃棄物管理のためのガイドラインがすでにあり、製造業者は古いパネルを回収しリサイクルするだけでなく、廃棄における経済的負担も負う。しかし、日本にはそのようなシステムは今のところないため、RTはEUに倣い対策を講じることを奨めている。

 環境に配慮した太陽光発電も、汚染の原因となっては元も子もない。国民の負担が少ない、リサイクル方法の確立を期待したい。

Text by 山川 真智子