習主席、インド訪問 高速鉄道で日本を超える提案はあるか? 海外メディア注目

 中国の習近平国家主席は17日から、就任以降初めてインドを訪問する。鉄道網整備や工業団地建設など、数百億ドル規模の対インド投資を表明すると予想されている。

 先日の日印首脳会談では、新幹線の導入を含め、今後5年間で350億ドル(約3.7兆円)をインドに投融資するとの目標が、共同声明に明記された。インドの高速鉄道計画をめぐり、日中間の競争がエスカレートするものと見られている。

 巨額の投融資を希望しているモディ首相と、インドとの関係強化を図りたい中国。両国の思惑が交錯する中、「アジアの巨人」の首脳会談の行方に海外メディアが注目している。

【中印企業の格差】
 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、中国はインドを魅力ある市場と見ており、その恩恵を享受しているが、インドにとって中国市場へのアクセスはかなり制限されており、平等とは言えないようだ。

 例として挙げられているのが、中国の電気通信機器メーカーHuaweiだ。ADSLモデムなどで有名な同社は、一部のインドの政治家からセキュリティに問題があると批判されているにもかかわらず、インドで8億ドル(約860億円)という収益を挙げている。新興スマートフォンメーカーのXiaomi(小米)もインド進出を表明している。

 対して、インド企業が中国市場に参入するには、多くのことが制限されているようだ。インドの風力発電会社スズロンが、風力タービンの生産プロジェクトを中国天津で計画していたが、中国は国内製造業者を保護し計画が頓挫した、と同紙は伝えている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、カンティ・プラサド・バジパイ教授(シンガポール国立大学、アジア研究)は、「中国は経済的機会と地政学的動機からインドに関心をもっている」、「中国はインドを失いたくない」と指摘している。

【国境紛争への対応は】
 独国際放送局ドイチェ・ヴェレ(DW)は、中印関係の障害である、国境紛争に着目した。

 1962年、カシミールなどをめぐり中印間で国境紛争が起こって以来、約3900㎞の実効支配線(LAC)を境に、両国のにらみ合いが続いている。昨年には、中国人民解放軍が、インド側の実効支配地域に侵入し、インドはこれを強く非難した。

 この問題は、両国の実効支配線の定義に関する解釈が異なることに起因する。実際、同メディアによると、インド軍が中国側に侵入することもしばしばあるという(中国メディアはこれをほとんど報じない)。両国はお互い見解が異なることについては認めているものの、同時に現状を変えないことにも合意している。

【日印関係への評価】
 中印関係に対して、日印関係への評価はどうだろうか。上海国際問題研究所のアナリストであるLiu Zongyi氏は、DWのインタビューに対し、「日印特別戦略的パートナーシップの中身は空っぽ」だと語っている。

 その理由は2つ挙げられている。一つは原子力協定だ。世界で唯一の被爆国である日本は、件の日印首脳会談で原子力協定に調印せず、交渉を加速させることで合意している。もう一つは救難飛行艇「US2」だ。世界の飛行艇の中でもずば抜けた性能を有している水陸両用飛行艇「US2」の輸出も協議を急ぐだけに留まった。

 どちらもインドが渇望していたものだが、合意には至らなかった。このことから同氏は、日本はモディ首相を満足させるに至らなかったと結んでいる。一方、中国は「インドが望むものを提供できる」として、モディ首相の経済改革を積極的に支援すると自信を示している。

 両首脳はモディ首相の地元グジャラートで、17日に会談する。この日はモディ首相の64歳の誕生日だ。サプライズが起こるのか、注目が集まる。

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Text by NewSphere 編集部