テキサス州で地震急増 原因めぐり地元混乱 石油掘削説あがるも石油企業は否定

 アメリカ・テキサス州で、マグニチュード3以上の地震が急増している。地震学者らの研究では、石油・天然ガスの掘削活動に伴う人為的な地震だとする見方が有力だ。しかし、原因を作っている企業の一つとされる石油メジャー、エクソン・モービルの子会社は、10日の州議会の公聴会で掘削活動と地震の関連性を否定した。住民の不安と、地域経済の根幹をなす石油産業の利害が複雑に絡み合う中、地震の原因を巡る攻防が続いている。

◆大学の研究報告は「人為的」企業側は『自然発生」
 米地質研究所(USGS)のデータによれば、テキサス州、オクラホマ州など米中南部で、この6年ほど地震が頻発している。1973〜2008年にはマグニチュード3以上の地震の発生回数は年平均24回だったが、09〜14年には193回に増えた。14年は最多の688回だった。テキサス州北部のダラス・フォートワース地域では、10年代に入って石油・天然ガスの掘削で水圧を利用した破砕活動が普及するまでは、体に感じるような地震はほとんどなかったという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙=WSJ)。

 石油・天然ガスは、地中からは塩水と混じって掘り出される。これに加え、近年盛んになった水圧破砕という掘削技術によっても、塩水と薬品が混じった廃水が大量に出る。これらは、地下に広がる巨大な廃水井へ注入されて処理されている。地震の原因調査を行った同州のサザンメソジスト大学(SMU)の研究チームは今年1月、この廃液の注水が断層のずれを引き起こし、地震の原因となっている可能性が非常に高いとする報告を『ネイチャー』誌に発表した。

 これを受け、石油業界を管轄するテキサス州鉄道委員会は、ダラス・フォートワース地区で廃水井を運用するエクソン・モービルの子会社、XTO社と、ヒューストン地区のエナーベスト・オペレーティング社を公聴会に呼んだ。XTOへの聞き取りは10・11日に行われ、同社はSMUの報告で関連を指摘された2013年11月から翌年1月に起きた一連の地震について、震源は同社の廃水井よりも深かったと反論。代理人弁護士を通じ、「自然に発生した動きで、人為的なものではない」と地震との関係性を否定した(WSJ)。

◆市民生活の安全か、地域経済の利害か
 テキサス州は昨年、地震との関連性が強く疑われる場合、廃水井の認可を取り消したり改訂することができるルールを新たに導入した。環境保護団体やメディアを中心に、その早期適用を求める声が高まっている一方で、「テキサス州の基幹産業を脅かす」として、安易に地震との相関関係を認めてはならないという意見も強いようだ。

 こうした状況を伝える地元紙サンアントニオ・エクスプレス・ニュースによれば、学者の間でも意見が割れているようだ。SMUの調査を主導したブライアン・スタンプ氏の元教え子で、州の“お抱え”となっている地震学者、クレイグ・ピアソン氏は今年1月、ダラス・モーニング・ニュース紙への寄稿を通じ、掘削活動が地震の原因であるとするのは、「メディアの誇張」だと批判した。

 しかし、石油業界の中にも地震との関係を認める者もいるという。石油メジャーの一角を占めるコノコ・フィリップスのライアン・ランスCEOは、「全てのデータと証拠を確認した。その結果、いくつかの地域で廃水が地震を作り出しているように思われる。今、それがどれくらいの範囲に広がっているか突き止めようとしている所だ」と語っている(石油情報サイト『Oilprice.com』)。

◆州議会は企業側に反論できない?
 しかし、サンアントニオ・エクスプレス・ニュースによれば、ほとんどの関連企業は、より信頼性の高い調査に必要なデータの提供を拒んでいるという。一方で同紙は、石油関連企業は多くの雇用を抱え、莫大な投資もしていると、企業側の立場にも理解を示す。地震との関連性を認めれば、州の検査にも合格している廃水井の操業停止につながることになり、莫大な損失を被ることになるからだ。

 同紙は、XTO、エナーベストを含む州内の石油関連企業は、地元政治家に莫大な政治献金をしているとも指摘する。石油業界に詳しい法律家、ジョン・マクファーランド氏は、公聴会のメンバーは企業側に反論できないのではないかと懸念し、同紙に次のように述べている。「企業側が自社の井戸と地震活動の関係性を否定しても、それに反対尋問する能力と意思を持つ議員はいないだろう」

 XTOに続くエナーベスト社への公聴会は15・16日に開かれる。

Text by NewSphere 編集部