米中対話、報道にもズレ 中韓メディアは「中国の協調路線」、英米紙は「決裂防止」に注目

 アメリカと中国の閣僚による、外交・経済についての「米中戦略・経済対話」が9日から北京で行われている。2009年より始まった定期交渉で、安全保障や経済などについて2日間の日程で意見交換が行われる。

【協調路線主張の中国】
 中国国営新華社通信は、中国の習近平国家主席が米中の協調を訴えたと報じている。

 習主席は「米中両国は新しい大国関係のあるべき姿を共に描き追求し続けるべき」と語り、「どちらも偶発的な事件に惑わされず、対話を続け、建設的な相互理解を築き上げる」ことを訴えたという。

 韓国の朝鮮日報も「習主席は、広大な太平洋には中国と米国という二つの大国を受け入れる十分な空間があると語った」と報じ、中国側の協調路線主張を伝えている。

 産經新聞によると、こうした中国側のアピールに対し、ケリー米国務長官は「関係はことばではなく行動に基づくものだ。中国には国際的な問題で責任ある対応を求める」と語ったと伝えており、両国に温度差があると述べている。朝日新聞も「対立を避けるという点では一致したが、具体的な考え方になると違いが際立った」と報じている。

【アメリカの牽制】
 折り合わない点のひとつとして、中国が主導しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に関し、米中の見解が対立していることを韓国の中央日報が報じている。ジェーン・サキ国務省報道官は8日の定例記者会見で「AIIBはいまだ存在せず、明らかに乗り越えなければならない障壁がある」と発言している。

 またニューヨーク・タイムズ紙は、中国の南シナ海や東シナ海での挑発的な動向に対し、米政府が「近隣海域において海事法を遵守するよう促した」と報じている。ケリー国務長官は「地域の安定を犠牲にして現状を変えるような動きは許されるものではない」と語ったという。

 同時にケリー長官は、記者や弁護士が不当に長期間投獄されていることなど、中国における人権侵害問題についての議論を求めたという。しかし中国側は、2月にオバマ大統領がダライ・ラマ14世と面会したことへの報復として、人権問題についての議論を拒否した、と同紙は報じている。

【アメリカのジレンマ】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「ほとんどのアメリカ人にとっては”不毛な岩”でしかない領土をめぐる争いにおいて、いかに挑発姿勢を刺激することなく中国の負担を増やす方法を見つけるかは、アメリカにとって頭が痛い問題」と述べている。

 ケリー長官は冒頭から「アメリカの狙いは中国封じではない」ということを強調していた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。

 戦略国際問題研究所の中国問題専門家ボニー・グレイザー氏は、「アメリカのアジア再均衡策は地域の”反中”を煽る目的ではないということを、もしも中国側に納得させることができれば、それは大いなる達成と言える」と同紙に語っている。

 しかし当局者や専門家達は、この2日間に渡る対話について「長きに渡る問題の根本的な解決ではない」との見解であるようだ。今回の対話は、両国の決定的な決裂を食い止めることが主な目的であった、と同紙は述べている。

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Text by NewSphere 編集部