ロシア主導の「ユーラシア経済同盟」発足 EUとの連携強化にも意欲か

プーチン大統領

 1月から、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニアの4ヶ国により、ユーラシア経済同盟(EEU)が創設された。キルギスも半年以内に参加する予定だ。欧州連合(EU)を意識し、資本、サービス、労働の移動の自由を発展させるものである。その背景と狙いについて、欧州メディアが報じている。

◆ プーチン大統領はロシア主導の経済圏創設を構想。EUへラブコール
 プーチン大統領は、ロシア主導で北米NAFTAのような独自経済圏を創設するため、EEUの創設を構想した。 (ドイチェ・ヴェレ)。背景には、天然資源の最大の輸出先である欧州との思惑の違いがある。プーチン氏は2011年、欧州首脳会談の席で、“リスボンからウラジオストックまで”新たな経済共同体の構想を披露した。欧州との経済統合を進める考えだったが、首脳陣の反応は芳しくなく、断念したという。

 今では改めて、プーチン大統領はEUに対し、ユーラシア経済同盟と貿易協定を結ぶよう、誘っているという(ドイツのDeutsche Wirtschafts Nachrichten紙)。実際、駐EUロシア大使チズホフ氏は「我々の考えはユーラシア経済同盟とEUの間で公式に接触をもつことである。メルケル首相はつい最近このことについて言及した。EUからロシアに課している制裁はこの交渉には全く影響しない」と述べた。「米国と自由貿易圏をつくるのに多大のエネルギーを費やすことは賢明であろうか?皆さんの直ぐ隣に我々がいるのだ」とも付け加えた。

 EU同様、共同通貨の発行も視野に入れられているようだ。ドル支配から逃れるためだ。プーチン大統領は、これからも周辺国を加盟させて行く方針だ。しかし、それは旧ソ連の復活ではなく、自由と民主主義と市場原理を尊重した『大ヨーロッパ』としてだ、と述べている(スペインのエル・パイス紙)。

◆ EUのロシア制裁、緩和の可能性?
 プーチン大統領は当初、ウクライナのEEU加盟も必須であると考えていたようだ。欧州接近を図る同国に資金を提供し、天然ガス料金も下げ、それを阻止した。しかし結局、反政府運動が巻き起こり、当時のヤヌコビッチ大統領はロシアに亡命を余儀なくさせられた。ロシアによるクリミア併合や東部での紛争もあり、同国の参加は実現できなかった。

 一連の事態を受け、EUはロシアに厳しい経済制裁を課している。しかし、ロシアの制裁もあり、EU諸国へのダメージも大きい。ロマノ・プローディ元伊首相は、「石油と天然ガス価格の下落とロシアに課した制裁で、ロシアのGDPは5%減少した。しかし、イタリアはその影響で輸出が50%減少した」と語っている(Messahero紙)。逆に、アメリカやトルコの対ロシア輸出が伸びているようだ。

 EEUの発足とEUへの接近を受け、制裁緩和を説く意見も出てきているようだ。ロシアが和平と停戦に関する合意を全面的に履行し、ウクライナへのガス供給契約を守り、EU・ウクライナ間の通商・政治協定を妨害しなければ、という条件のようだ(WSJ)。

Text by NewSphere 編集部