南シナ海問題:米国防長官、中国を非難 一歩も引かぬ米中、軍事衝突の可能性を米紙懸念

 中国政府は26日、国防白書を発表した。同国の軍事戦略をテーマとしたもので、白書の発表は2年ぶり。これまでの陸軍偏重を改め、「海上の軍事闘争の準備を最優先し、領土主権を断固守り抜く」と、海洋重視の姿勢を明確に打ち出した。海軍はこれまでの「近海防御」型から、「近海防御プラス遠海護衛」型に改めていくとして、南シナ海を含む西太平洋での、今後さらなる活動をうかがわせた。南シナ海の周辺国やアメリカは、警戒、反発を強めているようだ。

◆中国がこれまでにしてきたことの意図をオープンに?
 白書は「一部の域外の国が南シナ海問題に全力で介入し、海や空で近距離の偵察活動を頻繁に行っている」(NHK)と、名指しを避けてアメリカを非難している。

 日本については名指しで、「戦後体制からの脱却を積極的に追求し、安全保障政策を大幅に変更している」と警戒感を示している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、米国防省のある高官は、白書の内容について、驚くようなものはなかったとコメントしている。白書に記された傾向は、自分たちが数年間注視してきたものだと語ったという。

「ある意味、中国が実際に行っているのは、いわばずっとやってきていることを認める言語化だ」と、シンガポールのラジャラトナム国際関係学院のシニアフェロー、リチャード・ビッツィンガー氏はWSJ紙に語っている。

 中国が自国の意図を、白書という形で公開したことに対しては、透明性の上で、ある程度の前進だとして、米高官や安全保障専門家の間で評価する声もあることを記事は伝えている。

◆自信の大きくなった中国は、南シナ海が自分たちのものだとはばからずに言う
 フィリピンのデ・ラ・サル大学のRichard Javad Heydarian教授はWSJ紙で、この白書は、中国の自信が大きくなっている表れだと評している。また、中国政府が領有権主張で譲歩するつもりはないというしるしとする。同教授によると、中国は、西太平洋の事実上の支配を求めていることを認めることに、ますます抵抗感がなくなっていることが、白書によって示されているという。

 ガーディアン紙によると、中国国防省の楊宇軍報道官は、白書発表の記者会見で、中国の南シナ海での埋め立て活動は、本土における住宅、道路、その他のインフラ開発と同列のものだと語った。「主権の観点からは、違いはまったくない」と語ったという。

◆米国防長官はそんな中国にぴしゃり
 カーター米国防長官は27日、この動きに応答して、アメリカの姿勢を改めて明らかにした。ワシントン・ポスト(WP)紙が伝えるところによると、中国に対して、南シナ海での人工島造成を止めるよう単刀直入に警告し、米軍は同地域の国際水域、国際空域での巡視を今後も行うと断言した。

「思い違いがないように。アメリカは世界中でそうしているとおり、国際法によって認められる場所であれば、どこででも飛行、航行、作戦行動を行う」とカーター長官は発言した。また、第2次世界大戦以来、米海軍、空軍がおおむね自由に活動してきた区域で、中国が緊張を高めていると非難した。

 米政府と中国政府の間で舌戦がくすぶり続けているが、長官の発言はそれをさらにエスカレートさせた、とWP紙は語る。南シナ海問題で、米中はどちらも譲歩せず、この難局のために局所的な軍事衝突の不安がかき立てられている、ともしている。

◆対中国でアメリカ、東南アジア諸国の結束が強まる
 南シナ海問題ではこのところ、米中の対立が注目を集めているが、中国の進出によって、最も直接的に影響をこうむるのは、やはり、領有権主張で中国と対立している近隣国だろう。

 これらの国々の間でも、領有権の主張は対立していることがある。ガーディアン紙は、ほんの数年前であれば、島の領有権をめぐって、中国に対してと同様、お互いに警戒していたかもしれない地域の国々が、中国との争いによって連帯するようになった、と語る。

 カーター長官も「中国の行動が、地域の国々を、新たな仕方で団結させている」と語っている(WP紙)。前述の長官の発言は、中国に対してのみならず、アジアの同盟国、パートナー国に対して向けられたメッセージでもあるという。「それらの国は、アメリカがアジア太平洋に関与することをますます要請している。われわれはそれに応じるつもりだ。わが国は、今後数十年間、アジア太平洋の安全保障の主要な影響力であり続けるつもりだ」

 フィリピンはアメリカの姿勢に同調している。AFPによると、アキノ大統領は25日、中国の主張を受け入れるかと記者に質問されて、フィリピンの軍機、民間機は、中国の警告に関わらず、今後も南シナ海の係争領域の上空を飛行すると答えたそうだ。

◆今月のマレーシア首相訪日に続いて、フィリピン大統領は来月頭に訪日予定
 アキノ大統領は、来月2日より、国賓として日本を訪れることになっている。その時に、日本とフィリピンは安全保障関係を強化しそうだ、とロイターは語る。日本からフィリピンへの防衛装備、防衛技術の移転を可能にする協定の、交渉開始での合意などが予定されているという。

 フィリピン海軍の上級将校の言葉としてロイターが伝えるところによると、フィリピン側はすでに、日本に対して、入手したいと思っている日本の防衛装備のリストを渡しているそうだ。海洋安全保障を強化するために緊急に必要としている装備の「ウィッシュリスト」で、対潜哨戒機「P-3C」などが含まれているという。また、フィリピン政府は日本政府と、それらを購入するための長期低利貸付についても協議しているという。

 今月の24~26日には、マレーシアのナジブ首相が日本を訪れていた。ロイターはそのことにも触れ、日本・マレーシア両国首相は、両国の関係を戦略的パートナーシップに引き上げることと、防衛装備で協力することで合意した、と伝えている。安倍首相は、中国の増大する海洋進出の野望に直面している東南アジアの国々と、協力を強化しようとしている、と記事は伝えている。

Text by NewSphere 編集部