“ワイルドカード”インド、中国から200億ドル投資 モディ首相が狙う「奇跡」に米誌注目

 中国の習近平国家主席が17日、インドを訪問しナレンドラ・モディ首相と会談を行った。両首脳は、中国とインドの経済関係の強化、国境線問題などを話し合った。

 モディ首相の8月末からの日本訪問では、安倍晋三首相との親密ぶりが話題となった。日本は、中国を意識した経済・軍事面の協力をインドと約束したが、モディ首相は、今回の習主席の訪問をどのように受け入れたのか。地元紙、米誌が内容を分析している。

【インド経済の奇跡を熱望するモディ首相】
 地元紙は、インドへの日本と中国それぞれからの新規投資額を大きく報じている。中国は次の5年間で200億ドルの投資、日本が約束した350億ドルよりもはるかに少ない、とタイムズ・オブ・インディアは報じている。

 しかし習主席の訪問中、モディ首相は、中国との関係をとても重要で優先的なものだと発言。全てのレベルで関係を深め、首脳級の話し合いを定期的に持つことで合意した。核エネルギーの安全性を維持するためのより広い協力関係の強化など、核の平和利用に関する話し合いを始めることも決めた。
 
 また、同首相は「中国市場への参入規制を緩和すること、インド企業に投資の機会を創出することを求めたが、習主席は、我が国の憂慮に応え、実際的な行動をとると約束してくれた」(タイムズ・オブ・インディア)と話している。

 モディ首相は、大幅なインフラ整備を行い、国内生産を押し上げ、インド経済の奇跡を成し遂げようとしている、とタイム誌は報じている。そのため、首相が何よりもやらなければならないことは、中国であれ、アメリカであれ、そして日本であれ、申し出をする国からはどの国からでも、金を獲得することだ、と皮肉な見方をしている。

【インド新幹線開発計画】
 日本が大きな関心を寄せている、インドの鉄道開発に、中国も同様に参入を狙っている。インドと中国は18日、鉄道開発協力について合意した。地元経済紙エコノミック・タイムズは、その詳細を報じている。

 モディ首相と習主席は、鉄道部門を含む計12項目に及ぶ覚書(MoU)に署名した。MoUでは、インド鉄道の高速化、新幹線建設計画協力の可能性について検討をするとしている。

 また両国は、鉄道の高速化を進めるにあたり、重量貨物輸送についての研修実施に合意した。中国はこの分野でインドよりも進んでおり、北京交通大学が来月から研修プログラムを開始する。

 さらに新幹線計画の研究・開発について中国からの資金面の援助も合意した。

【モディ首相、世界からラブコール】
 タイム誌は、「なぜ世界の要人たちは、10代の男子がアイドル的女子に恋焦がれるように、ナレンドラ・モディ首相に言い寄ろうとするのか」と記事を始めている。

 モディ首相の日本訪問では、安倍晋三首相はわざわざ京都まで赴き出迎えをし、熱い抱擁を送った。一方、習主席は、モディ首相の出身であるグジャラート州を訪問。インド式の衣装まで身にまとってみせた、と同誌は報じている。
 
 中国の利権を追求しようとの政治的・軍事的拡大とともに、アジアは2つのグループに分断されつつある、と同誌は指摘。ひとつは中国を中心として、もうひとつは日本を含むアメリカの同盟国を中心としたものだ。両陣営とも勢力を拡大するために、アジア地域への支援強化を模索している。インドは、この新しい地政学的パーワーゲームの重要なワイルドカードとなっているという。

【日米と軍事協力で接近】
 タイム誌はまた、中国に接近するモディ首相の複雑な胸の内も推測している。インドと中国は隣り合うためにこれまでにも政治的・軍事的衝突があった。このような対立が、モディ首相の心に引っかかっていることは明らかだという。
 
 モディ首相は習主席との会談で、国境の平和と安定の維持を「厳しく監視」すべきと主張した。これに対し、習主席は、「国境線はまだ確定されておらず、一定の問題が時折起きるのはしょうがない」(タイムズ・オブ・インディア)と返している。

 同首相は、軍事力強化を明確に進めている。日本訪問で、モディ首相と安倍首相は、軍事連携強化に合意した。今年8月にはアメリカのチャック・ヘーゲル国防長官が、インドを訪問し、同様の約束をした。日本を訪問した際には、企業の経営者らを前に、名指しこそしなかったが、中国の拡大路線を強く非難する発言をしている。

完全解読「中国外交戦略」の狙い (WAC BUNKO) [amazon]

Text by NewSphere 編集部